J2首位・町田は3試合勝ちナシで試合運びに変化あり 黒田監督と選手は「苦しみ」にどう向き合っているのか?

大島和人

町田は第35節のアウェイ藤枝MYFC戦を0-0で終えた 【(C)J.LEAGUE】

 J2首位のFC町田ゼルビアが、9月に入って苦しんでいる。9月のリーグ戦3試合は2分け1敗と勝利に縁がない。第35節終了時点の勝ち点は「68」で、2位・清水エスパルス(63)、3位・ジュビロ磐田(62)、4位・東京ヴェルディ(60)に食い下がられている。他の上位チームより1試合少ないとはいえ、優勝と昇格の『当確』はまだ打てない状況だ。

 町田の黒田剛監督は1シーズンの42試合を6つのタームで割り、「1ターム(7試合)で勝ち点15」を基準として公言してきた。実際にチームは第4タームまで、おおよそ目論見通りに勝ち点を重ねてきた。ただ第5タームの7試合は勝ち点11にとどまっている。

 18日の藤枝MYFC戦は、そんなもどかしい現状を象徴するスコアレスドローだった。基本的には町田が相手陣に押し込む展開で、シュートの本数も14本vs.6本とはっきり上回っている。一方で藤枝の危険なカウンターが相次ぎ、町田優勢と言い切れない展開でもあった。

「必死さ」「攻め気」があった藤枝戦

チャン・ミンギュ(左)はCBながら前線への攻撃参加を見せていた 【(C)J.LEAGUE】

 今季の町田は手堅く、どこか余裕を漂わせる試合運びをしてきた。立ち上がりにリードを奪って、相手を焦らせて、終盤にトドメを刺す。試合の流れを失っても、結果は取っている。そんな勝負強さを発揮してきたからこそ、勝ち点68は積み上がった。しかし藤枝戦はそういう『らしさ』が無かった。

 開始6分に藤尾翔太がCKから合わせたヘディングがゴールラインを割っていれば、話は違っただろう。町田が「相手にボールを持たせてカウンターを狙う」試合運びに切り替えて、持ち味を出しやすい展開になっていたはずだ。

 ゴールラインを完全に割ったようにも見える『微妙』なシュートでもあった。藤枝のGK北村海チディが必死にかき出したリフレクションはポストを叩き、DFがクリアして得点とはならなかった。町田は試合を通してポスト、バーに決定機を4度5度と阻まれている。良くも悪くも『前のめり』の姿勢を90分間貫いたが、1点も奪えなかった。

 黒田剛監督は試合をこのように総括する。

「トータルで見るとそんなに悪いゲームではなかったけれど、決定機を決められなかったという一言に尽きる」

 藤枝戦の町田から『必死さ』を感じたポイントはいくつかあるが、その一つがチャン・ミンギュの攻撃参加だ。後半にはCBの彼がボール奪取から自ら持ち上がり、そのまま攻め残る場面があった。まだ同点で、時間も十分に残っている中で、失点を避けるのでなく「得点を何としても奪う」姿勢を見せていた。

黒田監督はそんな姿勢をこう受け止める。

「我々の指示ではありません。マークのズレが生じたりするところを狙って、彼の判断で行ったと思います。ただ、松井蓮之を下げたりする調整はできていました。その気持ちを無駄にすることがないようにしたかったし、そういうところから得点は結構生まれます。最終的に点は取れませんでしたけど、その気持ちを評価したい」

「どうしても勝ちたい試合」を取れず

黒田剛監督は就任1年目ながら町田を大きく引き上げている 【(C)J.LEAGUE】

 藤枝の須藤大輔監督はこう述べていた。

「前節の熊本戦と同じように少し割り切った戦いをして、ハイプレスよりはミドルで構える、少しロングボールを多用しながら攻撃する狙いは引き続き持って入りました。相手にシュート、コーナーキックの数は圧倒されていたけれど、ゼロで守れたのは収穫です。何度かあったチャンスを決めていれば、今Jリーグで言われているボールの保持率と関係なく勝ち点は手繰り寄せられる展開に持っていけたと思います」

 藤枝は技巧派タイプが多く、前線の厚みや細かい崩しで高い攻撃力を発揮してきたチームだ。一方で前節の熊本戦からやや「リスク回避」に力点を置いた試合運びも取り入れていた。町田はそんな相手を崩せなかった。

 この足踏みは町田にとってやはり歯がゆい。端的に言えば「どうしても勝ちたい試合」をモノにできなかったからだ。リスクをかけて得点を奪いに行き、それでも相手のゴールを陥れられなかった。

 黒田監督は藤枝戦後にこうも述べている。

「やっぱり、何としても勝ちたかったゲームですよね。そこは認めるべきだと思います」

 キャプテンの奥山政幸は振り返る。

「是が非でも勝ち点3が欲しい試合でした。前節(栃木に)負けて、なかなか最近思うように勝てていない。足踏みをしている中で、どうしても勝ちたい思いはありました。後半はチームとしてもリスクを冒して前に……という部分もありました」

 右SBの鈴木準弥にチームの雰囲気を尋ねると、このような答えが返ってきた。

「別にみんな口に出して言っているわけじゃないですけど、後ろを気にするより自分たちの状況として『早く勝たなければ』という感じはあると思います」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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