町田に立ちはだかる新国立のJ1優勝ジンクス 2度PKで地獄を見た男が挑む東京決戦

大島和人

今シーズンからFC町田ゼルビアに加入した仙頭啓矢 【(c) FCMZ】

 FC町田ゼルビアは、2024年の明治安田J1リーグにおける「台風の目」だ。J2から昇格したばかり、J1初シーズンの新参者ながらJ1の首位争いを続けてきた。

 そんなチームも、シーズンを振り返れば様々な試練に直面してきた。6月12日の天皇杯2回戦は筑波大に先制するも後半終了間際に追いつかれ、最後はPK戦で屈した。ルヴァンカップは準々決勝まで勝ち進んだが、アルビレックス新潟に届かなかった。9月28日の首位攻防戦はサンフレッチェ広島に0-2、10月5日の川崎フロンターレ戦は1-4と敗れている。

 もっとも町田には敗戦、試練を糧にする「しぶとさ」「成長力」がある。優勝、AFCチャンピオンズリーグ出場に向けた勝負の山場も、まさにこれからだ。

優勝を争う広島戦でスタメン出場するも、チームは0-2で敗れてしまう 【(c) FCMZ】

 町田にとって終盤戦の大一番の一つが11月9日の新国立決戦だ。「新国立で勝つこと」は、J1王者となるための必要条件と言っていい。実際に2022年のJ1を制した横浜F・マリノスは同シーズンの第19節(7月2日)に新国立で清水エスパルス戦と5-3で勝利している。2023年の王者ヴィッセル神戸も、同年に新国立で開催したリーグ戦の2試合を1勝1分けで乗り切った。

「4万5万の大観衆で埋まった会場で勝ち切れるチーム」こそが、J1王者にふさわしいのだろう。町田はまず、その資格をクリアしたい。

 町田は過去2シーズンで通算4試合のリーグ戦を新国立で開催している。通算戦績は「2分2敗」と未勝利だ。11月9日の対戦相手・FC東京は新国立で「無敗」という好相性に対比すると、サポーターにとってはなおさら嬉しくないデータだろう。

 逆の見方をするなら、新国立未勝利という高い壁を越えることは、クラブの歴史を変える――そしてJ1逆転制覇、ACL出場へ大きな弾みをつける成果になるはずだ。

新国立での横浜F・マリノス戦でもピッチに立った仙頭啓矢 【(c) FCMZ】

 クラブとは別に、国立競技場と深い「縁」のある選手が町田にはいる。それはMF仙頭啓矢。今季から町田に加入し、チームの躍進に大きく貢献している29歳のボランチだ。

 彼は町田加入前に「国立経験」が3試合あった。最初の2試合は旧国立で、2012年度の第91回高校サッカー選手権準決勝と決勝だ。同大会の得点王にも輝いた仙頭は、準決勝と決勝の両ゲームでゴールも決めている。しかし彼の胸に刻み込まれているのは、栄光でなく屈辱の記憶だ。

 鵬翔との決勝戦は2−2で決着つかず、PK戦までもつれ込んだ。京都橘の1人目を任された仙頭はPKを失敗している。

「それまでPKは苦手ではなかったし、あのときも別に緊張していたわけではなかったんですけど……。ちょっとPKがトラウマにはなりましたね」

 3試合目は2023年12月9日の天皇杯決勝だ。柏レイソルでプレーしていた仙頭は、川崎フロンターレとの大一番に後半途中から起用された。PK戦は4人目を任されたが、ポストにはじかれ失敗している。

1/3ページ

著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント