無敗優勝へまっしぐらのバルセロナ だが、その陰には重大な問題点が……

安心と信頼のブスケッツ、彼がいないと……

ブスケッツはセビージャ戦を負傷欠場。中盤の舵取り役である彼の不在は大きな痛手だった 【Getty Images】

 ブスケッツはボールを失えば即失点につながる危険なゾーンでも、ワンタッチで確実にパスをつなぐことができる。さらには高いボール奪取能力、ベストのポジショニングを保ち続ける戦術眼を兼ね備えた、類いまれなMFだ。

 インターナショナルマッチウイーク前のラ・リーガ第29節、カンプノウにアスレティック・ビルバオを迎えた一戦では、イバン・ラキティッチがブスケッツの代役として十分に機能するという印象を抱かせた。ただ、この試合とセビージャ戦の大きな違いは、ラ・リーガの王座に君臨してきた数年前からそうしてきたように、バルセロナが圧倒的にゲームを支配し、敵陣でボールポゼッションを保ち続けたことだった。

 しかし、ラモン・サンチェス・ピスフアンではその印象が早々に打ち砕かれた。こちらもポゼッション能力が高いセビージャの選手たちは、メッシを警戒する必要がないことで強気になり、徐々に攻撃へと転じていった。

 セビージャのMF陣は、難なくバルセロナの中盤を突破するようになり、ブスケッツのサポートを受けられないジェラール・ピケとサミュエル・ウムティティが守るバルサのゴールに素早く迫る状況を作りはじめた。またブスケッツの不在は、後方からのビルドアップにおいても感じられた。

存在そのものが相手に恐怖をもたらすメッシ

4月21日、バルセロナとセビージャは、コパ・デル・レイのファイナルで再び激突する 【Getty Images】

 現在のバルセロナにおけるメッシの重要性は、誰の目にも明らかなものだ。世界最高のプレーヤーは、その存在そのものがライバルに恐怖をもたらす。エルネスト・バルベルデ監督はその力にすがることで、容赦なき敗戦と今季初黒星を逃れることに成功した。

 不可解なけがでアルゼンチン代表の2試合を欠場した後、メッシはわずか30分足らずの出場時間でセビージャの守備陣を翻弄(ほんろう)し、試合の流れを一変させ、誰もが予期せぬタイミングで同点ゴールまで決めてしまった。

 またしてもメッシは決定的な役割を果たし、チームを敗戦から救い出した。とはいえセビージャに少なくとも50%の決定力があったならば、バルセロナが敗戦を逃れることはできなかったはずだ。

 逆にセビージャは、この試合で得た教訓をバイエルン・ミュンヘンとのチャンピオンズリーグ決勝トーナメント準々決勝・第2戦、そしてバルセロナと再び戦うコパ・デル・レイ決勝で生かさなければならない。そうでなければ、いくら内容的に善戦したとしても、結局は敗れて終わることになるだろう。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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