豪華補強の浦和、それに続くFC東京、町田も奮闘…J1リーグ全20クラブの補強診断【前編】
大幅な入れ替えが吉と出るか凶と出るか
サンパウロから川崎Fにやってきたエリソン。元ブラジル代表のフッキやアドリアーノを彷彿とさせるストライカーが川崎Fの新たな前線の顔となる 【Photo by Masashi Hara/Getty Images】
〈東京ヴェルディ〉
補強診断:B/戦力ランキング:68点(20位)
昨シーズン:J2・3位
監督:城福浩(3年目)
【IN】
FW 山見大登 ←G大阪(J1)
FW 木村勇大 ←金沢(J2)
FW 古川真人 ←国士舘大(新人)
FW 白井亮丞 ←東京Vユース(新人)
MF 山田楓喜 ←京都(J1)
MF 永井颯太 ←いわき(J2)
MF 見木友哉 ←千葉(J2)
MF 翁長聖 ←町田(J2)
MF 松橋優安 ←山口(J2)
MF 食野壮磨 ←京都産業大(新人)
MF 山本丈偉 ←東京Vユース(新人)
DF 河村匠 ←いわき(J2)
DF 袴田裕太郎 ←大宮(J2)
DF 山田裕翔 ←国士舘大(新人)
GK 中村圭佑 ←静岡学園高(新人)
【OUT】
FW 佐川洸介 →群馬(J2)
MF 長谷川竜也 →札幌(J1)
MF 北島祐二 →福岡(J1)
MF 中原輝 →鳥栖(J1)
MF 甲田英將 →水戸(J2)
MF 梶川諒太 →藤枝(J2)
MF 西谷亮 →岐阜(J3)
MF 楠大樹 →宮崎(J3)
MF 小池純輝 →新宿(JFL)
DF プラタマ・アルハン →水原FC(韓国)
DF 加藤蓮 →横浜FM(J1)
DF 奈良輪雄太 →引退
GK 飯田雅浩 →八戸(J3)
このチーム、このメンバーでJ1を戦いたい――。そんな思いが選手の間で強かったのだろう。東京Vと言えば例年、主力選手の流出が目立つが、今オフは最小限にとどまった。レギュラークラスの退団は期限付き移籍での加入だった北島祐二と中原輝くらい。鹿島から期限付き移籍中の染野唯月の契約延長にもこぎつけ、昨季のベースを維持することに成功した。
ベースの上積みも成されている。予算規模は少なく、J1昇格プレーオフを制しての昇格だったために出遅れ、ストーブリーグでの苦戦は必至と見られたが、いち早くアプローチした千葉の10番・見木友哉の獲得に成功。昇格のライバルだった町田から左サイドバックの翁長聖も引き抜くと、山田楓喜や木村勇大らパリ五輪世代の有望株も獲得。北島に代わる左ウインガーとしてはG大阪から山見大登を期限付き移籍で迎え入れた。
「何人かの選手の獲得をやめれば外国籍選手も獲れたが、そうではなく競争を勝ち抜いた選手がピッチに出ていく状態を作りたかった」(江尻篤彦強化部長)という方針のもと、持たざるクラブだからこそ知恵と工夫を生かし、移籍マーケットでの立ち回りのうまさが光った。
〈FC町田ゼルビア〉
補強診断:B/戦力ランキング:73点(11位)
昨シーズン:J2・優勝
監督:黒田剛(2年目)
【IN】
FW ナ・サンホ ←FCソウル(韓国)
FW オ・セフン ←清水(J2)
FW 藤本一輝 ←大分(J2)
FW 芦部晃生 ←関東学院大(新人)
MF 柴戸海 ←浦和(J1)
MF 仙頭啓矢 ←柏(J1)
MF 黒川淳史 ←大宮(J2)
MF 樋口堅 ←沖縄SV(JFL)
MF 高崎天史郎 ←QUON FD(新人)
DF イブラヒム・ドレシェヴィッチ ←ファティ・カラギュムリュク(トルコ)
DF 昌子源 ←鹿島(J1)
DF 林幸多郎 ←横浜FC(J1)
DF 奈良坂巧 ←讃岐(J3)
DF 青木義孝 ←青森(JFL)
DF 望月ヘンリー海輝 ←国士舘大(新人)
GK 谷晃生 ←FCVデンデルEH(ベルギー)
GK 山口瑠伊 ←水戸(J2)
