6-0の大勝スタートも、最終戦は冷や汗もの…パリ五輪アジア最終予選の出場権を獲得した大岩ジャパンの収穫と課題とは?

飯尾篤史

インサイドハーフとして2試合に先発した三戸。ドリブル突破や2列目からの飛び出しで相手に脅威を与えた 【池田タツ】

 バーレーンで開催されたU23アジアカップ カタール2024予選(パリ五輪アジア1次予選)。大岩剛監督率いるU-22日本代表は2勝1分の成績でパリ五輪アジア最終予選進出を決めた。松木玖生や三戸舜介らの活躍が目立ち、チームとしても夜でも35度を超える酷暑、中2日の過密日程を戦い抜くタフさを見せた。その一方で、物足りなさも残した若き日本代表の戦いぶりについてレポートする。

思い通りにいかなかったバーレーン戦

 幸先良いスタートを切ったものの、最後は土俵際に追い詰められてしまった。

 酷暑のバーレーンで行われたパリ五輪アジア1次予選。大岩剛監督率いるU-22日本代表は2勝1分の成績で、来年4月にカタールで開催されるアジア最終予選進出を決めた。
 9月6日のパキスタン戦は、細谷真大(柏レイソル)と三戸舜介(アルビレックス新潟)が2点ずつ、鈴木海音(ジュビロ磐田)と藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)も決めて6-0と快勝したが、9日のパレスチナ戦は90分間攻め続けながら、藤尾翔太(FC町田ゼルビア)の1ゴールにとどまった。

 さらに苦戦したのが、地元・バーレーンとの9月12日の最終戦だ。主導権を握りながら攻め崩せずにいると、ゲーム終盤、反撃に出たバーレーンにあわやのシーンを作られ、辛うじてスコアレスドローに持ち込んだ。

「非常に苦しいゲームで、なかなか自分たちの思い通りにいきませんでした」
 バーレーン戦後、大岩監督は素直に苦戦を認めた。そのうえで、夜でも気温35度・湿度75%という環境下、中2日の過密日程をこなしながら、最低限のミッションを成し遂げた選手たちを労った。
「エクスキューズを言うわけではないが、これだけ疲弊するのは想定を超えていた。試合自体はそんなに悲観することもないと現段階では評価している。最終予選に向けて、この苦しい戦いを乗り切ったことの自信と難しさの両方を踏まえたうえで、もっともっとレベルアップしようよ、と選手たちには話しました」

 指揮官の言葉にもあるように、この時期のバーレーンは尋常でない暑さだった。あまりに暑いから、バーレーンの国内リーグも開幕は9月末に設定されているほどだという。
 パキスタン戦で疲労を感じさせないほどピッチを駆け回った松木玖生(FC東京)も「(この暑さは)慣れないですよ。無理です」と苦笑し、センターバックとして2戦目、3戦目にフル出場した木村誠二(FC東京)も「正直、暑さで頭が回らない時間帯があった」と告白した。それだけ過酷な状況でありながら、3試合を無失点で戦い抜いたことは評価に値する。

スタメン10人を入れ替えたパレスチナ戦

想像以上の酷暑だったため、選手起用に頭を悩ませた大岩監督。予選突破を成し遂げた選手を労った 【飯尾篤史】

 もちろん、酷暑のもと、ハードスケジュールを戦い抜くための準備は施されていた。
 すでに涼しくなりつつある欧州でプレーする選手たちは、サウナに入ったり、長風呂に浸かるなどして、少しでも暑熱順化しやすいように取り組んでいた。

 また、今遠征ではトレーナーを通常よりひとり増やし、内科医にも帯同してもらっている。さらに、2004年3月に同じバーレーンで行われたアテネ五輪アジア最終予選で集団食中毒が起きた経験を踏まえ、日本からシェフを連れてきてもいる。
 「食事はすごく充実しています。クオリティの高い料理がバンと出てくるので、本当にありがたい」と山本理仁(シント=トロイデン)は万全の食事体制に感謝した。

 ハードスケジュールを乗り切るべく、メンバー構成にも工夫が見られた。
 合宿がスタートしたのは、試合2日前となる9月4日の月曜日だったが、その時点で全員が集まれたわけではない。合宿初日に姿を見せたのは、金曜日、土曜日に試合があった選手と、日曜夜の試合終了後、飛行機に乗った松木、木村、野澤大志ブランドン(FC東京)の14人だけ。残り9人はパキスタン戦前日の5日の合流となった。
 そこで、パキスタン戦ではスタメン11人中9人が合宿初日に合流できた選手となった。残りふたりは前日合流のGK鈴木彩艶(シント=トロイデン)と藤田だったが、藤田は週末の試合でベンチだったため、疲労を抱えていなかった。

 こうして少しでもコンディションの良い選手が初戦のピッチに立つと、3日後のパレスチナ戦ではGK以外スタメン全員を入れ替えて臨んだ。さらに3日後のバーレーン戦では木村を除き、初戦のスタメンが再び先発出場を果たした。
 大会期間中、大岩監督は「数値で言えば、体重が減っているかどうかとか、尿の数値を見たり。メンタル的な疲労感もどう高めていくか。いろんなアプローチをしている」と語っていたが、あらゆることを吟味し尽くした末のメンバー選考だったことは想像にかたくない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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