連載:コロナで変わる野球界の未来

コロナ禍で、球団経営はどう変わるのか? 難局で横浜DeNAが感じた「野球の力」

中島大輔
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近年は、チケットが手に入りづらくなっているDeNAの本拠地・横浜スタジアム。新型コロナの感染拡大で、状況が一変。球団はどのようにこの危機を乗り越えようとしているのだろうか 【写真は共同】

 2012年シーズンに球界参入して以降、横浜DeNAはファンとの密なコミュニケーションや明確なターゲティング戦略を仕掛け、閑古鳥の鳴いていた横浜スタジアムを連日超満員に膨れ上がらせるなど、ベイスターズを人気球団に変貌させた。2020年には本拠地・横浜スタジアムの約5000席の増築工事を終え、収容人数は3万4046人に。東京五輪の舞台にもなり、華やかな1年になるはずだったシーズンを前にコロナショック勃発――。球場内外でさまざまな施策を打ち、スポーツビジネス界をリードしてきた球団はこの危機をどう乗り越えようと考えているのか。岡村信悟社長に聞いた。

スポーツの持つ意味は変わらない

「スポーツを軸とした新しい街づくり」横浜スポーツタウン構想を掲げているDeNA。「大きな流れは変わらない」と岡村社長は話す 【写真は共同】

――新型コロナウイルスの感染拡大を球団としてどう受け止め、前に進もうとしていますか?

 これまで我々は、昭和からあるプロ野球という文化を21世紀型のライブエンターテインメントとして捉え、その可能性をなるべく広げていこうとしてきました。その中心がライブ。横浜スタジアムに大勢のファンを迎え、そのにぎわいがプロ野球の領域を広げていく。具体的に言えば、横浜スポーツタウン構想や「コミュニティボールパーク」化構想を掲げてきました。

 横浜スポーツタウンの中心となるスタジアムを大改修して、今年は3万4000人の規模になりました。こけら落としをして五輪を迎えて……という中でのコロナショック。今後、数年は人の生活やリアルなスポーツ観戦は影響を受けるだろうと見ています。ですが、5年、10年というスパンで見た場合、人間はそれなりに対処する方法を持っていると考えています。

――横浜スポーツタウン構想では「スポーツを軸とした新しい街づくり」を掲げ、行政や企業を巻き込み球場内外でさまざまな取り組みを行なってきました。コロナで変わる部分はありますか?

 人間は何のために生きているかと言うと、なるべく「楽しかった」という人生を送るためだと思います。「楽しかった」という人生は自分だけのものではなく、次世代にバトンタッチできる。それが人間にとって「文化づくり」だと、より意識できる世の中になってきました。

 テクノロジーがいろんな部分で人間を代替し、健康な長寿を与えてくれる。その一例として、モビリティーが進化して移動の自由が効くことなどがあります。そうして人間の「文化」が成熟していく中で、スポーツはますます重要な意味を占めるという大きな流れは変わらないと思っています。

 コロナ以前から、我々はファンの皆さんとのコミュニケーションをなるべく数多く打ってきました。そうすることでファンの皆さんとチームの間にエネルギーの磁場や交流がつくり出されていくので、できるだけコミュニケーションの量を増やしていく。それはリアルの球場より、むしろバーチャルの環境の方が得意領域であるはずです。だから今、ファンの皆さんとのコミュニケーションの量を増やすには絶好の機会だと思っています。
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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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