現地記者の日本人選手ラ・リーガ奮戦記(月2回更新)

久保も強いられる“地獄のスケジュール”の実態 マジョルカの指揮官がベタ褒めした浅野のハイパフォーマンス

山本美智子

ミッティランとのELプレーオフ第1レグは、久保のスーパーゴールなどでソシエダが2-1で勝利。スペインのUEFAカントリーランキング上昇にも一役買った 【写真は共同】

 スペイン在住がすでに25年以上に及ぶ日本人ライターによる、月2回の連載コラム。レアル・ソシエダで3年目のシーズンを迎えた久保建英と、今シーズンからマジョルカでプレーする浅野拓磨の動向を中心に、文化的・歴史的な背景も踏まえながら“ラ・リーガの今”をお届けする。第8回目のテーマは過密スケジュール問題。とりわけ欧州カップ戦出場クラブが強いられる“地獄のスケジュール”の中で、選手たちがベストコンディションを維持するのは至難の業だ。

来季のCL出場枠が増加する可能性が

 スペインに与えられる来シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)出場枠が、現在の「4」から「5」に拡大される可能性が出てきた。今シーズンからフォーマットが変更となったCLをはじめとするUEFA主催大会で、スペイン勢が健闘しているからだ。

 現時点で、CLではバルセロナ、アトレティコ・マドリー、レアル・マドリーの常連3チームが、ヨーロッパリーグ(EL)ではアスレティック・ビルバオとレアル・ソシエダのバスク勢2チームが、そして注目度は低いながら、カンファレンスリーグ(COL)でもベティスが、それぞれの大会で勝ち残っている(原稿執筆の2月17日時点ではバルサ、A・マドリー、アスレティックがすでにラウンド16進出を決め、R・マドリー、ソシエダ、ベティスはノックアウトフェーズのプレーオフ第1レグを終えた段階)。

 その一方で、今シーズンはイタリア勢が振るわず、実際2月17日に更新されたUEFAカントリーランキング(各国協会からCL、EL、COLに参加できるクラブ数を決める際に使われるランキング)では、スペインがイタリアを抜き、イングランドに次ぐ2位につけている。

 ランキングに影響する勝利ポイント獲得に大きく貢献したのが、COLのプレーオフ第1レグでベルギーのヘントを破ったベティス(3-0)、ELのプレーオフ第1レグでデンマークのミッティランを退けたソシエダ(2-1)だ。いずれも難しいアウェーゲームで先勝。とりわけソシエダはマイナス3℃(体感温度はマイナス7℃)という厳寒の中での戦いを強いられたが、「プロになってから、あんなに寒いところで試合をしたのは初めて」と振り返った久保建英のスーパーゴールが決勝点となって、勝利をつかみ取っている。

 このままCLの出場枠が増えれば、来シーズンはスペインからビッグ3のような常連クラブに加えて、さらに2チームがこの欧州最高峰の舞台に立てるわけだ。それこそ現在リーガで7位につける浅野拓磨所属のマジョルカなどにも、チャンスが巡ってくるかもしれない。

冬に大型補強のベティスがソシエダに大勝

過密日程を乗り切るには冬の補強も大きな意味を持つ。マンUからベティスにレンタルで加入したアントニー(右)は、ソシエダ戦でも1得点・1アシストの活躍 【Photo By Joaquin Corchero/Europa Press via Getty Images】

 しかし、出場枠増を期待するムードがある一方で、これを危惧する声も聞こえてくる。というのも、これ以上過密スケジュールを強いられるクラブが増えれば、怪我人増加のリスクが高まり、ひいてはラ・リーガ全体のレベル低下にもつながりかねないからだ。

 2月16日(現地時間、以下同)に行われたラ・リーガ第24節では、奇しくもUEFAカントリーランキング上昇に貢献した2チーム、ベティスとソシエダが対戦。結果はホームのベティスが、エースの久保建英を温存したソシエダに3-0で快勝している。ともにミッドウイークに欧州カップ戦のプレーオフ第2レグを控える中でのゲームで条件は同じだったが、それでもこの差がついたことで改めて考えさせられたのが、冬の移籍マーケットの重要性だった。

 COLで優勝し、来シーズンのEL出場権を獲得することを目標の1つに掲げるベティスは、今冬の移籍市場でクチョ・フェルナンデス(←コロンバス・クルー)、アントニー(←マンチェスター・ユナイテッド)という2人の実力派アタッカーを獲得。戦力の拡充に成功し、特にマンUからレンタルで手に入れたアントニーは、ソシエダ戦の先制点も含め、ベティス加入後の公式戦4試合で3ゴールという目覚ましい活躍を見せている。

 これに対して、ソシエダがこの冬に獲得した選手はゼロ。ジョキン・アペリバイ会長が「1月は何も見なかったし、どこのクラブとも補強の話はしなかった」と明言すれば、現場を預かるイマノル・アルグアシル監督も、「他(のクラブの選手)を見るということは、手元の選手を信頼していないということだ」とコメントするなど、シーズン途中の補強には消極的だった。

 とはいえ、選手たちに“地獄のスケジュール”(calendario infernal)を強いる現代サッカー界の過密日程を思えば、選手層はいくら厚くても十分ではないだろう。

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著者プロフィール

スペイン在住は四半世紀超え。1998年から通信員として情報発信を始め、スペインサッカーに関する取材、執筆、翻訳の仕事に従事してきた。2002年と06年のW杯、04年と08年のEUROなど国際大会も現地で取材。12年からFCバルセロナの公式サイト、ソーシャルメディアを担当する

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