J2首位攻防戦で町田勝利の立役者に パリ五輪エース候補・藤尾翔太のプレーに“劇的な変化”あり
藤尾翔太(写真中央)は12日の磐田戦で勝利の立役者になった 【(C)J.LEAGUE】
この結果は目下のライバルから「勝ち点を奪った」という意味合いでも大きい。町田は7月のブラウブリッツ秋田戦が豪雨災害で中止となったため、他の上位チームよりも消化が1試合少ない。町田はJ2制覇、J1初昇格に大きく近づいている。
藤尾翔太がPKを2本獲得
藤尾は開幕後の3月6日に、セレッソ大阪からの育成型期限付き移籍で町田に加入している。2001年5月生まれの「パリ五輪世代」で、2022年6月にウズベキスタンで開催されたAFC U23アジアカップや、今年6月のU-22代表ヨーロッパ遠征でプレーしている。
町田は前線にエリキ、デュークの強力コンビがいるものの、デュークはオーストラリア代表の活動で不在になるケースが見込まれていた。2人に次ぐ存在として期待されていた高澤優也が開幕直後にアキレス腱断裂の重傷を負ったため、セレッソの有望株に白羽の刃が立った。
藤尾は21年に水戸ホーリーホック、22年は徳島ヴォルティスとJ2での武者修行を続けてきた。昨シーズンは30試合の出場で10得点と、悪くない結果を残している。
15試合無得点から夏場のキーマンに
しかし6月3日のジェフ千葉戦のロスタイムにゴールを決め、一つのきっかけをつかんだ。続くU-22代表の海外遠征でも経験を積んだ。
7月は5試合、207分の出場で2得点を記録。ファン・サポーターの投票によって、各月のリーグ戦で最も活躍した選手を決める『月間MZP』(クラブの月間MVP)に選出された。現在は磐田戦のPKで挙げた1ゴールも含め、4得点を記録している。
7月29日の徳島戦からは、3試合連続で先発起用されている。昨年のワールドカップでゴールも決めている大物デュークをリザーブに押し出す抜擢だった。これには後半に運動量や強度が落ちがちな夏場に、強力なアタッカーをベンチに置く戦術的意図もある。黒田監督は磐田戦後の会見でこう述べていた。
「ウチには平河(悠)、荒木(駿太)、デュークがいます。(彼らを途中から投入して)スイッチを入れ直して、90分を通してハードなハイプレスをやっていけるプランを組んでいます。徳島戦、岡山戦から3試合目ですけど、これ(藤尾の先発起用/デュークらのリザーブ起用)が勝利をもたらしていることもあり、今はこの形が一番いいのではないかと考えています」
「代表から帰ってきてギアが上がった」
「もう明らかにコンディション上がって、プレーの選択、身体の強さとより彼の良さが出ています。本当に頼もしくなったというか、代表から帰ってきてグッと1個ギアが上がりました」
1点目のPKにつながる浮き球のフィードを出した右サイドバック鈴木準弥は述べる。
「翔太はすごくキープできるし、得点感覚もある。(藤尾へのフィードは)縦というよりはペナに入るような、ちょっと斜めのボールでした。左のセンターバック(CB)を越えて右CBと翔太に競らせつつ胸に出す感じです。試合前に翔太と『直接ゴールに行けるプレーが狙えるなら狙っていこう』と話をしていたので、狙い通りに行けました」
2点目のPKにつながるスルーパスを出した松井蓮之は振り返る。
「前半から僕たちボランチのところにプレスが来て、前はマンツーマン気味で来ていました。あと高橋大悟が1.5列目に落ちたところに、(磐田の)CBが少し釣られているのは試合を通して分かっていました。そこまで見えていなかったですけど、『あそこに翔太が走っている感覚』で出しました。アバウトなボールでも、マイボールにしてくれるところは翔太の強みですね」