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三笘が極限トラップ&技ありフィニッシュで殊勲弾 VARなしだからこそもたらされた「爽快感」

森昌利

チェルシーを相手に三笘が殊勲のゴール。ブライトンを3シーズン連続となるFA杯16強に導いた 【Photo by Crystal Pix/MB Media/Getty Images】

 2月8日(現地時間)のFA杯4回戦。ブライトンは強豪チェルシーをホームに迎え、2-1の勝利を飾った。決勝点となる逆転弾を決めたのは三笘薫。自らチャンスを作り出し、最後は高難度のトラップから右足アウトサイドでゴールを陥れた。スタジアムを歓喜で揺らした一撃は、まさにファンタスティックだった。

技術とスピードと反射神経、そして勝利への執念

――ナイスゴール! あの得点の場面を振り返ってほしい。

「うーん、まあアクシデントのようなシーンでしたけど、ジョルジニオ(・リュテール)がいいパスをくれましたし、1対1なのは分かっていましたんで。トラップがでかくなりましたけど、逆にキーパーが出てくれたんで助かりました」

――体勢を崩しながら強引にトラップしたように見えたが、ボールは不意に来た?

「不意に来た感じですけど、たぶん、浮き玉でなければ通らないところだったと思いますし、あれが限界かなと思いました。自分自身もギリギリのところで触れて良かったと思いますし、少しの1メートルだったり、そういうところで勝負が決まるところがあったんで。そこを練習していて良かったと思います」

――トラップはどこで?

「肩ですね」

――左サイドからよく右足のアウトでクロスを出すが、あのシュートも右足アウトサイド。得意の形だったと思うが。

「そうですね、アウトサイドはインサイドより早く打てますし、得意なところはありましたけど、あのシーンではアウトしかなかったかなと思います」

 これは、チェルシーとのFA杯4回戦終了直後の三笘薫との一問一答だ。当然ながら、日本代表MFが奪った決勝ゴールに質問が集中した。試合終了のホイッスルが鳴ってから45分後。こうして文字にしても、プレミアリーグ対決で強豪を破って、世界最古のカップ戦のベスト16入りを決めた、生々しい興奮が伝わってくる。

 技術とスピードと反射神経、それに勝利への執念が見事に相まった、素晴らしいゴールだった。

開始早々のオウンゴールで1週間前の悪夢が蘇ったが…

開始5分、逆を突かれたGKフェルブルッヘンがボールの処理を誤り、痛恨のオウンゴール……。嫌な形で先制点を与え、1週間前の悪夢が蘇った 【Photo by Shaun Brooks - CameraSport via Getty Images】

 試合はブライトンにとって最悪の失点で幕を開けた。前半5分、試合の序盤も序盤にGKバルト・フェルブルッヘンのオウンゴールで先制点を許してしまったのだ。しかも考えられないようなミスが招いたゴールだった。

 チェルシーのエース、コール・パーマーの左サイドからの折り返しのパスを、こともあろうにオランダ人GKがキャッチミスした。ニアに入ってきたボールに反応して体がゴール側を向いてしまっていた。この体勢で捕れずに弾くと、ボールはそのままゴールラインを割った。

 0-7の大敗を喫したノッティンガム・フォレスト戦から1週間後のホーム戦だった。ブライトンにとっては2シーズン前に準決勝まで進み、イングランド・フットボールの聖地ウェンブリー・スタジアムでプレーした記憶がまだ新しいFA杯だ。ここで優勝候補の一角であるチェルシーを破れば勢いもつく。ところがこのオウンゴールによる失点で、同じくオウンゴールで始まった1週間前の悪夢が蘇ってしまった。

 ファルマー・スタジアムを本当にがっかりさせたオウンゴールだった。しかしそのわずか7分後、この試合でトップ下に入ったリュテールがゴール前で跳躍して頭を右から左に鋭く振り、右サイドバックのヨエル・フェルトマンが右サイドから放ったクロスに合わせてゴール左隅に流し込み、ブライトンが1-1の同点に追いついた。

 ブライトンは失点した直後から、素晴らしいインテンシティでチェルシーを押し込んでいた。前週の大敗から1週間空いたのが良かったのだろう。フィットネスが充実していたホームチームがすかさず運動量を上げて、リュテールが自軍の守護神のミスをあっという間に帳消しにした。

 そして後半12分には、結果的に決勝弾となった三笘のゴールが飛び出したのである。

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2024-25で24シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル29年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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