ラグビー界の“小さな巨人”アプロン 「いつも日本に行きたいと思っていた」

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「日本のゲームはテンポが速くて、ランは爆発的」

南アフリカ代表として活躍し、今季からトヨタ自動車でプレーしているジオ・アプロン 【Photo by David Rogers/Getty Images】

 今季、フランスリーグTOP14のグルノーブルから日本のトップリーグ、トヨタ自動車ヴェルブリッツに加入したのが、南アフリカ代表17キャップを持つWTB/FB(ウイング/フルバック)のジオ・アプロンだ。
 175cm、78kgという体格ながらも、世界でもっとも屈強な男たちが集まる南アフリカ代表で活躍した“小さな巨人”。
 南アフリカでプレーしていた当時から、ワイドでスピーディーにボールを動かす日本のトップリーグでプレーするのが夢だったという快速ランナーの特徴は、独自のクールでニュートラルな視点。3シーズンにわたってプレーしたフランスTOP14についても独特の見方で話してくれた。

――スーパーラグビー、フランスリーグTOP14、トップリーグをプレーしてきました。その中で、TOP14にはどういう特徴がありますか?

 TOP14のラグビーは、日本のラグビーに比べるとスローですね。そしてフィジカル。特にフォワードは大変です。
 TOP14は夏にスタートして、秋、冬、そして春とリーグ戦を戦って、ファイナルはまた夏と、あらゆる季節を経験します。その間、ピッチは完全に湿っていたり、完全に泥だらけだったり。時にはとても快適にプレーできる時期もありますけどね。
 ゲームは日本よりスローで、選手のフィットネスレベルも日本ほど良くないと思います。日本のゲームはテンポももっと速いし、ランのスピードももっと爆発的ですから。
 分かりやすく言うと、TOP14は日本のトップリーグよりも少しスローだけど、もっとフィジカルで、よりスクラムに重点が置かれ、フォワードをもっと使うプレーが多いです。

――南アフリカもとてもフィジカルなラグビーに見えますが。

 僕はバックスだからそうでもないですけど、フォワードは確かにタフですね。ただ、フランスの方がもっとフィジカルです。
 フランスの方がよりスローで、試合もフォワードに偏ります。近いエリアでの強いコンタクトのやり合いが多くなります。例えば、スーパーラグビーでは、スクラム、ラインアウトはゲームをスタートする起点ですが、フランスではそのコンテストがゲームの見せ場なんです。スクラムでペナルティーを取ることが、ゲームをリスタートすることよりも大事になっています。

――ラグビーの環境という面ではいかがですか。

 選手にとってのコンディションは南アの方がフランスよりも優れていると思います。TOP14はもしチームがファイナルまでいったら、シーズン終了から次のシーズンインまで準備期間が4〜6週間しかありません。

 スーパーラグビーでは、テストマッチシーズンが終わってからでも3カ月近い準備期間があります。この時間があるから、スーパーラグビーでは多くのチームが、大会に勝つこと、優勝することを目的に準備をしています。だけどフランスでは、トロフィーにチャレンジしているのはトップの7、8チームくらいで、残りの5、6チームはリーグに残ることが目標です。否定的に言うわけではないですが、多くのチームは、短いオフには最低限の準備だけして、リーグ戦が始まったら、TOP14に残れればいいと思って戦っています。一方、トップのチームは前シーズンよりもさらに上を狙おうとしています。上位の7チームと残りの7チームの間にはギャップがあるんです。

ジェイク・ホワイト監督の存在「僕には得るものがある」

アプロンは「日本に来ることはずっと前からの選手としての希望でした」と語った 【写真提供:WOWOW】

――フォワードが主役のTOP14で、バックスの選手はどうアピールするのですか?

