JFA宮本会長がDAZN社長に語った男女日本サッカーの未来 アウェー戦“フリーミアム”の目的は?

元川悦子

対談を行ったJFA宮本会長(右)とDAZN笹本社長 【花田裕次郎】

 9月から始まった2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選。日本代表はご存じの通り、中国・バーレーンとの序盤2連戦を7-0、5-0と圧勝、さらにアウェーのサウジアラビア戦でも2-0と快勝するなど、ここまで3勝1分でグループC首位につけている。

 その戦いを映像を通して視聴する人も少なくない。現在は「ホームは地上波とDAZN、アウェーはDAZN」という環境になっているが、11月のインドネシア・中国とのアウェー2連戦で、ファンの多くの声を受けてDAZNが無料開放に向けた新たなチャレンジに打って出る。より多くの人々に無料で広く視聴してもらうことで、日本代表を盛り上げ、JリーグやWEリーグにも感心を持ってもらいたいと考えてのことだ。

 こうした試みを含め、日本サッカー協会(JFA)はDAZNとも連携を図り、新たなサッカー文化の創造に力を尽くしていく構えだ。そのビジョンと今後の方向性をJFA宮本恒靖会長とDAZN笹本裕社長が語り合った。

宮本会長「選手のスタンダードはカタールW杯より上」

――W杯最終予選が始まりましたが、序盤の戦いをどう受け止めていますか?

笹本 最初の2試合があまりにも強すぎたんじゃないかなっていう感想はありますね。Xにも「日本強すぎ」「バーレーン涙目」といったコメントが並んでいて、今の日本代表が最強だと言われています。宮本会長から見るといかがでしたか?

宮本 初戦の中国戦の立ち上がりは若干、硬さがあったと思います。でも、1点目が入ってからは相手が狙っていたカウンターのチャンスも与えず、本当にプラン通りに試合を進めて、追加点を重ねる形でした。正直、あんなに点が入るとは思っていなかったです(笑)。

 2戦目も現地にいましたけど、会場はバーレーンが勝つようにいろんなことを仕掛けてくる雰囲気がありました。地元の人たちも勝利を想定していたところがあったんですよね。ところが、蓋を開けてみると、日本の試合運びが巧みで、途中から相手選手も戦意喪失するような姿が見受けられました。
 今の日本はポジション争いが熾烈で、途中から出た選手も「得点という結果を残してアピールしよう」という意識が非常に高かった。その効果もあって、最後の最後までリズムが途切れず、いい流れのまま終わりましたね。

笹本 今は選手層が厚くなっていますからね。

宮本 そうですね。9月も10月も27人を呼んで4人がベンチ外になる。競争の激しさは凄まじいと思います。選手のスタンダードは2022年カタールW杯に比べても上がっていると感じますね。

笹本 我々としては、そういう中にもストーリーも伝えていきたいですね。強すぎるように見えても、背景には選手たちの葛藤もあるでしょうし、ドラマ性を伝えていければ、より多くの人の心に響くと思います。

「#代表みようぜ」 コメントを通して100万回のパスを目指す!

バーレーン、サウジとアウェーの戦いも白星を積み上げている日本代表 【写真:ロイター/アフロ】

――今の日本代表は「史上最強」という呼び声も高いです。

笹本 以前から宮本会長からはもっと広く日本代表戦を見ていただきたいというお話もいただいてましたし、実際に我々もサポーターの方々から、もっとDAZNを多くの人に見れるようにして欲しいという声もいただいてましたので、我々は11月のアウェー2連戦で「#代表みようぜ」というキャンペーンを企画して、フリーミアム(無料開放)にトライします。その中で、ファン・サポーターにコメントを通してサッカーらしくこのハッシュタグを100万回のパスをしていただくことを目指します。

宮本 100万回のパスですか? ちょっと想像するのが難しいですね(笑)。でも、サッカーファミリーの数からすると、到達できない数ではないと思います。

笹本 やはり参加していただくことが重要かなと思っていて、人と人とをつなぐ形が重要なんですよね。ぜひ、色々なパスを出していただければと思っています。

宮本 11月はアウェー2連戦ですし、ホームよりアウェーの方が厳しいのは間違いない。
インドネシアは10万人集まる会場で試合をしますし、中国も9月のサウジアラビア戦の時には多くのファンでスタンドが赤く染まっていました。現地の応援が画面を通じて入ってくると「ああ、最終予選だな」という実感を持って試合を見ることができるんじゃないかなと思います。ぜひ多くの人に声を届けてほしいですね。

笹本 我々DAZNとしても、もちろん試合をライブで見ていただくことがメインではありますが、もう少しサッカーとの触れ合い方を創意工夫したいと思っています。「FANZONE」を活用して、ファンの方々がコメントできたり、解説陣に登場してもらったりとインタラクティブ性を高めた試合の見方を演出するので、楽しんでいただければなと思っています。

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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