レベルの差が浮き彫りとなった首位決戦 ラ・リーガは再びバルサの独走状態に

両チームが見せた対照的なプレー

先週末に行われた首位決戦で、バルセロナはアトレティコ・マドリーに1−0で勝利した 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 今季のラ・リーガは、順位表からその結末を容易に想像することができる。現地時間3月4日に行われた直接対決で、首位バルセロナは2位アトレティコ・マドリーを1−0で破り、勝ち点差を8に広げた。

 その数字を見るだけでも、残る11節での逆転は難しいと考えるのが自然だろう。しかも両チームがこの試合で見せたプレー内容は、その可能性がごくわずかなものだと感じさせるものだった。

 試合のデータを見ただけならば、両チームともある程度はこの結果に納得できたかもしれない。バルセロナにとってこの勝利は、ゲームの主導権を握り続けた末の然るべき結果だ。ラ・リーガの独走状況も、彼らの優位性を物語っている。一方、敗れたアトレティコ・マドリーのディエゴ・シメオネ監督も、リオネル・メッシが3試合連続で決めた直接FKが勝敗を分ける唯一の差だったと弁解することができた。

 しかし、両チームがピッチ上で見せたプレー内容は対照的なものだった。バルセロナのエルネスト・バルベルデ監督はフィリペ・コウチーニョを中盤右サイドに起用。彼が攻撃時に前線のメッシ、ルイス・スアレスをサポートするベストのメンバー構成で臨み、いつも通りのポゼッションスタイルを貫いた。

 一方、アトレティコ・マドリーのプレーレベルは過去数年のレベルとは程遠いものだった。ジエゴ・コスタとアントワーヌ・グリーズマンを前線に擁しているにもかかわらず、ボールをハーフラインより先に運ぶことすらままならなかった。

 この数週間、アトレティコ・マドリーはラ・リーガの大半のチームを相手に大勝を繰り返してきた。それはヨーロッパリーグも同じだ。だがグループリーグ敗退に終わった今季のチャンピオンズリーグ(CL)と同じく、カンプノウでの一戦ではバルセロナほどの強豪との対戦が全くの別物であることを証明したと言える。

主力を欠く中でも安定感を維持したバルサ

アトレティコ・マドリー戦ではイニエスタの負傷交代もあったが、バルセロナはこれまでと同様のゲーム支配力を見せた 【写真:ロイター/アフロ】

 アトレティコ・マドリーのここまでの健闘は称賛に値するものだ。ミッドウイークのレガネス戦に勝った時点でバルセロナとの勝ち点差を5ポイントまで縮め、この直接対決に勝っていれば、逆転優勝の可能性はいよいよ現実味を帯びていたはずだった。

 だがグループ3位にとどまったCLに続き、今回もアトレティコ・マドリーは強豪相手の大一番に求められるプレーレベルに達することができなかった。

 対照的に、これまでバルセロナは主力選手のいずれかを欠く試合が多い中でも、極めて安定したプレーを維持してきた。アトレティコ・マドリー戦でもアンドレス・イニエスタが負傷退場し、いまだチームのプレースタイルになじめていないアンドレ・ゴメスを代役として投入しながら、同様のゲーム支配力を見せた。

 アトレティコ・マドリー戦のバルセロナは人々の記憶に残るような試合をしたわけではない。多くのゴールチャンスを作り出したわけでもなく、先述した通り唯一のゴールはセットプレーから生まれたものだった。

 ラ・リーガ最少失点に抑えているアトレティコ・マドリーの堅守は伊達(だて)ではない。バルセロナは試合を通してボールを支配しながらも、ペナルティーエリア内まで攻め込むのに苦労していた。スアレスも同郷のディエゴ・ゴディンとホセ・マリア・ヒメネスにうまく押さえ込まれていた。

 それでも両チームのプレーレベルには明らかな差があった。ピッチ上のあらゆるエリアで優位性を保っていたバルセロナに対し、アトレティコ・マドリーは攻撃面でほとんど脅威を与えることができなかった。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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