24年J1・J2「補強・戦力」を徹底分析!

豪華補強の浦和、それに続くFC東京、町田も奮闘…J1リーグ全20クラブの補強診断【前編】

YOJI-GEN

浦和は渡邊凌磨(写真)や前田直輝に加え、スウェーデン代表のグスタフソンやノルウェー代表のソルバッケンも獲得し、大型補強を敢行。06年以来のリーグ制覇を狙う 【YOJI-GEN】

 シーズン開幕直前の風物詩であるFUJIFILM SUPER CUPが2月17日に行われ、天皇杯覇者の川崎フロンターレがJ1王者のヴィッセル神戸に1-0と勝利。いよいよ23日の開幕を待つばかりだ。そこでJ1全チームのストーブリーグを総括する。前編では北海道コンサドーレ札幌から湘南ベルマーレまで、北から10チームの補強を読み解く。

※情報は2月20日時点
※【IN】のチームのカテゴリーは23年シーズンのもの
※【IN】【OUT】は戦力の+・−が分かるように、契約上の移動ではなく“体の移動“を記載
※戦力ランキングはJ1戦力ランキングのコラムとリンクしています

ヨーロッパの現役代表をふたりも獲得

■チーム①■
〈北海道コンサドーレ札幌〉
補強診断:D
/戦力ランキング:76点(10位)
昨シーズン:12位
監督:ミハイロ・ペトロヴィッチ(7年目)

【IN】
FW 鈴木武蔵 ←G大阪(J1)
FW 出間思努 ←札幌U-18(昇格)
MF 近藤友喜 ←横浜FC(J1)
MF 長谷川竜也 ←東京V(J2)
MF 田中宏武 ←藤枝(J2)
MF 田中克幸 ←明治大(新人)
MF 原康介 ←名古屋高(新人)
DF 髙尾瑠 ←G大阪(J1)
DF 家泉怜依 ←いわき(J2)
DF 岡田大和 ←福岡大(新人)
GK 中野小次郎 ←金沢(J2)
GK 阿波加俊太 ←鈴鹿(JFL)

【OUT】
FW 小柏剛 →FC東京(J1)
FW ミラン・トゥチッチ →未定
MF ルーカス・フェルナンデス →C大阪(J1)
MF 小野伸二 →引退
DF 田中駿汰 →C大阪(J1)
DF 福森晃斗 →横浜FC(J1)
GK 松原修平 →水戸(J2)
GK 大谷幸輝 →北九州(J3)

 ミハイロ・ペトロヴィッチ監督就任から6年が経ち、指揮官の戦術が浸透する一方で、マンネリ化も見え隠れする。初年度の2018年シーズンこそ4位だったが、それ以降は10位と12位を繰り返しており、起爆剤となれるタレントが欲しかった。その点で、前回在籍時に13ゴールを記録した鈴木武蔵の4年ぶりの復帰は大きい。
 ブレイクの予感漂うのは、横浜FCから加入した22歳の近藤友喜だ。昨夏の金子拓郎、今オフのルーカス・フェルナンデスと、右サイドアタッカーを立て続けに放出したが、このパリ五輪世代の快速ウインガーが新たな風を吹かせてくれるに違いない。G大阪から獲得した高尾瑠は右ウイングバックと3バックの右をこなすユーティリティで、長いシーズンを戦う上で貴重な戦力となるだろう。
 ただ、ルーカス・フェルナンデス、田中駿汰、小柏剛、福森晃斗と、チームの主軸を担ってきた選手が一気に抜け、戦力ダウンの印象はどうしても拭えない。藤枝から復帰する田中宏武やいわきから加入する家泉怜依あたりが頭角を現してくると面白いのだが。
■チーム②■
〈鹿島アントラーズ〉
補強診断:D
/戦力ランキング:77点(8位)
昨シーズン:5位
監督:ランコ・ポポヴィッチ(新任)

【IN】
FW ギリェルメ・パレジ ←ヴィラ・ノヴァ(ブラジル)
FW アレクサンダル・チャヴリッチ ←スロヴァン・ブラチスラヴァ(スロバキア)
DF 濃野公人 ←関西学院大(新人)
GK 梶川裕嗣 ←磐田(J2)
GK 山田大樹 ←岡山(J2)

