無敗優勝へまっしぐらのバルセロナ だが、その陰には重大な問題点が……

順風満帆に見えても、実は深刻な「依存症」

セビージャを相手に、あわや今季初黒星というところまで追い詰められたバルセロナ 【Getty Images】

 ラ・リーガ第30節終了現在、バルセロナは首位を独走しているだけでなく、無敗でシーズンを終える可能性まで残している。さらに現地時間4月21日にワンダ・メトロポリターノで行われるコパ・デル・レイ決勝を制してリーガとの2冠を獲得すれば、今季手にする成功はより大きなものとなる。

 だが、こうした景気の良い話題の陰には、指摘しておくべき問題も存在している。

 ラスト5分で2ゴールを奪い、かろうじて引き分けに持ち込んだ3月31日の第30節セビージャ戦では、バルセロナが2人のキープレーヤーに大きく依存していることが明らかになった。ピッチ上のあらゆる動きを管理するセルヒオ・ブスケッツ、そしてプレー内容とゴールの両面で決定的な影響力を持つリオネル・メッシである。

 ブスケッツをけがで欠き、メッシもベンチスタートとなったセビージャ戦にて、バルセロナの選手たちは自陣に戻ることすらままならない混乱状態に陥った。大量失点を喫していてもおかしくなかったこの一戦は、3週間後にセビージャと再戦するコパ・デル・レイ決勝、そしてレアル・マドリーとのエル・クラシコを含めたラ・リーガの残り8試合に影響を及ぼす可能性がある。

ベストメンバーを欠くと別のチームに

ラスト30分、ウスマン・デンベレとの交代で投入されたメッシが、試合の流れを一変させた 【Getty Images】

 この試合で4、5点差の大敗を逃れることができたのは、セビージャが信じられない形でゴールチャンスを逃し続けたからに他ならない。幾度となくGKマルク=アンドレ・テアシュテーゲンと1対1になる決定機を作りながら、コロンビア代表FWのルイス・ムリエルはフィニッシュ時の判断ミスを繰り返し、他の選手も出すべきパスを出さず、ことごとくチャンスを潰し続けた。

 そしてラスト30分の時点で登場したメッシは、万全のコンディションではないように見えたにもかかわらず、出場からわずか数分のうちに状況を一変させ、もはや不可能と思われた同点劇を実現させてしまったのだ。

 しかし、それでもバルセロナが抱える問題が露わになった事実は変わらない。

 バルセロナはベストメンバーがそろわなければ強さを維持できず、何人かのキープレーヤーを欠いただけで全く異なるチームとなってしまう。ブスケッツはその1人で、ラモン・サンチェス・ピスフアン(セビージャのホームスタジアム)では彼の不在を色濃く感じさせた。思えば、ハビエル・マスチェラーノが移籍を決断したのも、ブスケッツがいる限りピボーテとしてプレーするチャンスは望めないからだった。同じようにスペイン代表でも、彼の立場は不動であり続けている。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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