そそり立つ絶壁・ジャンダルム 「競馬巴投げ!第164回」1万円馬券勝負

乗峯栄一

騎手への制裁と着順変更、内規上はどうなっているのか

[写真1]ワグネリアン 【写真:乗峯栄一】

 最近は以前ほど「審議の青ランプが灯りました」というアナウンスがなくなってきた。
 パトロールビデオもよく公開されるようになってきたし、騎手への制裁と、着順変更(馬券の当たり外れ)が一体でなってきたのも、いいことのように思う。

 しかし内規上はどうなっているのか、何が降着で、何が騎手への制裁にあたるのかを知りたいときもある。

 JRAでは「日本中央競馬会競馬施行規程」というのを設けて公開し、降着や、騎手制裁についてファンの理解を得ようとしている。しかし、こういう条文というのは(仕方ないところもあるのだろうが)「うん?」と首を傾げるところもある。

 特に審議、降着などに関して直接関与するのは第8章だろう。

 第8章 発走、到達順位、着順等(第106条−第131条)

 第112条 騎手は、その騎乗する馬のでん端(尻のこと?)から後続馬の鼻端までに2馬身以上の距離がないのに後続馬の進路に入ってはならない。
 2 騎手は、競走中みだりに斜行し、又はだ行してはならない。
 3 騎手は、決勝線に至る直線走路において、一度定めた進路をみだりに変えてはならない。
 4 騎手は、競走中他の馬を押圧し、他の馬に衝突し、又は障害を斜めに飛びこえてはならない。
 5 騎手は、競走中十分な間隔がないのに、他の馬と他の馬との間若しくは他の馬と柵との間に入り、又はそれらの間から他の馬を追い抜いてはならない。
 第113条 騎手は、競走中みだりに高声を発し、又はむちを不当に使用してはならない。

一体「みだり」とは何だ

 とにかくこの辺りの条文には「みだりに」がみだりに出てくる。一体「みだり」とは何だ。

「第112条2項・騎手は“みだりに”斜行してはならない」 
「第112条3項・ 騎手は進路を“みだりに”変えてはならない」
「第113条・騎手は“みだりに”高声を発し、又はむちを使用してはならない」

 例えば第113条の「みだりに」は危険防止などのためなら仕方ないが、必要もないのに「チャーシューメンの焼き豚抜き食いてえ!」とか「尿道結石の石、見せたろか!」とか、そういうレースと関係ない意味不明のことを大声で言うなという意味だろう。しかし「この言葉はみだりに言っている」とか「この言葉はみだりに言ってるんじゃない」とかはどうやって判断するんだろうか。

 『大辞林』によれば「みだり」と「みだら」は同源で「乱る」から来ている。

 つまり「みだりに」は「みだらに」と本来同じ意味であり、性的な表現なのだ。
「みだりに」は「みだらに」と改定すれば、制裁規定はもっと分かりやすくなるというのが、わが年来の主張だ。

「淫らに斜行するな」「淫らに進路変更するな」「淫らに高声を発するな」だと非常に分かりやすい。

 裁決委員が騎手を呼んで「キミは、競走中○○ポとか○○コとか大声で言ってたな? 淫らだな?」と問う。

 騎手の弁明も「あの騎手、えっと思うような所から攻めて来るんです。そんなところを攻めてくるのかと思いました。でも意表を突かれるのは、ぼくはそんなに嫌いじゃないんです」とか言うと、「淫らな発言だ」と裁決委員は決断しやすいし、制裁を受ける方も「ああ、淫らだったかもしれない。コイツのせいだ。反省しろ」と自分の股間を叩いて、イチモツを諭したりできる。

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著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

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