【OUT】
FW エレケ →未定
MF ディエゴ・ピトゥカ →サントス(ブラジル)
MF アルトゥール・カイキ →スポルチ・レシフェへ(ブラジル)
MF 荒木遼太郎 →FC東京(J1)
MF 小川優介 →琉球(J3)
DF 昌子源 →町田(J2)
DF 広瀬陸斗 →神戸(J1)
GK 沖悠哉 →清水(J2)
GK クォン・スンテ →引退

 新加入5人に対して、退団選手9人と補強の収支は大きなマイナスだが、昨季の開幕時の登録選手は34人と大所帯だったため、今季は27人(2種登録を除く)とシーズンを戦い抜くのにちょうどいい人数になったとも言える。
 指揮官たっての希望で獲得したストライカーのアレクサンダル・チャヴリッチが早くもチームにフィットしており、柔らかなポストプレーから多くのチャンスを生み出しそう。関西学院大から加入した濃野公人は右サイドバックのレギュラーの座を射止める勢いだ。
 だが、ディエゴ・ピトゥカが去った穴は埋め切れていない。また、契約寸前だったセンターバックのヨシプ・チャルシッチがメディカルチェックを経てご破算となったのは不運だが、代わりとなるセンターバックの補強がない点も疑問が残る。タイトル奪還を至上命令とし、昨季5位に導いた岩政大樹前監督を代えてまでランコ・ポポヴィッチ新監督を招聘したが、“常勝軍団”復活への強い気概は感じにくいストーブリーグとなった。
■チーム③■
〈浦和レッズ〉
補強診断:A
/戦力ランキング:86点(2位)
昨シーズン:4位
監督:ペア・マティアス・ヘグモ(新任)

【IN】
FW 前田直輝 ←名古屋(J1)
FW チアゴ・サンタナ ←清水(J2)
MF サミュエル・グスタフソン ←ヘッケン(スウェーデン)
MF オラ・ソルバッケン ←オリンピアコス(ギリシャ)
MF 松尾佑介 ←ウェステルロー(ベルギー)
MF 渡邊凌磨 ←FC東京(J1)
MF 武田英寿 ←水戸(J2)
MF 宇賀神友弥 ←岐阜(J3)
DF 石原広教 ←湘南(J1)
DF 井上黎生人 ←京都(J1)
DF 佐藤瑶大 ←G大阪(J1)

【OUT】
FW アレックス・シャルク →ADO(オランダ)
FW ホセ・カンテ →引退
MF 柴戸海 →町田(J2)
MF 平野佑一 →C大阪(J1)
DF 明本考浩 →ルーヴェン(ベルギー)
DF 荻原拓也 →ディナモ・ザグレブ(クロアチア)
DF 宮本優太 →京都(J1)
DF 岩波拓也 →神戸(J1)
DF 知念哲矢 →仙台(J2)
DF 馬渡和彰 →松本(J3)

 今冬のストーブリーグの覇者と言っていいだろう。ノルウェー代表のオレ・ソルバッケンとスウェーデン代表のサミュエル・グスタフソンと、現役代表選手の獲得に加え、元J1得点王のチアゴ・サンタナを迎え入れることにも成功。日本人選手においてもFC東京から渡邊凌磨、名古屋から前田直輝を獲得し、ベルギーのウェステルローに期限付き移籍中だった松尾佑介まで呼び戻す徹底ぶり。
 レギュラークラスの放出はホセ・カンテ、明本考浩、荻原拓也くらい。カンテの穴はチアゴ・サンタナが埋めてくれそうだ。左サイドバックふたりの同時放出は気がかりだったが、渡邊をコンバートすることで懸念を解消。他クラブが羨む陣容が完成した。
 最大の焦点は、この充実した戦力をどう使いこなすか。浦和は今季、天皇杯に出場できないため、参加するコンペティションはリーグ戦とルヴァンカップのふたつだけ。ルヴァンカップは今季からグループステージが廃止されるため、これまでのようにサブ組のアピールの場にすることは容易ではない。メンバーを固定し過ぎることから生まれる不協和音――それこそが、今季の浦和の最大の敵になるかもしれない。
■チーム④■
〈柏レイソル〉
補強診断:E
/戦力ランキング:69点(18位)
昨シーズン:17位
監督:井原正巳(2年目)

【IN】
FW 木下康介 ←京都(J1)
FW 升掛友護 ←愛媛(J3)
MF 鵜木郁哉 ←水戸(J2)
MF 白井永地 ←徳島(J2)
MF 島村拓弥 ←熊本(J2)
MF 熊坂光希 ←東京国際大(新人)
DF 野田裕喜 ←山形(J2)
DF 関根大輝 ←拓殖大(新人)

