J1からの降格組を脅かす、東北勢、長崎、そしてRB 3人のエキスパートによるJ2展望座談会【前編】
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仙台に感じるチームとしての幹の太さ
●Aクラス予想(並び順は北から)
土屋雅史:札幌、仙台、山形、大宮、磐田、鳥栖
池田タツ:仙台、山形、大宮、磐田、長崎、鳥栖
土屋 仙台は昨シーズン、一番悔しさを味わったチームだと思うんです。僕はJ1昇格プレーオフ決勝にも行きましたが、試合後のセレモニーでファジアーノ岡山が初昇格に沸いている姿を、仙台のほとんどの選手が見ていました。なかには泣いている選手もいましたし、相当に悔しかったはずですが、メンタル面で、あの経験が今年に生きてくると思いますね。
加えて、森山(佳郎)監督の手腕。就任1年目の昨シーズンもきっちりチームを仕上げてきましたし、単純にチームだけではなく、サポーターやスタジアムの雰囲気なんかも含めて、たった1年で一気に仙台を変えてしまった。
確かに、13ゴール・5アシストという数字を残した中島元彦(→セレッソ大阪)が抜けたのは痛手です。その穴を地元・仙台に戻ってきた武田英寿(←浦和レッズ)がどこまで埋められるかが、1つのポイントになるでしょうね。とはいえ、各ポジションに2人のレギュラークラスがいて、長いシーズンを戦い抜けるだけの選手層の厚みもあります。総合的に判断して、僕は自動昇格(1~2位)もあると見ていますよ。
佐藤 一昨年から昨年にかけてのチームの成長率が一番大きかったのが仙台。ゴリさん(森山監督)が、自分のやりたいサッカーができる面子を揃えられた今シーズンは、さらに上を目指せると思うんです。
ゼネラルマネージャーの庄子(春男)さんのもと、強化とヴィジョンをすり合わせたチーム作りも行われていて、何よりこのオフの補強で驚いたのが、石井隼太(←水戸ホーリーホック)という23歳のディフェンダーを獲得したことなんです。水戸でまだレギュラーにも定着していない選手を、結構な違約金を払ってまで獲得したのは、5年後も見据えたヴィジョンがあるからでしょう。もちろん今年も勝ちに行くと思いますし、僕も自動昇格が狙えると予想していますが、そうした補強面からもチームとしての幹の太さを感じるんです。
──池田さんは、今年の仙台をどう見ていますか?
池田 まずは中島の穴をどう埋めるかだと思うんですが、たぶんそれは1人じゃ埋まらない。土屋さんが挙げてくれた武田とともに、僕がカギを握る存在になると考えているのがエロンなんです。1年前のキャンプで見たときは、箸にも棒にもかからないアタッカーだなって思ったエロンですが(笑)、今年のキャンプにはしっかりと身体を絞って、初日からトップコンディションで入ってきていた。昨シーズン後半戦の活躍を見ても分かるように、コンディションさえ整っていれば、彼は開幕から計算できますからね。
あとはキャンプを見ていても、チームの雰囲気がさらに良くなっていて、とにかくゴリさんが徹底的に笑いを取って、もう至るところに笑顔がこぼれている。それは去年、あれだけきついキャンプを乗り越えた結果として、シーズン終盤戦でも体力が落ちなかったことがデータで証明され、それが選手たちの自信につながっているからでもあると思うんです。チームの強度は相変わらずめちゃくちゃ高いですよ。
選手で言えば、栃木SCから加入の宮崎鴻が前線のターゲットマンとしてかなり相手にとって厄介なFWになりそうな気がしています。2年目でチームにも馴染んだ梅木翼とともに、前線に高さのある選手が2人いるのは大きい。
土屋 宮崎は昨シーズンの栃木SCで、FWの育成に長けた小林伸二監督の指導を受けて、しっかりと点も取れるようになりました。僕は前橋育英高時代からすごく期待している選手なんですが、めちゃくちゃ素直だし、これから伸びる要素は大いにあると思います。
池田 指導を真っすぐに受け止めて努力できそうな選手だし、ああいうタイプはゴリさんのもとでひと皮むけそうですよね。
──では続いて、同じく3人がそろってAランクに推す山形について、それぞれの見解を聞かせてください。
土屋 正GKの後藤雅明(→V・ファーレン長崎)が移籍してしまったのはかなり痛い。ですから、その後釜として獲得した、オーストラリアの年代別代表歴のあるトーマス・ヒュワード=ベル(←ウエスタン・ユナイテッドFC)のパフォーマンスが、今シーズンを左右する1つのカギになると見ています。
