今の町田は好調時と何が違うのか? 柏戦で改めて浮上した課題と展望

大島和人

町田は第34節・柏戦を1-1で終えた 【(C)FCMZ】

 FC町田ゼルビアが、10月19日の柏レイソル戦で連敗を止めた。63分にコーナーキック(CK)から柏の先制を許しつつ、後半アディショナルタイム(90+5分)に下田北斗のPKで追いつく際どい展開で勝ち点1をもぎ取った。

 J1は例年、終盤戦になるほど「下剋上」が増える。第34節も首位・サンフレッチェ広島、2位・ヴィッセル神戸がともに敗れた。この週末は3位・町田も含めて「5強」が1チームも勝てていない。ただ町田は第31節(9月21日/町田0△0北海道コンサドーレ札幌)から4戦にわたって勝利がなく、苦境が長引いている。

3連敗を辛うじて免れた柏戦

 どんなチームも後半開始から戦術的な「変化」をつけてくる。今季の町田も悪い流れをハーフタイムの修正で立て直した試合がいくつもあった。しかし19日の日立台では、後半開始早々から柏が完全な攻勢に立った。

 柏はサイドを攻略して53分、55分と立て続けにCKも獲得。町田は藤本一輝、ナ・サンホと交代選手の準備を急ぎ、戦況を変えようとしていた。だが、交代選手が入る直前にCKから柏の先制点が決まった。

 黒田剛監督は振り返る。

「CKを与える機会が多かったなというところで、守備面の対策・対応が必要になっていました。ちょっと嫌な予感がしたこともあり、あのCKの直前に(交代選手を)入れれば良かったんでしょうけど……。そこは結果論なので何とも言えないですけど、あそこは防がなければいけないCKだったことも含めて、あの後に猛攻を仕掛けるプランでもあったので痛ましい、もったいない失点だったと思います」

 町田は終盤に立て直した。左サイドの藤本が、やはり交代で入ったボランチの下田や左サイドバック(SB)杉岡大暉との連携からいい仕掛けをした。

 下田はこう分析する。

「(藤本)一輝が相手を引っ張れて、押し込んでいました。そこにスギ(杉岡)が絡んで、(下田が)3人目でスルスルといくと、そこまで相手がタイトに来ている感じはなかったです。良い場所を見つけられるように、意識をしていました」

 藤本のPK獲得は、杉岡のクロスを下田が1タッチで落とした流れで生まれた。VARの介入により確認に時間はかかったが、藤本は安心して待っていたという。

「(相手のタックルが)当たっていたので審判にも言いましたし、見てもらえば絶対にPKになると思っていました」

 下田が強いキックをゴール右に蹴り込み、町田は3連敗を何とか免れた。

「サイドの攻防」で後れを取る

柏は後半開始と同時にサイドからのチャンスメイクが増えた 【(C)J.LEAGUE】

 現場や中継で見た人ならば、3位と16位の差は感じなかっただろう。シュートの本数、ボールの保持率といった指標は完全に五分で、「球際」「セカンドボールの争奪」も甲乙のつけがたい内容だった。終盤は町田が押していたが、とはいえリードを奪っているチームが守りに入るのは当然だし、柏の危険なカウンターもあった。

 明確に言えるのは町田の強みと言い得たサイド攻撃が「効かなくなっている」傾向だ。町田はサイドから迅速に敵陣へ侵入する狙いが強い。そこからエリア内の厚みを作ってゴールを生み、同時にCKやロングスローを増やしてきた。しかし柏戦は13分の右SB望月ヘンリー海輝のミスを皮切りに、サイドの「縦縦」から逆に相手のカウンターを誘発する場面が多かった。

 キャプテンの昌子源は「ウチはここ最近、本当にカウンターをよく受けている」と述べた上で、後半の展開をこう振り返る。

「今日はCKを与える場面が多かったですね。そこからの失点だったし、僕も1本パスを(マテウス・)サヴィオ選手に取られてCKになりました。僕以外にもそういう細かいミスが多かったです」

 柏戦のデータを見たとき、はっきり差が出ていたのはCKの本数だ。柏の12本に対して、町田は5本にとどまった。このデータからも柏はサイド攻撃、サイドの攻防で上回っていたことが分かる。相手にCKを12本も与えれば、それは失点に直結して当然だ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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