 カウンターアタックですね。これはとてもエンジョイできました。
 スーパーラグビーはディフェンスのシステムが成り立っているので、どのチームでも、あるいはどのポジションに誰が出ていようとディフェンスは同じ方法で行います。13番で誰が出ても、13番の役割ははっきりと決まっているんです。

 でもTOP14では、ディフェンダーの一人一人がそれぞれのやり方でディフェンスをします。システムはありますが、チームによって、選手の個性によって、ディフェンスの方法が異なるんです。

 これは、それまでとは異なるプレッシャーでした。いや、むしろ、プレッシャーはなかったかな。もちろん勝ちたいのだけれど、追求していたのは、アタックすること、カウンターアタックをすること、ほかのことは気にしない。それは僕にとっては、それまで知らなかった経験でした。試合に出て、ラグビーをひたすらエンジョイする、という意味では、フランスでの経験はとても楽しかったです。

――そのフランスを離れて日本に来た理由は。

 正直に言うと、南アのストーマーズでプレーした後で、日本に来たいと思っていたんです。でもチャンスがなくてフランスに行きました。
 フランスではどの瞬間も楽しむことができましたが、いつも日本に行きたいと思っていました。選手たちのプレー、速いゲーム展開、いいコンディションでプレーができる。グルノーブルとは、さらに4年の新しい契約をもらっていましたが、日本に来るチャンスがやってきたんです。それですぐにチームにお願いしました。日本にはとても行きたかったので。

 自分のキャリアとして、2つのことが大事でした。まず日本に来ることはずっと前からの選手としての希望でした。そしてジェイク・ホワイト監督のもとでプレーできるということです。トロフィーを獲得するだけでなく、僕には得るものがあると感じたのです。そしてトヨタ自動車ヴェルブリッツは伝統的に、強いチームだと知っていましたし、ジェイク監督は、どこでも成功する指揮官だと分かっていましたからね。彼とクラブが僕にチャンスをくれたことに感謝しています。

――最後に、今年のTOP14の注目選手を教えてください。

 今年の? そうね、たくさんいるよ(笑)。
 クレルモン・オーヴェルニュには、2人いると思います。WTBのアリヴェレティ・ラカ。彼は最初の数週間、とても良いプレーをしていました。それから、CTB(センター)のダミアン・ピノー、彼は南ア戦で(フランス代表)デビューしましたよね。将来性のあるとても良い選手です。それから、RCトゥーロンでは、アルゼンチン代表のFL(フランカー)ファクンド・イサ、彼も良いですね。

 注目チームは、今年はリヨンです。ものすごく良いスタートを切っています。スーパースターはあまりいないですが、良い選手がそろっています。やるべきことがわかっている選手たちですね。
 ラ・ロシェルは、昨年良いシーズンだったので、今年も良いでしょう。そして、今年はスタートからボルドー・べグルも良いですね。でもTOP14の面白いところは、スタートや途中ではなく、最後が大事だということ。レギュラーシーズンの最後の4週間は、順位の変動がすごいことになりますよ。勝ち点差が小さいから、チームが3位、4位、5位と次々入れ替わります。最後の2週間で、14位くらいだったチームが2位くらいに上がることもあります。そんなトリックがあったりするのがTOP14なんです。まるでジェットコースターのようです。だからTOP14は最後の2週間までずっと見守らないといけません。どのチームが落ちるのか、どのチームが上がるのか予測するのが難しい、本当にタフなリーグです。

ジオ・アプロン

1982年10月6日、南アフリカ・ケープタウン生まれ。35歳 ポジションはFB、WTB
ウエスタンプロビンス代表を経て、2005年からセブンズ南アフリカ代表、
2007年、ストーマーズでスーパーラグビーにデビュー。2014年まで84試合出場
2010年6月のウェールズ戦で15人制南アフリカ代表にデビュー。2010年のフランス戦で2トライをあげるなど、2012年イングランド戦まで17キャップ、通算5トライ25得点
2014年から2017年までフランスリーグTOP14のグルノーブルでプレー。
2017年、トヨタ自動車ヴェルブリッツに入団。10月1日のクボタ戦で3トライのハットトリックを達成し、マン・オブ・ザ・マッチ受賞。

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第14節:
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