とはいえ、主力がほぼ残留したうえに、中村亮太朗(←清水エスパルス)、吉尾海夏(←済州ユナイテッド)、野嶽寛也(←鹿児島ユナイテッド)と、計算できるタレントもしっかり補強していますからね。順位的にも2021年が7位、22年が6位、23年が5位、24年が4位と確実に右肩上がりで来ています。渡邉晋さんが23年4月に監督に就任してからの過去2シーズンは、23年が4分け(35試合)、24年が6分け(38試合)と、引き分けが相当少ないんですけど、例えば1点差で負けていたような試合を引き分け以上に持っていければ、今シーズンのJ2で主役にもなれると思います。
あとは土居聖真の存在ですね。J2ではちょっと手が付けられないレベルなので、(昨シーズンは途中加入だった)彼が1シーズンを通して躍動したら、とんでもないことになるのかなって。
佐藤 6位以内は十分に狙えると思いますが、ポイントは「前半戦をどう戦うか」でしょうね。この2年はスタートでつまずき、後半戦で巻き返してプレーオフ圏内へ、というパターンが続いていますが、自動昇格を果たすためには、やはり序盤戦でいかに勝ち点を積み上げられるかだと思います。
池田 例年、シーズンの途中で的確な補強を行い、しっかり軌道修正できるのはフロント力の賜物だと思います。ただ、修正ばっかり上手くてもどうなの? ってところはあって(笑)、やっぱり佐藤さんの言うように、前半戦の戦い方がこのチームの課題になるのかなと。
それでも、外国籍選手が抜けた穴を埋めるのに時間がかかった昨シーズンとは違って、今シーズンは主力の大半が残留しましたし、補強も素晴らしかったので、僕はストレートインもあり得ると見ています。新守護神ヒュワード=ベルの実力は未知数とはいえ、GKには有望株の寺門陸(←横浜F・マリノス)も獲得していますからね。そういうところも抜かりないなって感じます。
降格3チームはどこも時間がかかる?
佐藤 Aクラスには推しますが、磐田のストレートインはないんじゃないかと。降格3チーム(もう1チームは北海道コンサドーレ札幌)はいずれも監督が代わりましたけど、唯一外国人監督(ジョン・ハッチンソン)を招聘したのが磐田。外国人監督がJ2を勝つっていうのはレアケースで、ハッチンソン新監督率いる磐田もJ2独特の戦いに飲み込まれてしまうんじゃないかという危惧があります。
ただ、そうは言っても戦力は圧倒的で、少なくとも6位以内には入ってくる。前線からチーム得点王のジャーメイン良(→サンフレッチェ広島)が抜けましたが、渡邉りょうをレンタルから完全移籍に切り替えて残したうえで、佐藤凌我(←アビスパ福岡)を獲得するなど、1年でJ2を抜け出そうという強い意思が補強面からも伝わってきます。
池田 J2に落ちてきた3チームは、どこも時間がかかるだろうなというのが、正直な僕の見立てです。いずれも監督が代わりましたし、なかでも磐田は「これはもう別のチームだぜ」って思うほど、選手も含めて全部が変わってしまった。とはいえJ2はもちろん、J1でも実績を残している選手を多く加え、確かに主力を引き留められなかった点は疑問として残りますが、それをカバーするだけの補強を実現している。
1つ影響として大きいのが、26年8月から秋春制に移行するのに伴い、26年前半に昇降格のない「0.5シーズン」が開催されること。つまり今年昇格してしまえば、無条件で「1.5シーズン」をJ1で戦えるので、例年以上にどのクラブも昇格への想いが強いと思うんです。補強にお金もかけるだろうし、その動きも自然と早くなると想定されるなかで、これだけいい選手を獲った磐田のフロント力は、おそらくシーズン中の補強でも発揮される。それがAクラス入りを予想する理由ですね。
土屋 今シーズンのJ2で唯一の外国人監督であるハッチンソンは、F・マリノスでコーチや暫定監督を務めた経験があるとはいえ、シーズンの頭から監督としてチームを率いるのは今回が初めてですからね。そこがどうなのかなっていう不安はあります。
もちろん、ジャーメインの抜けた穴をどう埋めるかも大きなテーマですけど、僕が期待するのは佐藤凌我。去年は怪我の影響で満足にプレーできませんでしたが、本来は二桁得点も十分に狙えるポテンシャルの持ち主ですからね。彼がどれだけ点を取れるかが、今シーズンのカギになると思います。
あとは、若手の突き上げがあるかどうか。そういう意味でもギラヴァンツ北九州からレンタルバックしてきたアカデミー育ちの藤原健介(21歳)は、非常に技術が高くて、かつての川辺駿(現サンフレッチェ広島)のようなMFにもなり得るタレントだと思います。それから、筑波大から加入したルーキーの角昂志郎(22歳)。19年のU-17ワールドカップにも出場した逸材が定位置をつかむようなことがあれば、間違いなくチームは活性化するでしょうね。
──鳥栖はどうでしょう?
