ベアマンとコラピント、F1の歴史を変える驚異の新人か?

柴田久仁夫

開幕第2戦サウジに続いて、ベアマンは今回も我々を驚かせた 【©️HaasF1Team】

F1初記録を達成したベアマン

 フェラーリのシャルル・ルクレールとの激闘の末、マクラーレンのオスカー・ピアストリが勝利を挙げたアゼルバイジャンGP。このレースでは二人のルーキーも、記憶に残るパフォーマンスを披露した。

 その一人が、ハースのオリバー・ベアマンだ。レギュラードライバーのケビン・マグヌッセンがペナルティの累積で出場停止となり、今回のスポット参戦が決まった。予選直前のフリー走行ではウォールに接触して2周しか走れなかったが、予選本番は13番手だったチームメイトのニコ・ヒュルケンベルグをしのぐ12番手。マグヌッセンに対し今季13勝3敗と、予選一発に絶対的な自信を持つニコをいきなり上回る速さを見せた。

 さらにレースでは、10位入賞を果たした。ベアマンは同じ市街地コースの開幕第2戦サウジアラビアGPでフェラーリからF1デビューし、7位を射止めている。今回ハースでも入賞したことで、「デビュー戦と第2戦を異なるチームから出場し入賞する」というF1史上初の記録を達成した。

 そしてもう一人の新人、フランコ・コラピントの戦いぶりはさらに印象的だった。

 23年ぶりのアルゼンチン人F1ドライバーであるコラピントは、FIA F3やF2などの下位カテゴリーでは一度もタイトルを獲得したことがない、いわば無名の選手だ。それだけに9月初めのイタリアGPで、不振続きだったローガン・サージェントの代役としてウィリアムズからデビューした際も、注目度はそれほど大きくなかった。

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チーム代表が激賞したコラピント

コラピントの少年のような笑顔からは、あの老練なレースぶりは想像できない 【©️WilliamsF1Team】

 デビュー戦のイタリアも予選9番手のアレックス・アルボンに対し18番手。レースはしっかり追い上げて12位完走を果たしたものの、アルボンの9位と比べると物足りない感は否めなかった。とはいえ初体験のウィリアムズマシンを週末3日間ノーミスで運転し、着実にペースを上げていく様子は実に落ち着いていた。

 驚いたのは、いつも無口で決して出たがりではないジェームズ・ボウルズ代表が、チェッカー直後の無線に割り込んで、コラピントを激賞したことだ。

 「フランコ、素晴らしいレースだった。ミスもなく、アレックスのわずか数秒遅れでチェッカーを受けた。このまま行けば、今後十分に戦えるぞ。申し分のないデビュー戦だった」

 サージェントを泣く泣く切ったボウルズ代表にしてみれば、代役コラピントがまずは完走してくれたことに心底ホッとしたのだろう。

 しかし今回のアゼルバイジャンでは、初日最初のフリー走行でクラッシュを喫してしまう。初めてのサーキットでの、いきなりのアクシデント。ところが修理を終えて走った2回目のフリー走行では、アルボンからわずか0.012秒差につけて見せた。

 そして予選Q2では10番手アルボンを凌ぐ6番手でQ3に進出。デビュー2戦目にして、8番グリッドを獲得した。さらに決勝レースではピエール・ガスリーやヒュルケンベルグとバトルを繰り広げた末に、8位に入賞した。

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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