連載:欧州サッカー23-24シーズンの論点は?

三笘、遠藤、鎌田、久保…欧州3大リーグ所属&日本代表最注目4選手の今シーズンの立ち位置は?

舩木渉

開幕から期待通りの活躍を見せるブライトンの三笘(左)と、加入してすぐに起用されたリバプールの遠藤。10月8日にはブライトン対リバプール戦が組まれており、今から待ち遠しい 【写真は共同】

 2023-24シーズンも数多くの日本人選手がヨーロッパの舞台で戦う。なかでも注目なのが、日本代表の命運を握るこの男たちだろう。引き続き主軸として期待されるブライトンの三笘薫とレアル・ソシエダの久保建英、新天地を求めたリバプールの遠藤航とラツィオの鎌田大地。欧州3大リーグでプレーする彼らの動向を追った。

三笘薫(ブライトン/プレミアリーグ)

圧巻だった初ゴール…目指すは「最低でも15得点」

相手4人を置き去りにするスーパーゴールを決めた三笘。プレミア2年目の今季、真のワールドクラスの称号を得られるだろうか 【写真:アフロ】

「日本人のサッカー選手といえば?」という問いに対する答えは、今やナカタやホンダ、カガワではなく、「ミトマ」になった。昨年のカタールW杯で「三笘の1ミリ」という逸話を残して日本代表の英雄となり、所属するブライトンでもセンセーショナルな活躍を披露した三笘薫は、日本サッカー界のみならずプレミアリーグでも「顔」の1人と言える存在だろう。

 プレシーズンツアーのために来日していたマンチェスター・シティのペップ・グアルディオラ監督も「三笘は信じられないほど素晴らしい選手。彼はふさわしい監督のもと、正しいクラブでプレーしている」と名指しで言及した。今夏、シティ移籍の噂が持ち上がったのも自然な流れだった。

 ただ、現時点ではブライトンの主軸であることに変わりはない。プレミアリーグ開幕戦のルートン・タウン戦で先制点をアシストした三笘は、続く第2節のウォルバーハンプトン戦で1得点1アシストを記録し、ブライトンの連勝に大きく貢献する。特に左サイドからドリブルで一気に加速して4人のディフェンスを置き去りにして決めたウォルバーハンプトン戦での今シーズン初ゴールは圧巻だった。

 勝負の2シーズン目は上々のスタートだ。とはいえ、対戦相手が昨シーズンよりも厳しい「三笘対策」を講じてくるのは間違いない。1対1では敵なしの日本人ウインガーに、1対2や1対3という困難な状況を突きつけるような相手も増えてくるだろう。実際に第3節で対戦したウェストハムは、右サイドバックと右ウイングの2人に三笘を徹底マークさせ、持ち味を発揮させなかった。

 昨シーズン終盤、ブライトンのロベルト・デ・ゼルビ監督は伸び盛りの26歳に「来シーズンは最低でも15得点を」と高い目標を与えた。プレミアリーグ参戦2年目の今シーズンは自身初の欧州カップ戦出場も控えている。その中で昨シーズンの公式戦10得点8アシストを大きく上回る成績を残せれば、三笘は真のワールドクラスという称号を手にすることができるだろう。

遠藤航(リバプール/プレミアリーグ)

「君の力が本当に必要なんだ」…異例の加入翌日デビュー

加入してすぐ起用された遠藤だが、2試合続けて退場者が出るという不運に見舞われた。戦術を理解するには、もう少し時間が必要だろう 【写真:REX/アフロ】

 電撃移籍というのは、まさにこのことを言うのだろう。最初に遠藤航のリバプール移籍が報じられたのは8月16日のこと。その日のうちにシュトゥットガルトとのクラブ間合意が伝えられ、18日にはリバプール加入が正式発表に。それまでまったく移籍の噂がなかったシュトゥットガルトのキャプテンは、瞬く間にプレミアリーグ移籍という夢を叶えることとなった。

 リバプールは遠藤獲得に1900万ユーロ(約30億円)もの移籍金を支払い、異例とも言える4年契約を提示した。今夏、ジョーダン・ヘンダーソンやファビーニョがサウジアラビアへ移籍し、ジェームズ・ミルナーやアレックス・オックスレイド=チェンバレンら中盤の実力者を数多く失ったなか、ブライトンのモイセス・カイセドとサウサンプトンのロメオ・ラビア(ともにチェルシーへ移籍)の獲得に失敗。リバプールにとってアンカーを担える選手の補強は急務で、遠藤に白羽の矢が立ったのである。

 当然、クラブの補強方針に合致しない30歳の選手獲得に30億円を投じたことを疑問視する声もあった。しかし、ユルゲン・クロップ監督が初対面した遠藤に「君の力が本当に必要なんだ」と伝えた映像からも期待の大きさは伝わってくる。その指揮官は加入翌日の19日に、遠藤をプレミアデビューさせた。チーム練習もままならなかったが、3番を背負った日本人MFは味方に退場者が出て数的不利だったリバプールの勝利に大きく貢献した。

 プレミア初先発となった27日のニューカッスル戦でも序盤に味方が退場し、攻守両面で持ち味を発揮しきれなかったが、評価が揺らぐことはなさそうだ。クロップ監督は試合後のインタビューで苦笑いを浮かべながら「遠藤にとっては大惨事になってしまった。またしても10人での戦いになってしまって、我々のやり方をつかみきれないままプレーしている」と述べ、2試合連続で1人少ない状況でのプレーになってしまった遠藤を擁護した。リバプールの中盤で日本代表キャプテンの真価が試されるのはこれからだ。

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著者プロフィール

1994年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。大学1年次から取材・執筆を開始し、現在はフリーランスとして活動する。世界20カ国以上での取材を経験し、単なるスポーツにとどまらないサッカーの力を世間に伝えるべく、Jリーグや日本代表を中心に海外のマイナーリーグまで幅広くカバーする。

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