土屋 GKの朴一圭(→横浜FM)、最終ラインの原田亘(→柏レイソル)と山﨑浩介(→横浜FC)、さらにトップのマルセロ・ヒアン(→FC東京)と、軸になるような選手がかなり抜けましたが、一方で期待できる新戦力も補強しています。
まずGKに泉森涼太(←鹿児島ユナイテッド)を獲れたのは相当大きい。結果的に鹿児島は降格しましたけど、昨シーズンのJ2を見ていれば、泉森がどれだけ素晴らしいGKかってことは、たぶん誰でも分かるでしょう。1試合で最低1つはファインセーブを見せてくれますからね。それから中盤には西澤健太という、清水が出しちゃいけなかったと思うようなタレントも完全移籍で獲得しましたし、愛媛FCからはセンターバックコンビ(森下伶哉と小川大空)をそのまま引き抜いています。
しかも、アカデミー出身者にもいい選手が多いんです。今年、筑波大の4年生になる安藤寿岐を1年早く鳥栖に戻していますが、センターバックとサイドバックが務まる彼は、1年目から即戦力としてやれると思います。さらに堺屋佳介、楢原慶輝、北島郁哉と、この1~2年でトップに上がった楽しみな若手がいて、今年は2種登録の昨シーズンにJ1でゴールを奪った鈴木大馳という18歳のFWも昇格してきました。こういった選手たちが、小菊(昭雄)さんという若手の育成に長けた監督のもとで爆発する可能性があるんじゃないかと。その爆発力に期待して、Aクラスに推した感じですね。
佐藤 付け加えると、小菊さんがセレッソ大阪時代に指導していた西川潤(←いわきFC)、山田寛人(←C大阪)、新井晴樹(←水戸)ら“小菊チルドレン”と呼べる選手たちが加わったことも、ベース作りにはプラスに働きそうですね。
ただ、それにしても水戸から獲っていったなぁって思いはあります(苦笑)。新井もそうですけど、それ以上に櫻井辰徳ですよ。途中加入の昨シーズン後半戦は、僕がこれまで水戸で見てきたなかでもナンバー1と言えるパフォーマンスを披露していたボランチでしたから。新戦力で言うと、先ほども名前が挙がった西澤もキープレーヤーでしょうね。J2はセットプレーでどれだけ点が取れるかが非常に重要なので、彼のようなキックの名手が加わった意味はかなり大きいですよ。
こうして本当にいい選手は獲れていますから、あとは小菊さんのチームマネジメントに懸かってきそうな気がしています。
土屋 僕も櫻井にはすごく期待しているんです。彼、今年の大卒ルーキーと同じ学年なんですよね。前橋育英の同じ学年で、高卒でプロになったのは櫻井だけですから、やっぱり今年大卒でプロ入りする稲村隼翔(アルビレックス新潟)や中村草太(広島)といった選手たちに、4年間の違いを見せつけたいと思っているはずなんですよね。
池田 彼の場合は、徳島ヴォルティス時代にダニエル・ポヤトス監督(現ガンバ大阪)の指導を受けたのが結構大きくて、そこで中盤の底としてのボールの動かし方を学び、外せない選手に成長したんですね。だから昨シーズン途中に、(レンタル元の)神戸からJ2の水戸に行ったのは正直、驚きでした。J1の下位クラブでも十分通用すると思っていましたから。おそらく守備面での激しさを身に付ける狙いだったんでしょうが、今回鳥栖に来て、小菊さんのもとでプレーすることで、今度こそ次のステージにステップアップする準備が整うんじゃないかと見ています。将来的には代表入りも期待できる選手ですよ。
佐藤 強度とか運動量とか、自分の弱点に対して真摯に向き合える真面目な選手ですからね。今シーズンのJ2で、圧倒的なものを見せてもらいたいです。
