パリ五輪アジア予選がスタート…斉藤光毅や藤田譲瑠チマら常連組に松木玖生らU-20世代が合流した大岩ジャパンの見どころは?

飯尾篤史

昨年6月のU23アジアカップ、9月以降の欧州遠征を経て、大岩ジャパンがいよいよパリ五輪の予選に臨む 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 U23アジアカップ カタール2024の予選が9月6日からバーレーンで開催される。来年4月に行われるU23アジアカップはパリ五輪アジア最終予選を兼ねるため、今大会はパリ五輪アジア1次予選という位置付けだ。最終予選進出を懸けて若き日本代表が戦うのは、バーレーン、パレスチナ、パキスタンの3チーム。大岩剛監督率いるU-22日本代表のこれまでの歩みと、選手たちの顔ぶれ、大会の焦点についてレポートする。

21時半でも30度を上回るバーレーン

 まとわりつくような熱気と湿気が選手たちの動きを鈍らせる――。そんな光景が容易に浮かぶが、こんなところで躓くわけにはいかない。

 U-22日本代表、大岩ジャパンが9月6日からパリ五輪アジア1次予選に臨む。

 この予選は3〜4チームによるグループ総当たりで争われ、全11グループの各1位と2位のうち上位4チームが来年4月にカタールで開催されるパリ五輪アジア最終予選に進出する。

 最終予選で3位以内に入れば、パリ五輪への切符を獲得。3位決定戦で敗れても、アフリカとのプレーオフに回るため、出場権獲得の可能性は残される。

 日本が1次予選で戦うのは、パキスタン(9月6日)、パレスチナ(9月9日)、バーレーン(9月12日)の3チーム。開催国のバーレーンはもちろん、パレスチナも侮れない相手である。しかも、初戦・2戦目のキックオフ時間は21時半、3戦目は18時半だが、バーレーンではこの時間でも気温が30度を上回る。「暑熱順化においては特に海外組のほうが必要になる」と大岩剛監督も懸念するように、厳しい戦いになりそうだ。

 だが、パリ五輪でのメダル獲得という目標を考えれば、このステージで苦しんでいる場合ではない。「この大会にどう臨むか、どう高めるではなく、結果とそれに対するアプローチが求められている。まずは1試合目の準備をして、一体感を出していくことが大事」と指揮官も言うように、万全の準備で3戦全勝を飾ってもらわなければ困るのだ。

 大岩ジャパンが立ち上げられたのは1年半前、22年3月にUAEで開催されたドバイカップU-23だった。クロアチア、カタール、サウジアラビアを破ってこの大会を制すると、22年6月にはU23アジアカップ ウズベキスタン2022に出場。準決勝で開催国に0-2と苦杯を嘗めさせられたものの、UAEや韓国、オーストラリアを破って3位に輝いている。

欧州勢との対戦は2勝3分3敗

3月のベルギー戦では、ショートカウンターからドリブルで持ち運んだ10番の鈴木唯人が同点ゴールを叩き込んだ 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 22年秋からは欧州行脚の旅が始まった。

 22年9月のスイス戦(●1-2)を皮切りに、イタリア戦(△1-1)、11月のスペイン戦(●0-2)、ポルトガル戦(○2-1)、今年3月のドイツ戦(△2-2)、ベルギー戦(●2-3)と続き、今年6月にはイングランド(○2-0)、オランダ(△0-0)と対戦し、2勝3分3敗の成績を収めた。

 対戦相手はいずれも今夏のU-21欧州選手権(本大会の年齢制限は23歳以下)に出場した8チームである。アンカーを務める藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)が「1回1回の遠征で世界の基準を知ることができ、貴重な経験になっている」と語ったように、欧州のトップチームの胸を借りた武者修行が、チーム作りにおいても、個人の経験としても有意義なったのは確かだろう。

 9月1日にはパリ五輪アジア1次予選に臨むメンバー23人が発表された。

「パリ五輪出場が懸かる大事な公式戦。我々が当初から積み上げてきたものをよく知る選手を中心に、U-20W杯で活躍した選手、Jリーグ、海外で活躍している選手を中心に選考した」との大岩監督の言葉どおり、常連組が多く選ばれた印象だ。

 GKは小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)、鈴木彩艶(シント=トロイデン)の常連組に加え、8月に入ってFC東京でスタメン起用が続く野澤大志ブランドンが、今年5月の千葉合宿以来の選出となった。

 右サイドバックはドイツでのプレーが6シーズン目に入った内野貴史(フォルトゥナ・デュッセルドルフ)と、湘南ベルマーレでレギュラーを張る畑大雅が選出された。

 左サイドバックは昨年9月以来の復帰となる大畑歩夢(浦和レッズ)と、今夏、サガン鳥栖からガンバ大阪に期限付き移籍をしたU-20日本代表世代の中野伸哉の争いになりそうだ。サイドバックに関しては、畑は左サイド、中野は右サイドでもプレーできる。

 センターバックは欧州遠征8試合すべてに招集された鈴木海音(ジュビロ磐田)と木村誠二(FC東京)、昨年1月にA代表の合宿に呼ばれた西尾隆矢(セレッソ大阪)、さらにはU-20W杯に出場した高井幸大(川崎フロンターレ)が引き上げられた。

 中盤では藤田、山本理仁(シント=トロイデン)、鈴木唯人(ブレンビー)の常連組と、6月シリーズでA代表に招集された川﨑颯太(京都サンガF.C.)、さらにU-20日本代表でキャプテンを務めた松木玖生(FC東京)の5人が選出された。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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