「私も『この人やべえ!』と言われたい」 ミックスダブルスで奮闘中の新米ママ・小穴桃里インタビュー
予選では6試合を戦い、5勝1敗でブロックを1位通過 【(C)JCA IDE】
「女性アスリートの育成・支援プロジェクト」を活用
ありがとうございます。無事に娘を出産しました。
――10月に出産をされ、11月末にはアイスに戻ったと聞いています。それまでの経緯だったりトレーニング内容を聞かせてください。
私はずっとJISS(国立スポーツ科学センター)にお世話になっていました。昨年の8月から月に2回くらいの頻度で通って、「女性アスリートの育成・支援プロジェクト」を活用させてもらいました。(妊娠)34週目が最後のトレーニングで、産後1カ月の検診を経てトレーニング再開という形です。
――具体的にはどのようなトレーニングをするのですか?
JISSではリハビリテーションやメンタルをケアする心理カウンセリング、栄養相談などアスリートに対する様々なサポートをしているのですが、私が利用したのは産前産後のトレーニングに特化したサポートです。産前は自重によるトレーニング、というよりストレッチに近い感じです。産後期から復帰に向けた準備、という意味も大きかったと思います。逆に私からは妊婦のトレニーングのデータを提供する形です。「おお、めっちゃ研究されているな、私」と実感できる数カ月でした。
――そのあたりはご自身も「note」で書き記していますね。
みなさん色々、聞いてくれるのでまとめて答えられることは残しつつ、自分の備忘録的な意味もあって。
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できませんでした。出産経験のある方は共感してもらえると思うのですが、産後から1カ月くらいは(疲れや安堵で)ドロドロと地を這うような生活でした。語弊があるかもしれませんが、人間としての機能をほとんど果たしていなかったもので。
――産後もまた別なトレーニングをするのですか?
個人差はあるのですが、骨盤にどうしてもダメージが残るので産後は体幹に力が入らないんです。JISSに行って経過をチェックしながら、5キロとかごく軽いウェイトを持ったトレーニングに移行する感じですね。復帰は産後1カ月が目安なのですが、ちょうど出産して1カ月が過ぎた11月末に山中湖の「Curlplex Fuji」のアイスに乗りました。
――氷上で不安や恐怖といったものは?
ありましたありました。デリバリーの姿勢が怖かったり、骨盤が痛かったり、翌日は筋肉痛もひどいものでした。それでも12月に軽井沢でミックスダブルスの強化合宿があったので、そこまでには間に合わせようと思って頑張りました。
――女性アスリートが出産を経て競技に戻るケースは日本でも増えてきた一方で、いまだに封建的な考え方をする人には受け入れてもらえない部分はあるかもしれません。
昨年、お世話になった富士急さんを退社しているのですが、その時に「引退したんだね。お疲れ様」と解釈する人が多かったです。でも文化の違いなんですかね、ジム・コッターコーチ(元富士急コーチ)も、JD(ジェームス・ダグラス・リンド/ロコ・ソラーレ)も、ボブ(・アーセル/男子ナショナルコーチ)も、産む前から「いつ復帰するの?」と復帰前提で声をかけてくれるのは安心したというか、嬉しかったです。
――JISSの「女性アスリートの育成・支援プロジェクト」は産後どれくらいケアしてもらえるのですか?
トレーニングは1年後が目安です。それに加えて、競技を続けることで子供を見てもらうために費用のサポートなどもあったりしますので、うまく活用してそんな制度があることを多くの方に知ってもらえればと今は思っています。
疑似弟・青木豪のスーパーショット
今大会も愛娘が同行する「緊張感がある大会でも娘の顔を見ると緊張がほぐれます」 【(C)JCA IDE】
韓国との合同合宿で日韓の好チームと9試合をこなして結果も悪くなかったんです。自信になりました。
――ペアを組む青木豪選手(札幌国際大学)も「めっちゃ決めるし、スイープもしてくれた」と驚いていましたね。青木選手とは2020年のミックスダブルス日本選手権から4シーズンを過ごし、3度目の日本選手権となりました。組んだ経緯を教えてください。
まず勝てる人とやりたい。あとはやっててワクワクするカーリングがしたい。もうひとつは年下のほうがベターかなという意図がありました。
――年下というのは?
私は4人姉弟の長女で、弟が3人いるんです。年下とコミュニケーションを取るほうが慣れているというのが主な理由です。
――その疑似弟・青木選手とペアはどんなところがストロングポイントになりますか?
ふたりで次のショットを相談している時に「これ投げてみる?」「いいね、やってみよう」というトライのフィーリングが一致するというか、お互いに楽しみながらチャレンジングなショットをできるところですかね。
――青木選手のショットは国内屈指のエンターテインメント性がありますもんね。
普通、ショット率ということで考えるとヒットステイやオープンドローが数字を残しやすいんです。逆にフリーズは難しかったりするんですけれど、豪君の場合はシンプルなショットを提案しても「え、それよりこっちのフリーズのほうが簡単だよ」と言って実際に決める。そういうところは驚くし楽しいですね。テイクでも混雑したハウスに「ひゅーどーん」と投げ込んで、私は「このアングルじゃ、どう飛ぶか分からないなあ」と思っているけれど、投げ終わったらいいショットになっていたということがあります。個人的は「いちばん近いところでスーパーショットを見せてくれてありがとう」といつも思っています。