池田 鳥栖の新戦力だと、レノファ山口からレンタルバックの平瀬大にも期待しています。菊池流帆(現FC町田ゼルビア)にも似た、とにかくメンタルの強いセンターバックで、ちょっと怪我がちな点は気になりますけど、あの対人の強さは魅力です。ボールへの執着心が凄まじくて、点が取れるディフェンダーでもあるので、シーズンを通してプレーできればひと皮むける可能性があります。
ぶっちぎりで優勝してもおかしくない長崎
土屋 岡村大八(→町田)、駒井善成(→横浜FC)、鈴木武蔵(→横浜FC)、菅大輝(→広島)といった主力がごっそりJ1クラブに引き抜かれた一方で、即戦力クラスの補強と言えば、3年ぶりに復帰した高嶺朋樹(←コルトレイク)くらい。ただそんな中でも、昨シーズンのJ1でドリブル数ランキングが日本人トップ(全体4位)だった近藤友喜が残ったのは非常に大きい。さらに近藤以外にも、アカデミー育ちの中村桐耶、大卒2年目の田中克幸、J3から叩き上げの家泉怜依など、20代半ばまでの選手に、J2で磨かれればブレイクする可能性を秘めたタレントが少なくないんです。
こういった選手たちの向上心を、岩政大樹新監督がいかにくすぐり、成長を促していくか。そして若い彼らが、岩政さんの戦術的なサッカーをどれだけ吸収し、ピッチ上で体現できるか。そのあたりを、僕はすごく楽しみにしています。
──実際にキャンプを取材した池田さんはどうですか?
池田 岩政監督の練習って、最先端のトレーニングメニューを採り入れていてめちゃくちゃ面白いんですね。ただ、大切なのはそれがどれだけ選手に響いているかだと思うんです。どうしても岩政さんが理想として掲げるサッカーのレベルが高すぎて、練習中に「やべぇー、頭がパンクするー」って言ってる選手もいましたけど(笑)、正直これは時間がかかるだろうなって感じましたね。
とにかくミシャ(ペトロヴィッチ監督)のやり方から脱却しようと、5レーンを意識したサッカーをやろうとしているんですが、レーン間を移動して入れ替わるところに選手がかなり頭を使って、そこに労力を奪われていましたね。ただ、長崎との練習試合では、札幌の選手たちの個の能力が際立っていて、もはやエース格の近藤はもちろん、中盤でゲームを作っていた田中もすごく良かった。
土屋 田中、いいですよね。僕は代表まで行けるタレントだと思っていますよ。
池田 札幌って主力が流出したイメージがありますけど、実は青木亮太なんかも含め、実力者は結構残っているんです。彼らがトレーニングマッチでもすごく効いていたし、間違いなく個の力はあります。新戦力の高嶺も、はっきり言ってJ2のレベルではないですから。もちろん、選手たちが岩政さんの理想を体現できればAクラスもあると思いますが、長崎戦も個人の能力で正面からぶつかって良いゲームをしたに過ぎませんからね。少なくともストレートインはないと、僕は見ています。
佐藤 僕もAクラスには入れましたが、ちょっと苦しむだろうなとは予想しています。やっぱり、7年という長期政権を築いたミシャの跡を受けて、ここから新たなチームを作るのはかなり骨が折れる作業だと思いますからね。
とはいえ、個のクオリティーは圧倒的です。昨シーズンのJ1後半戦で勝ち点を積み上げたメンバーがだいぶ残っていますし、岩政さんは戦術で勝とうとしているのかもしれませんが、個で殴りに行っても問題なく勝てるチームなんですよね。そうやって戦いながら、徐々に戦術を植え付けていって、後半戦である程度自分たちのスタイルが確立されれば、トップ6の中でも上のほうに行けるかもしれません。ただし、上手く行かない可能性も十分あるかなと。
──次は佐藤さんと池田さんがAクラスに入れている長崎(昨季3位)ですね。
佐藤 圧倒的に強いだろうなって思います。それこそプレーオフ準決勝で敗れた昨シーズンの悔しさもあるでしょうし。あとは、昨年10月にオープンした新スタジアム(ピーススタジアム)を、シーズンの頭から使えるのも大きいと思います。昨シーズンも、あのスタジアムができてからグッとギアが上がりましたからね。
