強いフェラーリが戻ってきた! 復活を遂げた3つの理由

柴田久仁夫

今季二度目の1-2勝利を果たし、歓喜のフェラーリ陣営 【©ScuderiaFerrari】

フェラーリは、なぜ圧勝できた?

 今年のF1アメリカGPは、フェラーリの圧勝だった。3位に終わったマックス・フェルスタッペンに対し、優勝したシャルル・ルクレールは約20秒、カルロス・サインツも10秒以上の大差をつけて、1-2フィニッシュを果たした。

 二人は前日のスプリントレースでも4位、2位に入っており、この週末だけで55ポイントの荒稼ぎ。相変わらずフェルスタッペンしか上位入賞できないレッドブルは約半分の29ポイントしか獲得できず、フェラーリとの差はついに8ポイントまで縮まった。1カ月前のアゼルバイジャンGPでマクラーレンから首位を奪われたのに続き、レッドブルの選手権3位陥落がいよいよ現実味を帯びてきた。

 それにしてもアメリカでのフェラーリは、強かった。一発の速さこそ、スプリント予選はフェルスタッペン、本予選はランド・ノリス(マクラーレン)に及ばなかったが、レースでは別次元の速さを見せたのだ。

 スタートで4番手から一気に首位を陥れたルクレールは、チェッカーまで独走した。これで9月のイタリアGPに続いて今季3勝目。サインツも上位入賞を続けており、フェラーリの直近5戦の獲得ポイントはマクラーレンの178に次ぐ151。レッドブルの96をはるかにしのぐ。

 そんなシーズン終盤のフェラーリの好調ぶりは、何を意味するのか。

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「勝利の3要素」が揃いつつあるフェラーリ

決勝レースでのフェラーリはライバルたちを寄せ付けない速さを見せた 【©ScuderiaFerrari】

 F1では、「マシン」「ドライバー」「チーム運営」の3要素が非常に高いレベルで揃っていなければ、勝利は望めない。フェラーリはここに来て、そんな理想的な状態にかなり近づきつつある。まずはマシンだが、フェラーリSF-24は今季大きな進化を遂げてきた。

 すでにシーズン前半の第3戦オーストラリアでサインツ、第8戦モナコではルクレールが勝って、フェラーリはレッドブルから僅差の選手権2位につけていた。ただしサインツの勝利はフェルスタッペンのブレーキトラブルによるリタイアに助けられたもので、ルクレールも抜けないモナコならではの勝利と言えた。

 そしてその後の7レースはずっと勝てず、マクラーレンが一気に戦闘力を増したことで選手権3位に後退する。さらに第10戦スペインで投入した大幅アップデートは、高速走行時のバウンシング(激しい縦揺れ)を産む逆効果となった。

 しかしその後、イタリア、アゼルバイジャン、シンガポールと細かい改良を繰り返し、この症状は徐々に改善していった。サインツは今回のアメリカGPの直前、「この週末は、これまでの成果を試す一種のテストだ」と、語っていた。

 低中速から高速コーナー、長い直線が巧みに配置されたCOTAは、マシンの総合力を評価するのに絶好のコースだからだ。しかし上述したように、スプリントと本予選ではいずれも、フェルスタッペンやノリスを上回る速さは発揮できなかった。高速での切り返しが連続するコース序盤の路面はなぜか今年再舗装されず、荒れたままだった。そこではマシンの跳ねを抑えきれず、タイムロスしてしまったのだ。

 しかしレースでは、その欠点を補って余りあるタイヤに優しい特性が、ライバルたちを圧倒した。

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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