【フェブラリーS】女性騎手初のJRA平地GI勝利の快挙、コスタノヴァ砂の新スター誕生だ

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コスタノヴァがフェブラリーSを優勝、騎乗したレイチェル・キング騎手は女性騎手として初のJRA平地GI勝利の快挙となった 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 2025年最初のGIレース、第42回フェブラリーステークスが2月23日(日)、東京競馬場1600mダートで行われ、レイチェル・キング騎手騎乗の2番人気コスタノヴァ(牡5=美浦・木村厩舎、父ロードカナロア)が優勝。好位追走から最後の直線を一気に突き抜け、GI初挑戦で初勝利を飾った。良馬場の勝ちタイムは1分35秒5。

 コスタノヴァは今回の勝利で通算10戦7勝(うち地方1戦0勝)、重賞は2025年GIII根岸ステークスに続き2勝目。キング騎手は自身初のJRA・GI勝利を飾るとともに、女性騎手として初めて平地のJRA・GI勝利の歴史的快挙を達成した。また、同馬を管理する木村哲也調教師はフェブラリーS初勝利となった。

 なお、3/4馬身差の2着には幸英明騎手騎乗の5番人気サンライズジパング(牡4=栗東・音無厩舎)、さらに1馬身1/4差の3着には戸崎圭太騎手騎乗の1番人気ミッキーファイト(牡4=美浦・田中博厩舎)が入線。連覇を狙った昨年の勝ち馬で藤岡佑介騎手が騎乗した4番人気ペプチドナイル(牡7=栗東・武英厩舎)は4着だった。

何度も「感謝」を口にした殊勲のヒロイン

いきなり重賞2勝を挙げた昨年に続き今年も大活躍、キング騎手の腕達者ぶりはファンの間でもおなじみとなった 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 23年・24年のJRA最優秀ダートホースであるレモンポップが引退し、砂の新エースとなったフォーエバーヤングらGI級勝ち馬4頭がサウジカップ遠征のため不在。昨年同様に国内のダートマイル決戦は確たる主役がいない混戦となった中、鮮やかに突き抜けたのは2番人気に支持されていたコスタノヴァだった。それも女性ジョッキーのレイチェル・キング騎手を背に躍動。平地のJRA・GIで女性騎手が勝利を挙げるのは史上初のことであり、サウジカップにも負けず劣らずの歴史的瞬間となった。

「GIレースを勝つことができて本当に感動しています。そして、短期免許での騎乗は今年で2年目となりますが、昨年同様に今年も多くのサポートのおかげで結果を残すことができたことに感謝しています」

 殊勲のヒロインは何度も「感謝」の言葉を口にしていた。ただ、キング騎手の言う「サポート」があったからといって、簡単に結果を出せるほど日本の競馬は甘くはない。初の短期免許だった昨年はチャックネイトでGIIアメリカジョッキークラブカップ、サクラトゥジュールでGIII東京新聞杯といきなりの重賞2勝。今年も再びサクラトゥジュールでGIII京都金杯を制するなど、その腕達者ぶりは競馬ファン間でもすっかり浸透していた。クリストフ・ルメール騎手がサウジ遠征のため空白となったコスタノヴァの騎乗チャンスも、キング騎手自らの力でつかんだものと言っていい。

「ルメール教授のおかげです」

見事な立ち回りでの勝利に、木村調教師は思わず「ルメールみたい」と語った 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 そして、このフェブラリーSでも満点の騎乗を見せた。スタートではやや後手を踏んだもの、すぐにポジションを上げてリカバリー。前半の600mを通過するころには馬群の好位6番手を手応え良く追走していた。

「スタートの一歩目が速くない時があるけど、その後にスピードが乗るタイプと聞いていました。その通り、2、3歩目ですぐにスピードに乗ってくれて、直線では先頭が届くような展開になりました。道中はリズム良く行けたと思います」

 4コーナーでは進路が開けた外へとスムーズに持ち出すこともでき、直線入り口ではいつでも先頭を伺える絶好の射程圏。そして、残り300m付近で堂々と先頭に立つと、迫る後続を完封しての1着ゴール。この非の打ち所がない競馬に、木村調教師は思わず笑みを漏らしながらこんな感想を語った。

「まるでルメールが乗っているみたいな立ち回りでしたね(笑)」

 実はキング騎手は現地時間21日(金)にサウジアラビアで行われた「インターナショナルジョッキーズチャレンジ」に参戦し、そこから日本にとんぼ返りをしてフェブラリーS騎乗という強行軍。「私は飛行機の中で寝るのが得意。それが役に立ちました(笑)」とジョークを交えていたが、サウジでは主戦のルメール騎手にコスタノヴァの特徴や乗り方をしっかり教わっていたのだという。そのことは木村調教師にも伝わっており、「本当にその通りに乗ってるわと思って見ていました(笑)。ルメール教授のおかげです」と、こちらも冗談交じりに海の向こうからの名手のナイスアシストに感謝の言葉を述べた。

短距離路線でさらなる飛躍を期待

ダート短距離の新たなスターとしてさらに大きな飛躍を期待したい 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 コスタノヴァ自身の強さも特筆ものだろう。自身初の中2週ローテもなんのその。前走のGIII根岸ステークスを4馬身差で圧勝した勢いそのままに、またも府中の直線を独壇場とした。これで東京競馬場では6戦6勝。しかも、冒頭で「主役不在」とは書いたものの、今年の16頭は決してレベルが低いという意味ではない。むしろ、全馬が重賞ウイナーであり、うち6頭がGI級の覇者。これらを相手にしてのGI初挑戦・初勝利は並みの馬にできる芸当ではない。

「レース間隔が詰まっていましたが、しっかりと走ってくれて偉かったと思います。この後はオーバーホールさせてほしいとオーナーにお願いしています」

 木村調教師によれば距離適性は1400~1600m。そのため、復帰後もフォーエバーヤングとの対決の可能性は低いかもしれない。となれば、新たなダート短距離スターとして、別路線でのさらなる飛躍を楽しみにしたい。

音無調教師のラストGIチャレンジは惜しい2着

音無調教師の最後のGI挑戦、サンライズジパングは惜しい2着だった 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 一方、惜しい2着だったのはサンライズジパング。最内から上がり最速35秒2の脚でコスタノヴァに迫ったものの、3/4馬身届かなかった。管理するのは、今年3月4日で定年を迎える音無秀孝調教師。JRA・地方合わせて1000勝を超える勝ち鞍を挙げてきた名トレーナーの、3頭出しで臨んだ最後のGIチャレンジだった。

「2着だから良かったですよ。いつも勝つわけではないですからね」

 いつものサバサバとした口調でそう振り返った音無調教師。2歳秋以来となるマイル戦にも長い直線を上手に使って対応したサンライズジパングには「東京だとマイルでも合いますね。2着続きだけど、またいい時があるんじゃないでしょうか」と、期待をかける言葉。また、10着サンデーファンデー、14着デルマソトガケにもねぎらいの言葉を残した。引退に大きな花を添えるVとはならなかったが、その表情は、マスク越しからでも充実しているように見えた。(取材・文:森永淳洋)
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