とにかくここも個で殴れるメンバーがそろっていますし、その中でもエドゥアルド(←横浜FM)と山口蛍(←神戸)の補強は大きい。山口を口説くのに、スタジアムに併設されたあの素晴らしいホテルに泊まらせたそうなんですが、翌朝には「ここでやりたい」って言ったらしいですよ。そんなことをやられると、もう太刀打ちできない(苦笑)。クラブとして、街としての強さが、長崎にはあるなって思いますね。
個人的には、新潟医療福祉大から加入した松本天夢というFWが結構いいなって思ったんですが、外国籍選手とか日本人の大物だけじゃなく、こういう選手もルーキーでちゃんと獲っているところも、長崎の強み。クラブとしての総合力の高さをすごく感じますし、僕は優勝候補に挙げてもいいと思っています。
池田 昨シーズン、もしあの新スタジアムを頭から使えていたら、昇格できていたんじゃないかと思うんです。僕はプレーオフの準決勝を見に行ったんですが、ホームなのに仙台に応援で負けていたんですね。0-2から1点返した瞬間も、本来なら一気に盛り上がるはずなのに、ファン・サポーターがまだ新しいスタジアムに慣れていないから、「さあ、もう1点取りに行くぞ」っていう空気にならなかった。それがすごく残念で。2年目になる今シーズンはそんなことにはならないかなと。
戦力的には、J1でも十分に戦えるレベル。昨シーズンの長崎って、ビルドアップがそれほど上手くなくて、後ろからしっかりつないで剥がせたシーンはそんなに多くなかったんです。それが、縦パスが死ぬほど上手いセンターバックのエドゥアルドと、後ろに下げたときに安心感のあるGK後藤の加入によって、大きく改善されると思っています。あと、山口蛍が「とにかく今年はゴールにこだわる」という話をしていて、練習試合でもクロスに対してかなり大胆に飛び込んでいました。そんな彼の得点力を引き出せるだけの戦力が整っています。あとは、下平隆宏監督がどう導くか。
──土屋さんは唯一Bクラスに入れていますね。
土屋 Bクラス予想ですが、当然Aクラスに入れるだけの力はあると見ています。ただ、僕はお2人が言っていたストロングになり得る点が、逆にウィークポイントになり得ると思っているんです。
まず、ビルドアップについて補足すると、下平さんって本来は「ミスター・ポゼッション」みたいな監督なんですが、それが去年、カウンターに寄って行った一番の理由は、マテウス・ジェズス目がけて蹴っておけば、点が取れちゃうからなんです。しかし、昨シーズンに18ゴールを挙げた彼への過度の依存は危険です。去年もジェズスの運動量が落ちた夏場に、チーム全体も調子を落としてしまいましたからね。
あと、僕は昨シーズンの長崎で絶対に外せなかったのは秋野央樹(→福岡)と田中隼人(→柏)だと思っていたんですが、この2人が抜けたアンカーとセンターバックのポジションにそれぞれ山口とエドゥアルドを獲ったわけですよ。ただ、エドゥアルドは31歳、山口はもう34歳なんですね。当然J1よりもスケジュールがタイトな中で、彼らがシーズンを通してフルで戦えるのかっていう不安は、どうしても否めない。
それに、これだけ選手がそろっていると、例えば結果が出なくなったときのマネジメントがより難しくなるのかなと。トレーニングマッチの情報を見ていると、フアンマ・デルガドみたいなアタッカーが4本目に出てきたりしているんですね。エジガル・ジュニオやマルコス・ギリェルメも含め、J1でもやれるような選手たちが試合に出られない状況が続いたときに、下平さんがどれだけチームをコントロールできるのか。そうした不安要素もあると思います。