リーグ連覇を果たした昨シーズンから陣容の大幅な入れ替えはない。やはり王者・神戸の戦力は充実している【写真:森田直樹/アフロスポーツ】
J1全20チームの現時点での戦力を5項目で評価したが、やはり合計点の最高値はリーグ2連覇中のヴィッセル神戸だ。ただし、2位のサンフレッチェ広島も神戸と1差の合計91で、ほとんど差がない。3位で並ぶガンバ大阪と鹿島アントラーズが合計84であることを考えれば、少なくとも戦前の戦力評価としては神戸と広島の2強と言える。
もちろん、長いシーズンでは展開によっていろいろなことが起こるし、神戸はACLエリート、広島はACL2での戦いも並行しないといけないので、戦力評価が結果を保証するものではない。しかし、この2チームを中心に上位争いが繰り広げられることは、ほぼ間違いないだろう。
神戸は吉田孝行監督が4年目で成熟期にあり、メンバーもほぼ変わらないため、「完成度」は最高評価の20とした。2024年のMVPである武藤嘉紀の引き留めに成功した一方で、山口蛍がJ2のV・ファーレン長崎に移籍したが、怪我で長期離脱していた齊藤未月がチーム練習に復帰しており、大きな力になりうる。攻守のバランスが取れているのは神戸の強みで、それが接戦での強さにもつながっている。ただ、爆発力に関してはやや課題があり、前半戦の状況次第では夏の補強がカギになるかもしれない。
シンプルに戦力値を見れば3連覇の可能性は十分と言いたいが、やはり過去に鹿島しか果たしていない偉業であり、ベースとなる強度の部分でも、ライバルが底上げしてくることを想定すると、昨年以上にタイトル防衛の難易度は高いだろう。何よりACLエリートという負荷の大きい大会が、シーズンを跨いで前半戦にも後半戦にもあることは、リーグ優勝のハードルを上げそうだ。国内での戦いだけが前提なら「選手層」は19でもいいが、アジアでの戦いも見越して17とした。過密日程に加えて、現在34歳のFW大迫勇也や33歳のDF酒井高徳、同じく33歳のMF扇原貴宏など、主力の平均年齢が確実に上がることも考慮に入れる必要がある。
ミヒャエル・スキッベ監督が同じく4年目を迎える広島は、昨年19得点のFWジャーメイン良をJ2降格のジュビロ磐田から獲得し、北海道コンサドーレ札幌から左利きのサイドプレーヤー菅大輝も補強。主力だった松本泰志(浦和レッズ)が抜けた中盤には“人気銘柄”の田中聡が湘南ベルマーレから加わり、昇格組の横浜FCから展開力に優れるMF井上潮音も手に入れた。リーグ優勝を狙うに相応しい陣容が整ってきている。
昨シーズン、リーグ最多の72得点を叩き出した「攻撃力」は「監督力」とともに20としたが、8得点を挙げたピエロス・ソティリウ(APOELニコシア)など、外国人FWがこぞって退団したことが、プラスとマイナスのどちらに作用するか。FW陣にはジャーメインに加え、9得点・6アシストを記録した加藤陸次樹 、大卒新人ナンバーワンFWとの呼び声もある中村草太、伸び盛りの19歳・井上愛簾、そして移籍の噂もあった満田誠と駒が揃っているが、現状は外国人枠に余裕があるため、開幕前の滑り込み移籍がなかったとしても、夏に外国人選手の補強の可能性があることは見込んでおきたい。