【OUT】
FW アデミウソン →未定
MF 翁長聖 →東京V(J2)
MF 松井蓮之 →川崎F(J1)
MF 布施谷翔 →富山(J3)
DF 藤原優大 →大分(J2)
DF 内田瑞己 →讃岐(J3)
DF 太田宏介 →引退
GK ポープ・ウィリアム →横浜FM(J1)
GK ストイシッチ →未定
これまでJ1初昇格チームは苦しいシーズンを送る傾向があったが、サイバーエージェントのグループの一員ともあって、町田はひと味違いそうだ。20億円強とも言われるトップチーム人件費は、J1リーグの中位レベル。潤沢な資金を使って積極的な補強を敢行した。
前線には元韓国代表でJリーグ経験者のナ・サンホと、清水で2シーズンを過ごしたオジェフンを獲得。藤尾翔太、ミッチェル・デューク、エリキとのハイレベルなポジション争いは見ものだろう。ボランチには金明輝ヘッドコーチが鳥栖の監督を務めていた頃の教え子である仙頭啓矢を迎え入れ、センターバックには元日本代表の昌子源、コソボ代表のイブラヒム・ドレシェヴィッチを獲得した。前者はリーダーの役割も期待でき、後者は空中戦に強さにくわえ、攻撃の起点となる縦パスを刺せる現代的なDFと評判だ。
GKポープ・ウィリアムは横浜FMに新天地を求めたが、J2屈指のGKとも評価された水戸の山口瑠伊を獲得したのに飽き足らず、東京五輪で正GKを務めた谷晃生までベルギーから加える徹底ぶり。柴戸海などチームスタイルに合いそうなハードワーカーの獲得にも余念なく、J1残留のみならず、中位に食い込んでも驚きはない。
〈川崎フロンターレ〉
補強診断:B/戦力ランキング:83点(5位)
昨シーズン:8位
監督:鬼木達(8年目)
【IN】
FW エリソン ←サンパウロ(ブラジル)
FW 宮城天 ←山形(J2)
FW 神田奏真 ←静岡学園高(新人)
MF パトリッキ・ヴェロン ←バイーア(ブラジル)
MF ゼ・ヒカルド ←ゴイアス(ブラジル)
MF 山本悠樹 ←G大阪(J1)
MF 松井蓮之 ←町田(J2)
MF 山内日向汰 ←桐蔭横浜大(新人)
MF 由井航太 ←川崎FU-18(新人)
DF ファン・ウェルメスケルケン際 NEC(オランダ)
DF 丸山祐市 ←名古屋(J1)
DF 三浦颯太 ←甲府(J2)
【OUT】
FW 宮代大聖 →神戸(J1)
FW レアンドロ・ダミアン →未定
MF ジョアン・シミッチ →サントス(ブラジル)
MF 山村和也 →横浜FM(J1)
MF 名願斗哉 →仙台(J2)
MF 大関友翔 →福島(J3)
DF 山根視来 →LAギャラクシー(USA)
DF 登里享平 →C大阪(J1)
DF 松長根悠仁 →福島(J3)
ACLで川崎Fデビューを果たしたFWエリソンが早くも存在感を放っている。個人で相手ゴールをこじ開ける力強さがありながらスピードも備え、フィニッシュワークも申し分なく、 長らく得点源として活躍したレアンドロ・ダミアン退団の不安を払拭してくれるそうだ。
G大阪から獲得した山本悠樹は大学時代に「中村憲剛2世」と称されており、川崎Fの中盤に馴染むのにもさほど時間を要さないだろう。山本の加入によって脇坂泰斗にかかる負担も軽減するに違いない。町田、山形で経験を積んだ松井蓮之、宮城天の台頭にも期待したいところだ。
もっとも、攻撃陣が充実する一方で、後ろの人材はやや心許ない。山村和也に代わるセンターバックとして期待される丸山祐市は、実績十分とはいえ近年は故障が増えている。甲府から加入する三浦颯太は元日のタイ戦で日本代表に初選出された実力者だが、J1は初挑戦。ファン・ウェルメスケルケン際はJリーグ自体が初挑戦となる。こうした新加入選手をサポートしてきた登里享平、山根視来が退団し、精神的支柱を今後誰が担っていくのかは気がかりだ。