【OUT】
FW ドウグラス →引退
MF 仙頭啓矢 →町田(J2)
MF 椎橋慧也 →名古屋(J1)
MF 山田康太 →G大阪(J1)
MF 落合陸 →水戸(J2)
MF 加藤匠人 →福島(J3)
MF 三原雅俊 →未定
DF 田中隼人 →長崎(J2)
DF 岩下航 →熊本(J2)

 G大阪に移籍した山田康太に代わるアタッカーとして、京都から木下康介を獲得。山田とはタイプが異なるが、ハードワークを厭わないタイプで、エースの細谷真大の負担を軽減してくれる存在だ。サイドアタッカーには、水戸で2シーズン武者修行を積んだ鵜木郁哉と、愛媛に半年間期限付き移籍をした升掛友護が復帰。さらには熊本で7アシストをマークしたドリブラーの島村拓弥も加わった。
 ボランチにはクラブのアカデミー出身で、水戸、岡山、徳島で主力として活躍してきた白井永地を獲得。名古屋へと旅立った椎橋慧也に代わる存在として期待される。山形から加わるセンターバックの野田裕喜はJ2で3年連続30試合以上に出場し、リーダーシップも兼ね備えている。
 ただし、不安材料も少なくない。ウイークポイントを補強してはいるものの、島村、白井、野田はJ1での出場経験がなく、木下もJ1での実績に乏しい。昨季17位に沈んだ柏に必要だったのは、大幅な戦力アップを実現するレギュラークラスの選手たち。おそらくそれは強化部も理解しているはずで、移籍マーケットでの苦戦が窺える。
■チーム⑤■
〈FC東京〉
補強診断:A
/戦力ランキング:73点(11位)
昨シーズン:11位
監督:ピーター・クラモフスキー(2年目)

【IN】
FW 小柏剛 ←札幌(J1)
FW 野澤零温 ←松本(J3)
MF 遠藤渓太 ←ブラウンシュヴァイク(ドイツ)
MF 荒木遼太郎 ←鹿島(J1)
MF 高宇洋 ←新潟(J1)
MF 安田虎士朗 ←栃木(J2)
MF 品田愛斗 ←甲府(J2)
MF 安斎颯馬 ←早稲田大(新人)
DF ペク・インファン ←チョナンジェイル高(韓国)
DF 東廉太 ←相模原(J3)
DF 岡哲平 ←明治大(新人)
GK 波多野豪 ←長崎(J2)
GK 小林将天 ←FC東京U-18(新人)

【OUT】
FW ペロッチ →シャペコエンセ(ブラジル)
FW 熊田直紀 →ヘンク(ベルギー)
MF 渡邊凌磨 →浦和(J1)
MF 塚川孝輝 →京都(J1)
MF アダイウトン →甲府(J2)
MF 青木拓矢 →未定
DF 木村誠二 →鳥栖(J1)
GK ヤクブ・スウォビィク →コンヤスポル(トルコ)

 攻撃陣をリードしていたアダイウトンと渡邊凌磨が退団したが、補って余りある補強を敢行した。複数のクラブとの争奪戦を制して札幌からスピードスターの小柏剛を獲得すると、トップ下候補として鹿島で10番を担った荒木遼太郎も迎え入れた。昨季は出場機会を大きく減らしたものの、ザーゴ監督や相馬直樹監督には重用された21歳は、環境を変えることで輝きを取り戻す可能性が少なくない。
 アダイウトンに代わるウイングとして白羽の矢を立てたのは、20年夏から3年半ドイツでプレーした遠藤渓太だ。チームには仲川輝人が在籍しており、遠藤の加入によって19年にリーグ優勝を果たした横浜FMの両翼がFC東京で再結成されることになった。また、ボランチには新潟でゲームキャプテンとしてチームの躍進を支えた高宇洋も加わる。
 こうした実力者たちに加え、品田愛斗や野澤零温など武者修行させていたアカデミー出身の有望株を次々と帰還させ、チーム内競争は熾烈を極める。あとは、この潤沢な素材をピーター・クラモフスキー監督がどう“料理”するか。東京V、町田がJ1に昇格した今季、在京のチームとして意地を見せたい。

1/2ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント