安西幸輝がかわした鬼木達監督との約束。「その言葉を口にした以上、1年間やってみないか?」。酒井高徳からも見つけた進化へのヒント。

鹿島アントラーズ
チーム・協会

【@KASHIMA ANTLERS】

「幸輝は今、どこを目指している?」

2025明治安田J1リーグ開幕2日前のこと。安西幸輝は鬼木達監督から個別に呼ばれてこう声をかけられた。安西は「日本代表に戻りたいです」と即答した。

「それだったら、日本代表に見合うプレーを期待しているし、こっちからの要求もどんどん高くなるから、それに合わせてほしい。もうその言葉を口にした以上、責任を持って1年間やってみないか」(鬼木監督)

安西の心に火が灯った。

「ちょっとやってみようかなと思っています。いつでも本気でやっているけど、より本気に。今まさに新たなチャレンジをしているところです」

テーマは“ガムシャラさ”と“脱力プレー”

東京ヴェルディのアカデミー出身の安西は、2014年にトップ昇格して1年目からスタメン出場を重ねた。2018年に鹿島アントラーズへ移籍。攻撃的なサイドバックとして、運動量豊富で積極果敢な上下動と攻撃参加をする“ガムシャラさ”を持ち味としてきた。

2019年夏にはポルトガルのポルティモネンセSCへ移籍。その後、鹿島アントラーズへ復帰してからはチームの軸となる。昨シーズンはポポヴィッチ監督のもと、本来の武器に加えてサイドバックからのビルドアップを担い、リーグ戦全試合に出場した。

「だいぶ力が抜けてプレーを出来ていますよね。それはすごく大事にしています。プレミアリーグとかを見ていても、相手を引きつけて、どうプレスをはがすとか、そこばかり見ていて。やっぱり日本人は良くも悪くも真面目だから、来たボールを素直にダイレクトで叩くとか、状況に応じたものではなく自動的に対応することが多い。それよりも状況に応じて、選手や人を引きつけてパスを出すとか、相手を止めるために正体するとか。それは昨年に覚えたことですね」

海外クラブの試合観戦を、安西は「お勉強」と言う。週2、3試合は落ち着いて家で観ることがここ数年で習慣となった。その勉強の成果が昨シーズンを通してピッチ上に現れた。

「勉強の成果ですね。だって、今までは両足を使えなかったから。基本的に右でボールを持って、どう作るかという感じだった。左足でさばいたりとかは、今までなかったプレー。今は両足を使うように意識しています」

2023シーズン、1ゴール5アシスト。
2024シーズン、1ゴール2アシスト。
昨シーズンは数字こそ減少したものの、アシストの質が変わった。

「(岩政)大樹さんが監督だった一昨年はクロスから多くアシストして、昨年は短いパスでゴールに関わることが多くなった。パス&コントロールはもともと自分でも得意にしていたけれど、やっぱり脱力したプレーができるようになったことで、もっともっと技術のところが研磨されたのかなと思っています」

確実に一段ずつ階段を上がってきた。そんななか、鬼木監督との話し合いで、安西はイメージしていた次なる進化への課題を言い当てられた。

「100%でやる姿を出していくことが必要ではないか」。

とにかくがむしゃらにスライディングで相手を止めたり、球際で戦い目に見える必死さを出していくこと。つまり、安西の昔の良さと今の良さを、どちらも出していけということだ。

「鬼さん(鬼木監督)から、『お前が今やっている、リラックスしながらサッカーをするのはこのままでいい。それに加えて100%でやるガムシャラさを融合させるのが一番いいと思っている』と言われたんです。言いたいことは俺、すごく分かるんですよ。そこはすごく腑に落ちた。俺がリラックスして、落ち着いてサッカーすることと、昔みたいにガムシャラにやるプレーとのバランス。これが難しいところだと思っているなか、鬼さんからそれを言ってきてくれて、ビックリしました。あ、この人は分かってるなあと思って。だからそれに今チャレンジしています」

【@KASHIMA ANTLERS】

酒井高徳との対峙が教えてくれた、「今の自分に足りないもの」。

“ガムシャラさ”を付け加えること。今年誓うテーマは昨年から安西の頭にあった。

「実は鬼さんに言われる前から考えていたんです。家でJリーグを見ているときに、パッと目に入ったのが(酒井)高徳さんだった。攻撃だったら負けてないと思いながら、見続けるともう俺に足りないもの全部があるんですよね。これはすごいなと思った。声で人を動かしたり、ボールを刈り取ったり、守備で圧をかけたり。あとはどんなときも走って全力でプレーする。その姿を見て、これが俺に足りない部分だなと感じていました」