〈横浜F・マリノス〉
補強診断:D/戦力ランキング:84点(4位)
昨シーズン:2位
監督:ハリー・キューウェル(新任)
【IN】
MF 天野純 ←全北現代(韓国)
MF 山村和也 ←川崎F(J1)
MF 植田啓太 ←栃木(J2)
DF 渡邊泰基 ←新潟(J1)
DF 加藤蓮 ←東京V(J2)
DF 吉田真那斗 ←鹿屋体育大(新人)
GK ポープ・ウィリアム ←町田(J2)
GK 寺門陸 ←山口(J2)
【OUT】
FW 西村拓真 →セルヴェット(スイス)
FW 杉本健勇 →大宮(J2)
DF 角田涼太朗 →コルトレイク(ベルギー)
GK 一森純 →G大阪(J1)
GK オビ・パウエル・オビンナ →神戸(J1)
開幕まで2週間、ACL再開が4日後に迫った2月10日に西村拓真のスイスリーグ移籍が発表された。2月に入ってからの主力選手の退団は、22年のチアゴ・マルチンス、昨季の高丘陽平と3年連続。過去2年はエドゥアルド、飯倉大樹を獲得してリカバーしたが、今回は現時点で動きがない。水面下で動いているのか、現状の陣容で十分戦えるとの判断か。
西村の退団で俄然、重要な戦力となるのが、3年ぶりの復帰となる天野純だ。セカンドトップ型の西村とはタイプが異なるが、今季は4-3-3が採用される見込みで、インサイドハーフとして打ってつけの選手だろう。
インサイドハーフには2年目となるナム・テヒも控えるため、懸念すべきは西村の抜けた攻撃陣より、センターバックの角田涼太朗とGKの一森純が退団した守備陣と言える。新潟から左利きの渡邊泰基を獲得したが、もともとサイドバックの選手で昨季センターバックにコンバートされたばかり。現状ではエドゥアルドのバックアップという立ち位置だろうか。GKに関してもポープ・ウィリアムと寺門陸を迎え入れたが、J1でどれだけやれるか未知数だ。ハリー・キューエル新監督も監督初挑戦とあって不安要素は少なくないが、外国籍選手がすぐフィットしてきた実績があるため、夏に緊急補強もあるかもしれない。
〈湘南ベルマーレ〉
補強診断:E/戦力ランキング:69点(18位)
昨シーズン:15位
監督:山口智(4年目)
【IN】
FW ルキアン ←福岡(J1)
FW 根本凌 ←栃木(J2)
FW 石井久継 ←湘南U-18(新人)
MF 鈴木雄斗 ←磐田(J2)
DF 髙橋直也 ←関西大(新人)
GK 真田幸太 ←三重(JFL)
【OUT】
FW 大橋祐紀 →広島(J1)
FW 若月大和 →山口(J2)
FW タリク →未定
MF 中野嘉大 →横浜FC(J1)
DF 石原広教 →浦和(J1)
DF 山本脩斗 →引退
GK 立川小太郎 →いわき(J2)
昨季13ゴールをマークし、チーム内得点王に輝いた大橋祐紀が広島へ、キャプテンを務めた石原広教が浦和へと移籍した。大きな損失を補填すべく福岡からルキアンを、磐田から鈴木雄斗を獲得したものの、ルキアンは昨季の5ゴールがJ1でのシーズンハイ。鈴木も年間を通してJ1でコンスタントに出場したのは22年シーズンだけで、穴を埋めたとは言い難い。
昨季のJ2で前半戦だけで6ゴールをマークした根本凌はポテンシャルを秘めた有望株だが、左膝前十字靭帯断裂のため開幕には間に合わず。すでにトップデビューを果たしている石井久継とともに、将来性があるのは間違いないが、即戦力とは言えない。
過去5年、16位、18位、16位、12位、15位と苦戦が続くため、本来は穴埋めではなく、戦力の上積みを図りたいところ。昨季は「5位以内」と目標を掲げながら残留争いに巻き込まれたため、編成の甘さを指摘されても仕方がなさそうだ。就任4年目を迎える山口智監督の継続性と成熟を強みとして粘り強く戦い抜きたい。
(企画・編集/YOJI-GEN)