「勝っている」のに開幕後も大量補強を続けるJ2町田 黒田監督が新加入選手をすぐ生かせている理由

大島和人

鈴木準弥は7月中旬の加入ながら3試合連続で先発している 【(C)FCMZ】

 サッカー界には「ウイニングチーム・ネバー・チェンジ(Winning Team Never Change)」という格言がある。日本語に直すなら「勝っているチームを変えてはならない」という意味だ。しかし2023年のFC町田ゼルビアは「勝っているチーム」にもかかわらず、選手の入れ替えが旺盛だ。

 町田は第29節を終えた時点で勝ち点60の首位。第4節で首位に立ってから一度も先頭を譲らず、コンスタントに勝ち点を重ねている。消化試合が1つ少ないにもかかわらず、2位・ジュビロ磐田(勝ち点54)、3位・清水エスパルス(勝ち点49)に差をつけている。

先発のうち4名が「シーズン途中」の加入

 しかし第29節・ファジアーノ岡山戦の先発メンバーは、開幕のベガルタ仙台戦から6名が交代していた。特にDF鈴木準弥、MF松井蓮之、MFバスケス・バイロン、FW藤尾翔太の4名は開幕時点で他クラブに所属していた選手だ。

 町田は今季の新加入選手も19名と多かったが、開幕後に5名が加入し、期限付き移籍などで既に7名を外に出した。連携構築には時間がかかるし、補強には費用もかかる。既存の選手も、ライバルの登場を嬉しくは思わないだろう。しかし今季から就任した黒田剛監督、原靖フットボールダイレクターはリスクを冒しても、クラブに新しい刺激を与え続けている。

 5日の岡山戦後、黒田監督はシーズン中の補強をこう説明していた。

「(理由は)やはり少し怪我が多いこと。それから体調不良が出たりして人が足りなくなったりする中で、(町田から他クラブへの)移籍もありましたけども、試合を人が足りない状況で迎えるのは嫌でした。ウィンドウの空いている(=移籍選手を獲得できる)時期に手当しておくことが、次なる我々のチャレンジにつながると考えています。今まで試合に出ていた選手が決して悪かったわけではありません。我々は競争をしながら、選手の使い分けをしながら、90分間(運動量やプレーの強度を)持たせる戦略でやっています。それが今のところは奏功しています」

「使っていかなかったらフィットもしない」

 岡山戦はオーストラリア代表のFWミッチェル・デューク、U-22代表候補のMF平河悠といった主力をベンチに置き、後半から投入した。天皇杯ラウンド16のアルビレックス新潟戦から中2日という強行日程の中でも、チームは終盤の“落ち”がない試合運びに成功。1-1で迎えた後半に2点を挙げ、3-1で勝ち点3を獲得している。町田が選手層の厚さをアドバンテージにできていることは間違いない。

 特に鈴木、バスケスは7月の加入だが、移籍直後から先発で起用されている。早期適応のためにどのような工夫をしているのか、そもそもなぜ「慣らし」をせずに先発で出すのかーー。指揮官はこう述べていた。

「(町田は)そんなに難しいことしてないので(時間はかからない)。トレーニングで、または映像を見せながら、個人へのアプローチでコンセプトを落とし込んでいます。それに選手は使っていかなかったらフィットもしません。試合の最後に使うほうが、逆に難しかったり怖かったりもする。できるだけ来た選手は、少しでも使ってあげたいと考えています」

夏の新加入選手がすぐ戦力に

鈴木準弥はFK、CKも任されている 【(C)FCMZ】

 新戦力の獲得には層を厚くする「補充」と、チームに新たな強みを加える「補強」の側面がそれぞれある。例えば松井蓮之は守備の強度、攻守で前に出る迫力がある。バイロン・バスケスならばサイドの打開力や、キープ力がある。試合運びの遂行力が落ちやすく、オープンな展開が増えがちな夏場に、このような人材がいる意味は確実に大きい。チームにとっては間違いなく“補強”だ。

 鈴木は加入直後の第27節・ジェフ千葉戦から、3試合連続で先発起用されている。彼は町田がこだわるセットプレーで貢献できる選手だ。右足のプレスキック、ロングスローはどちらも既存選手以上のレベルで、岡山戦はFK、ロングスローから計2ゴールの起点になった。FC東京ではほとんど出番を与えられていなかったが、移籍後は水を得た魚のような働きを見せている。

 鈴木は加入直後からのフル回転についてこう述べる。

「シンプルに嬉しさが強いです。東京に行ってから、1年半くらいなかなか出場機会がなくて、悶々としたものがあったところを、今は全試合に出させてもらっている。毎週燃え尽きるくらいにできていますし、セットプレーで役割を与えてもらえていることも自分のやりがいになっています。町田の戦術には僕のストロングポイントを生かしやすいところがあって、そこをうまく出せていると思います」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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