ヴィッセル神戸と対戦すると、いつも対峙する先に酒井高徳選手の姿があった。味方に示す姿勢は、とにかく参考になった。

「一緒に試合をしていても、声で周りの選手を動かせる。『ここは絶対に俺が守れるから安心して行け!』と、前線の選手を高い位置に押し上げている。これはすごいなと。前線の選手からしたら心強いですよね。今でも目標にしているし、すごく参考にしています」

イメージしていた自らの足りない部分。それを鬼木監督に求められた。個人として、チームとして、求める進化は一致している。

「鬼さんはよく“魅了するサッカーをしよう”と言います。それは攻撃だけではなく、守備でも魅了しようと。そこはまさに俺に足りない部分で、練習でもよく鬼さんから指摘されるんです。守備のガツガツさだったり、100%でプレーする姿を見せろと。それに加えて攻撃でのリラックスしながらボールを持つプレーを合わせたら、すごい選手になれるんじゃないかな」

力を抜いたプレーと両足を使ったプレーは、安西に余裕と落ち着きを与えた。ただ、もう一つ攻撃面で足りないものがあるという。

「これにプラスしてゴールに絡まないと、いい選手とは言えない。ゴールにアシストと数字を残すこと。そこがすごく大事かなと思っています」

そこで、今年だ。

「これまでの内容と結果を見てもそうでしょう? やっぱり“ガムシャラさ”と“脱力したプレー”の2つを融合しないといけない。もっとゴール前に関わっていかないといけないし、もっとゴールに近いところで仕事をしないといけない。さらにそこで結果を残さないといけない。そう思ったんです」

ホーム開幕・古巣の東京V戦への決意。

鬼木新体制となってスタートした2025シーズン。「止めて蹴る」「魅了するサッカー」など、新たなワードが並ぶ。「これを続ければ成長できる」。選手は皆、口を揃える。安西も同様にポジティブな始まりを感じている。

「やっぱりJリーグ優勝監督だから、説得力がありますよね。俺にとってはもう、間違ったことを言っていても間違いじゃない、鬼さんが言っていることは全部正解なんじゃないかくらいに聞こえています。楽しくやらせてもらっていますよ」

いよいよ迎えるホーム開幕戦。2月22日(土)、カシマスタジアムで15時にキックオフする。安西にとって、古巣の東京ヴェルディが相手だ。

「やっぱりホーム開幕は違う。気合いが入ります。しばらくホーム開幕で勝てていない。昨シーズンはホーム無敗で終えることが出来て、改めて力を与えてもらえるスタジアムだなと感じました。選手たちのなかでも、負ける気がしないと話しています。そこは自信を持っていけるところ。ファン・サポーターの皆さんの力も加えて、しっかり勝利をつかみたいですね」

昨シーズンの屈辱も忘れていない。

「昨年はホームでヴェルディに3-0から3-3に追いつかれた。アウェイでも負けているし、本当に勝ちたい。ヴェルディは育ててもらったクラブ。だからこそ、礼儀として勝利という結果で返さないといけないと思っています。ただ、それは個人的な感情。鬼さんがアントラーズの監督になって初めてのホーム開幕なので、相手どうこうではなく、自分たちがどれだけ積み上げてきたものを出せるかどうかだと思っています。そこにフォーカスして戦っていきたい」

背番号2と鬼木監督との約束。その一つひとつをピッチ上で表現するつもりだ。

【@KASHIMA ANTLERS】

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著者プロフィール

1991年10月、地元5自治体43企業の出資を経て、茨城県鹿島町(現鹿嶋市)に鹿島アントラーズFCが誕生。鹿角を意味する「アントラーズ」というクラブ名は、地域を代表する鹿島神宮の神鹿にちなみ、茨城県の“いばら”をイメージしている。本拠地は茨城県立カシマサッカースタジアム。2000年に国内主要タイトル3冠、2007~2009年にJ1リーグ史上初の3連覇、2018年にAFCアジアチャンピオンズリーグ初優勝を果たすなど、これまでにJリーグクラブ最多となる主要タイトル20冠を獲得している。

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