元日本代表LO北川俊澄が語るW杯 「ずっと夢の中にいるような」
「一番忘れられないのはワールドカップのフランス戦」
関東学院大、トヨタ自動車、日本代表で活躍してきた北川俊澄 【写真提供:WOWOW】
2011年ワールドカップに出場するなど日本代表キャップは43。195センチ、110キロのビッグマンが語るインターナショナルラグビーの魅力とは。
――日本代表でプレーする魅力とは何でしょうか。
日本代表は、国を背負って戦うわけですし、胸にはサクラのマークがついて、試合前には国歌斉唱があって、あらためて『自分たちは日本人だ』、『日本のために戦えるんだ』と感じます。試合の重みが、トップリーグより一段上がるという感じです。
初めてのテストマッチはスペイン戦(2005年11月/秩父宮)だったんですが、けっこう緊張しました。それまで高校代表とか、いろいろなカテゴリーで試合に出ていましたけど、フル代表は初めてで、あらためて『テストマッチは試合の重みが違うなあ』と感じました。
――43キャップと、たくさんテストマッチを経験してきて、一番印象的な試合を挙げるとしたら。
一番忘れられないのはワールドカップのフランス戦(2011年)ですね。僕の中では、ワールドカップに行きたいという目標があって、4年間JK(ジョン・カーワン元ヘッドコーチ)のもとで戦ってきて、セレクションに残ってようやく出られたワールドカップでしたしね。
日本代表の試合はどれも特別な重みがあるんですが、ワールドカップになると、さらに一段上がる特別な雰囲気がありました。自分の人生において、すごく良い経験になりました。
――ワールドカップの特別な感じというのを、もう少し聞かせてください。
僕はニュージーランドへ10回くらい行ってるんですが、ワールドカップのときは、国に着いた時から歓迎のされ方、日本への応援のされ方、どれもそれまでとは全然違いました。いつも温かく迎えてくれるし、応援もしてもらえるんですが、全然違う(笑)。
『これがワールドカップか』と思いました。入国した瞬間からものすごく注目されるし、試合では国歌を何万人もの観客が一緒に歌ってくれる、練習から移動からいつもテレビカメラが入って注目される。あの盛り上がりはなかなか経験できない、本当に特別なもの。ずっと夢の中にいるような、自分にとっては楽しさしかない、素晴らしい経験でした。
分厚いノートを全部覚えるのがフランス流!?
2011年ワールドカップのトンガ戦でディフェンスする北川 【写真:ロイター/アフロ】
初めて代表入りしたとき、分厚いノートをどんと渡されて『これを全部覚えてこい』と言われたんです。当時は僕も大学を出たばかりのころで、めちゃ難しいなぁと思ったんですが『フランスではこれが当たり前だ』と言われて。
練習中も、『これは○ページに書いておいたよね』と、僕らが理解できているという前提で要求してくる。フランス人ってみんなこのレベルでやってるのかと、衝撃を受けました。
――エリサルドはフランスでも個性的な人物のようですが、求めるレベルは高かったのですね。
求めるレベルは高かった。あのときの日本には高すぎたというか、先を行きすぎていたように思えますね。特に求められたのはFWとしてはセットプレーであり、そこから攻めるときの状況判断。必ずやるべき決まったプレーがあって、そのうえでその時その時の状況判断も求められる。フランスのラグビーというとシャンパンラグビーというイメージがありますが、個人の判断と同時にシステマティックな判断も求められるんだなと思いました。
――実際にワールドカップで対戦したフランスの印象はいかがでしたか。
一番感じたのは、1人1人のパスのレンジの広さです。すごくフラットで速いパスをビュンビュン展開してきて、あっという間に外でゲインされてしまう。実際に対戦すると、映像で見ていたよりもはるかに速くて、精度も高いと思いました。
日本では狭いエリアでどう動いて抜くかという攻防が多いのですが、1人1人が広いスペースで、1対1で勝負する局面を望んでいるラグビーなんですね。
「優勝させて、トヨタでのラグビー生活を終わらせられたら」
「チームがすごくいい形で回っている」と充実感を語る 【写真提供:WOWOW】
やはり国によってコーチのカラーも違いますし、攻めるスタイル、練習プランの立て方も違います。どれが自分に合う合わないではなく、いろいろな考えを聞くことで、日本にも日本独自のラグビー文化ができていくんじゃないかと思います。
――特に今年はワールドカップ優勝監督(2007年)のジェイクのもとでプレーしています。
僕はクラブキャプテンという立場で、ジェイクとは密に話をしている方なんですが、ジェイクはチームに一体感を持たせるのが得意だな、すごく大事に考えるコーチなんだなと感じます。
いろいろなことを選手に話すんですが、最後は選手自身で決めて、報告してくれと言われます。選手を尊重してくれるから、チームに一体感が生まれる。試合のメンバーを決める時も、頑張っている選手を見ている、選手の努力を見ている。今はトヨタに入って一番、一体感があるチームになっていると思います。
――1年目の姫野選手をキャプテンに指名したことには驚きました。
僕ら選手も、ジェイクはどんな人なのかを知っているわけじゃないし、どんな意図で姫野をキャプテンにしたんだろう?と思っていたんです。
すると、実際に彼はグラウンドで圧倒的にいいパフォーマンスをして引っ張っていく。もちろん1年目なので、できないこともあるけれど、そこはベテランがサポートしていく。そうしたら、チームがすごくいい形で回っていくんですね(笑)。
選手の心をつかむのがうまいし、一人一人を尊重して接してくれていることが大きいんだな、と感じます。
――トヨタでは最年長選手となりました。北川さんが36歳でいまも現役を続けるモチベーションはどういうものですか。
今振り返ると生意気なんですが、大学から入った時は『トヨタを優勝させたい』と思っていたんです。でもまだトップリーグ優勝をできていない。トヨタを優勝させて、自分のトヨタでのラグビー生活を終わらせられたらいいな、というのが一番のモチベーションです。
プレーヤーとしては、20代のときと何が違うかというと、余裕があるというか、プレーの合間にちょっとした周りへの声のかけ方で、チームがうまく回ったりします。そういうことができるようになったし、監督とも話して、選手とコーチングスタッフの橋渡しのような役目もできるようになってきました。長くやらせてもらって、良い経験をさせてもらってるなと思います。
――今年のトップリーグについて聞かせてください。
トップリーグではもちろん、自分たちのチームが勝つことが一番楽しいんですが、今年はチームがスタートしたところから、上位に行けそうな雰囲気、盛り上がりがありますね。
勝てない試合があっても、みんなで課題を見つけて、ひとつひとつ乗り越えて、またチームの力が積み上がっていく。それが楽しいですね。最終的にどういうシーズンの終わり方になるのかは分からないですが、良いシーズンだったなと思える終わり方にしたいし、そうなる期待感があります。
もちろん結果が大事なので、結果にこだわってやっていくけれど、もしかしたら今シーズンだけじゃなく、2年、3年先には今とは全然違うチームになっていくかもしれない。そういう可能性を秘めたチームでラグビーをしていることに、今は充実感を覚えています。
北川俊澄(きたがわ・としずみ)
小学5年のとき南京都ラグビースクールでラグビーを始める。
伏見工で高校日本代表に選ばれ、関東学院大を経てトヨタ自動車へ。
2005年スペイン戦で日本代表デビュー。2011年ワールドカップNZ大会など43キャップを持つ。
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