雑煮の残り? ガニオンがにおう 「競馬巴投げ!第160回」1万円馬券勝負

乗峯栄一

有馬のあとにGIやったりしたら白けるやないか

[写真1]アメリカズカップ 【写真:乗峯栄一】

 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 よい正月でしたか? まあ、競馬ファンは金杯が終わってからでないと「よい正月」か「つまらん正月」かは決まらないですよね。

 昨年末からホープフルSがGIとなり、それも有馬のあとの暮れの28日にやるという。「有馬のあとにGIやったりしたら白けるやないか」と憤慨していたが、タイムフライヤー→ジャンダルムという前から応援している2頭が入り、馬券が本線的中してしまった。しかもホープフルは距離的にもコース的にも来年のクラシックにつながる可能性が高いという。有馬を外して下降気分になっていたのが、グイッと首をもたげてしまった。

 気がついたら「有馬のあとに、来年につながる2歳GIがあるっていうのも、いいことかもしれんな」などと呟いていた。

「美空ひばりは何時ごろ出るんなら?」

[写真2]ウインガニオン 【写真:乗峯栄一】

 昨年、不本意ながら、息子夫婦のところに孫が出来てしまった。嬉しいような、悲しいような出来事だ。大晦日にはその息子家族が帰省してきて、近くに住む89歳の母親のところへみんなで行き、紅白歌合戦などを見る。4世代の紅白歌合戦鑑賞だ。若いグループなんか出てきたら、何が何だか分かりゃしない。

 母親はもっと訳が分からず「美空ひばりは何時ごろ出るんなら?」とか「島倉千代子は何を歌うんなら?」などと、まるで死んだ人間ばかり呼ぶイタコ状態だ。その間にも、赤ん坊は這い回って、タンスで頭打って泣き出すし、もう大晦日家庭内カオスとなる。

「宮澤さえ? それは宮澤りえとは違うんか?」

[写真3]カラクレナイ 【写真:乗峯栄一】

 そういえば、栗東トレセンに行っても世代間攻撃を受けるようになった。

 ぼくはいつも坂路頂上に行って写真撮るのだが、頂上から100メートルぐらい下に「角馬場」(別に四角ではない、円形なのだが、なぜか角馬場と呼ばれる)という脚慣らしの場がある。

 もう5年ぐらい前か、その日はオルフェーヴルが追い切るとかで、普段見ない若い女性たちが数人いて、さらにそれを取り囲む男性同伴者も何人かいて、ざわついていた。

 坂路頂上に上がってそれを言うと、20代とおぼしき若いテレビ・カメラマンが「角馬場がざわついているのは、AKB48の宮澤佐江が来てるからでしょう」と言う。

「なに! AKBが来てる?」

「はい」

「坂路角馬場に? こんな朝早い時間に?」

「はい」

 それだけ問答すると「オレ、ちょっと、もう一度角馬場行ってくる」と、ぼくはいま来た坂道をまた降りる。

 見慣れぬ若い女性取材者たちはまだ角馬場脇にいた。こう言っては失礼だが、そんな“アイドル・スター”というオーラを発している女性はいない。競馬トレセン取材だからと、わざとオーラを隠しているんだろうか?

 また坂路頂上に戻り、「分からんかったなあ」とうなだれていると、20代カメラマンが「そりゃ分かりませんよ。知らないでしょ? 乗峯さん、AKBの宮澤佐江なんか?」と言う。

「宮澤さえ? それは宮澤りえとは違うんか?」

「違いますねえ。宮澤りえがAKBにいたらおかしいでしょ?」

「元総理の宮澤喜一とも違うわな」

「違いますね。宮澤喜一はもう死んでますし。AKBに宮澤喜一がいたら、それは宮澤りえよりおかしいでしょ?」

「うん」

「でも、乗峯さん、落ち込まなくて大丈夫ですよ。もし、こまどり姉妹が来てたら、乗峯さんとごく一部の人しか分かりませんから。オアイコですよ」

 優しい若者だ。なるほどそうか、若い男がAKBに騒ぐのは、オレたちがこまどり姉妹に騒ぐようなもんか、って、オレは何歳や!

 確かに、こまどり姉妹は古いが、夢中になった記憶はない。“我が世代のAKB”と言えば南沙織か麻丘めぐみ、グループで言えというならピンキーとキラーズか(って、やっぱり古いか)。

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著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

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