「私も『この人やべえ!』と言われたい」 ミックスダブルスで奮闘中の新米ママ・小穴桃里インタビュー

竹田聡一郎

ふたつの日本選手権に出た新米の母が今、思うこと

国内屈指のフィニッシャーである青木 【(C)JCA IDE】

――今季はミックスダブルスの日本選手権に照準を合わせるのかなと思っていたのですが、1月末から常呂町で行われた「全農 日本カーリング選手権大会2023」にも小穴選手は出場。その経緯も教えてください。

 チームに体調不良者が出てしまったり、あとは母のスケジュールも確保できて現地で娘の子守してくれることになったり、といくつか理由はあったのですが、端的に言うと鈴木結海(東京No Brand/東京都協会)ちゃんの粘り勝ちですね。出産前から3度も誘ってくれたので。

――大会途中から5試合に出場しています。

 私は日本選手権ではスイーパーかスキップしかしたことなくて、バイス(スキップ)は初めてで、やったことないことにチャレンジさせてもらいました。もちろん周囲のサポートやチームメイトの理解ありきですが、結果的にはとても楽しかったですし、出て良かったなと思っています。

――大会には例えば本橋麻里(ロコ・ステラ)選手のような母親アスリートの先輩も多く、出場していました。

 麻里さんとも少し話ができました。単純に身の回りで産後にわざわざハードな運動をする人なんていないので、やっぱり理解してくれる人は少ないんです。でも同じ環境を通り過ぎてきた麻里さんに会えて、様々なシステムや制度について「あー、今はあれができるんだね」と共感してくれる人と、少しだけでも話ができたのは嬉しかったです。

――結果的に現在、開催中の「全農 日本ミックスダブルスカーリング選手権大会」に向けたいい調整になったのではないでしょうか。小穴・青木は、プレーオフに進出しました。

 ありがとうございます。予選はいい時ばかりではありませんでしたが、その中でもしっかり勝ち切れたところは自信に繋がりました。以前はゲーム途中で怪しい雰囲気のまま負けてしまうこともあったので、少しずつチームとしてのレベルも上がってきていると思います。

――新ユニホームにはスポンサー企業の名前も映えていますね。

 今季の大会はこの1試合の露出だけになってしまうのですが、来季からは本格的に海外遠征をしようと考えています。例えば武田消毒さんは、女性が多く「女性の社会での活躍」みたいな部分に熱心な会社なので、今の私の挑戦を見守ってくれています。本当に心強いです。

――そのスポンサーに報いるためにも、優勝して世界選手権(4月/韓国・江陵)には出場したいですね。

 オリンピックの出場枠が次回のイタリア(2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ)でも8枠だとすると、2024年と2025年の世界選手権のどちらかでベスト4には入っていないと出場権は獲得できないかもしれない。2024年に結果を出すとすると、やっぱり今年の世界選手権は経験したいですね。場所も韓国で近いですし、娘を連れて初の海外がいきなりヨーロッパとかだと不安もあるので、そういう意味でも今年は行きたいですね、世界選手権。

――プレーオフ以降もいいゲームを楽しみにしています。最後に4人制への復帰について可能性を聞かせてください。

 現状では、自分の限られたリソースをどう有効に使えるかを考えるとダブルスメインがいいのかな、と思っています。でも、今年日本選手権に出たらやっぱり楽しかったので、また環境が整えばチャレンジしたいという気持ちもあります。

 どうなるかは私自身もまだ分かりませんが、ケイトリン(・ローズ/カナダ代表として2014年ソチ、2018年平昌ではMDでそれぞれ金メダルを獲得)が、産後1カ月でグランドスラムに出てたんです。それを見て私は「うわ、この人やべえ!」ってすごい元気をもらいました。そういうふうに私も頑張ってカーリングを続けてプレーすることで一人でも二人でも見た人が元気を出してもらえればいいなと思っています。

大会前には札幌で合宿をこなした 【本人提供】

小穴桃里(こあな・とうり)

1995年5月25日山梨県甲府市出身。8歳の時にカーリングを始め、中学3年生時にチームフジヤマ(富士急)に加入。2018年には日本選手権で初優勝し、世界選手権にも出場。日本ミックスダブルス選手権は3度目の出場となる。2021年に結婚し、2022年10月に出産。翌23年1月には日本選手権、2月には日本ミックスダブルス選手権に出場した。趣味はスタイ(よだれかけ)作り。Twitterのチームアカウントは(@Koana_Aoki)

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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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