ラグビー元日本代表の忘れえぬエピソード 世界的名手を激怒させた“髪の毛事件”

WOWOW

大西将太郎氏が戦った世界最高クラスのCTB

ボールを持って突進するノヌー。現在はフランスで活躍している 【Getty Images】

 こんにちは、大西将太郎です。
 現役を引退して2年、解説をする試合に友達や対戦したことのある選手が出場していると、なんだかうれしい気持ちになるし、コメントにも熱が入ります。しかし、どこかにうらやましい気持ちも残るのは、まだまだプレーしたい気持ちの裏返しなのかもしれません。
 それはさておき、僕はキャリアが長かったこともあり、対戦したことのある選手は多い方だと思います。今回は、かつて日本でもプレーし、現在はフランスリーグTOP14で活躍している2選手を取り上げ、彼らとの思い出を少し書いてみます。

 まず頭に浮かぶのは、オールブラックスで不動のセンターとして活躍し、二度の世界一を経験したマア・ノヌー(182cm、102kg)。現在はRCトゥーロンでプレーをしています。
 ノヌーの持ち味といえば、多くの人が激しい突破、強靭なタックルをイメージされると思いますが、僕が対戦して一番に驚いたのは、パスが長くて速いうえに正確だということ。突破を警戒するあまり彼に集中していると、長くて速いパスを出されるので、ディフェンスをずらせなくなり、次の選手にタックルにいくのが間に合わなくなってしまう――。激しい突破だけでなく、正確なパスも出すことができるからこそ、世界最高クラスのCTBと呼ばれるのだと思います。

「髪の毛をつかまれるのが嫌なら散髪屋に行け!」

日本ではリコーに所属して、攻守に激しいプレーを見せた 【写真:築田純/アフロスポーツ】

 彼とは、2007年に開催されたワールドラグビーパシフィック・ネーションズカップの日本代表対ジュニアオールブラックスが初めての対戦でした。この時の来日メンバーは、その年に開催されるワールドカップメンバーの最終選考も兼ねていたので、非常に強力な布陣だった思い出があります。
 その後、彼が2011年にトップリーグのリコーブラックラムズに加入して再度対戦することになるのですが、この試合のエピソードは今でも忘れられない思い出です。つい先日、テストマッチでも似たようなシーンがありましたね。オーストラリアと南アフリカの一戦で物議となった、タックルの時の「髪の毛引っ張り事件」です。

 みなさんもご存知のように、ノヌーはドレッドヘアーの長髪なのですが、試合中、彼がアタックを仕掛けてきた時に僕が抜かれそうになり、たまたま僕の手が髪の毛に掛かってしまいました。おかげで抜かれることはなかったのですが、そのプレーの後、彼は僕に対して激しい口調で激高してきました。僕もわざとではなかったし、若かったので「髪の毛をつかまれるのが嫌なら散髪屋に行け!」と言い返しました。そこから試合終了までお互い激しくバトルを繰り広げました。しかし、試合が終わるとノーサイド。お互い歩み寄り、握手をして仲直りした思い出は今でも忘れられません。
 昨年、WOWOWの取材でフランス、トゥーロンへ行った時、この話をしようと試合後にミックスゾーンで待っていましたが、ノヌーは別の出口から出て行ってしまい、話すことができませんでした。また今度どこかで会えたならその時にしてみようと思います。

日本でも活躍した巨漢WTBナドロ

世界のどのリーグでも活躍を続けるネマニ・ナドロ(左) 【Getty Images】

 そしてもう一人、忘れてはいけないのがネマニ・ナドロ(WTB/194cm、135kg)です。2011年〜2015年までトップリーグのNECグリーンロケッツでプレーし、現在はモンペリエに所属しています。日本でも人気があり、トップリーグでは2度のトライ王に輝くなど活躍した選手で、その後、スーパーラグビーでもトライ王に輝き、また、今シーズンのTOP14でもトライを重ねているため、もし、トライ王になると世界3つのリーグでトライ王となります。僕の知る限りでは、この3つのリーグでトライ王に輝く初めての選手だと思います。

 ナドロはトライを獲る能力と、嗅覚を兼ね備えています。しかし、それだけではなく大きな体からは想像もつかない器用な部分も多く、キッカーとしても優れています。そして、大きな体と長い手を使ってオフロードパスと言われる、タックルをさせてからパスすることもうまいのでトライをとるだけでなく、アシストも多い選手なのです。

フランスから「ラーメン食べたい」

大西将太郎氏とナドロ 【写真提供:大西将太郎】

 彼が来日した年、北海道での夏合宿で行われた練習試合で大活躍し、強烈なインパクトを受けました。その後のトップリーグでも何度も対戦しては大きな体に弾き飛ばされました。しかし、見た目とは違い、フレンドリーで陽気な性格なので、すぐに仲良くなれましたね。
 今でもSNSやメールなどで連絡をすることもありますが、そんな時には、まだ覚えている日本語で「ラーメン食べたい」と言ってきます。かわいいところがあるんです。
 彼にはぜひTOP14でもトライ王に輝いてほしいと願います。今シーズン、ここまでチームも好調なので、可能性は充分にあります。

 このように、今までたくさんの選手と対戦し、仲良くなって友達ができました。それら全てが僕にとってはかけがえのない財産です。今、ラグビーを頑張ってプレーしている人も、今後ラグビーを始めようと思っている子供たちも、ラグビーを通じて、どんどんと世界中に友達を作り、多様な価値観に触れてほしいと思います。

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