スキッベ・サンフレッチェの集大成 「新スタ元年」に優勝へ邁進するサンフレッチェ広島の強さとは

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 2015年以来、9年ぶりとなるリーグタイトル獲得へ、現在首位を走るのがサンフレッチェ広島だ。ミヒャエル・スキッベ体制3季目を迎え、チームは成熟の時を迎えている。今季の広島は何が違うのか? キーワードは「過去2年のチーム作り」、「弱みを強みに変えた攻撃陣」「選手のポリバレント化」という“三本の矢”だ。

攻撃と守備をじっくり整え、花開いた3年目

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 ドイツ国籍の指揮官が就任した2022年からの3年間を比較すると(今季33試合消化時点、他はシーズン終了時点)、黒星の数が半分以下に減り、1試合少ないながら勝点はすでに過去2年を越えた(勝点 2022年:55、2023年:58、2024年:65)。1試合平均得点は2022年の1.53、2023年の1.24に対し、今季は1.97と、大きく跳ね上がっている。複数得点を奪った試合数は2022年15試合、2023年12試合に対して今季は19試合にまで上る。無得点試合は2022年8試合、2023年10試合に対して今季は第4節神戸戦の1試合のみ。リーグ3位の得点を挙げた1年目、リーグ2位の失点に抑えた2年目を経て今季は「安定感」と「爆発力」を武器にリーグの一番上へ登り詰めている。

2022年からサンフレッチェ広島の指揮を執っているミヒャエル・スキッベ監督 【Photo by Masashi Hara/Getty Images】

 エディオンピースウイング広島が竣工し、気持ち新たに臨んだ今季。ここまでの成績を見ると、調子の波としては引き分けが多いものの11試合負けなしで進めていた開幕~第11節、連敗を含む4つの黒星を喫した第12節~第22節、7連勝の快進撃で再び無敗記録を「11」に伸ばしている第23節~現在の3つに分けられる。

 停滞が続いた「第2期」は4敗すべてで3失点を喫したが、ケガで離脱していた荒木隼人の復帰で守備陣はそれ以降4試合の無失点を含む6試合連続1失点以下に抑えるなど安定し、対する攻撃陣は川村拓夢や大橋祐紀がチームを離れた一方、トルガイ・アルスラン、ゴンサロ・パシエンシアといった経験豊富な外国籍アタッカーの加入で威力を維持。中盤には欧州で経験を積んだ川辺駿も復帰した。第31節の横浜F・マリノス戦を6-2で大勝してFC町田ゼルビアから首位の座を奪い、翌節の町田戦でも勝利を収めて現在は3連勝中と勢いに乗っている。

「弱み」を「強み」へ変えて見せたリーグ最強の攻撃陣

今季の広島をプレーデータから深掘りしていくと、見えてきたのは「強みではなかった部分の改善」である。 【画像提供:データスタジアム株式会社】

 まずは前半の戦い方。昨季は前半に挙げた得点が10点で、これはリーグ最少の数字だった。それが今季は28点と、3倍近くに伸ばした。リーグ全体で見てもトップの数で、先制に成功した試合数も23で1位の数字となっている。「スロースターター」が故に落としていた勝点を、今季は拾えているということだろう。

 さらに、先制してから突き放せているのも今季の特徴の1つ。前半得点の差の影響もあるが、先制後に2-0とした割合が昨季は25.0%(先制16試合のうち4試合)であるに対し、今季は52.2%(先制23試合のうち12試合)と、倍以上になった。勢いのままにリードを作り、試合を優位に進めていることがわかる。また、2点目を奪った時間帯に注目すると、後半の立ち上がりから15分までの間で奪ったケースが5試合(1位)あり、ハーフタイムでの指示なども的確に機能していたことが推測される。

エディオンピースウイング広島の雰囲気は、サンフレッチェのイレブンに目に見えぬ力を与えている 【Photo by Masashi Hara/Getty Images】

 得点パターンの増加も進化の一端として挙げられる。CKからの得点は、昨季ワーストタイの1点のみだったが、今季は10点で2位となった。また、ペナルティエリア外からの得点は、昨季の2点(16位)に対して今季は新井直人の2点などを中心に11点(1位)にまで積み上げた。

 そして、ボールを「持たされる」展開でも今季の広島は全く動じない。スキッベ監督のベースは堅守速攻のカウンターサッカーで、今季もショートカウンター、ロングカウンターともに1位の回数を記録している。その中で、30秒以上ボールを保持した攻撃での得点が昨季はわずか1点しか挙げられなかったのに対し、今季は6点を記録。昨季ワーストだった数字をリーグ中位(12位タイ)まで押し上げており、相手が引いた状況など攻撃に時間が掛かった状況からもネットを揺らす確率を上げている。

 これまでに炙り出されてきたウイークポイントを克服し、「どこからでも、どんな状況でも」点を取れるチームになったことが、ここまでリーグトップとなる65得点を叩き出す原動力となっている。

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日本で唯一のスポーツデータ専門会社。 野球、サッカー、ラグビー等の試合データ分析・配信、ソフト開発などを手掛ける。

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