大本命のロコ ・ソラーレに対する各チームの“ロコ対策”…日本カーリング選手権大会展望

竹田聡一郎

藤澤五月「まずはみんな元気で大会を終えること」 【(C)JCA IDE】

 第40回全農日本カーリング選手権大会が北見市常呂町の「アドヴィックス常呂カーリングホール」で開催される。参加チームは男女共に9チーム。まずは29日からのラウンドロビン(総当たりリーグ戦)でクオリファイ(プレーオフ進出)を決めるが、有力チームを紹介したい。

大本命ロコ ・ソラーレを追うのは中部電力、北海道銀行

 女子の優勝候補は、やはりロコ・ソラーレだろう。

 大会前の会見でスキップの藤澤五月は「まずは自分たちがいいショットをすることが第一」とコメントしていたが、銀メダルを獲得した1年前の北京五輪、常呂のリンクで開催された8月のアドヴィックス杯、11月のパンコンチネンタル杯、さらに1月のグランドスラムなどなど、この1年の実績は出色だ。

 日本選手権でも藤澤が加入してからは6大会連続でファイナルに進出(2018年大会は平昌五輪の日程の関係で不出場)しているなど安定感も抜群だ。ネガティブな要素を探すほうが難しいが、サードの吉田知那美が昨季の終わりに「国内でも海外でもデータなどを使っての(対戦相手への)対策が進んでいる」と語っていたように、各チームは“ロコ対策”を講じているはずだ。

 その“ストップ・ロコ ”の一番手は中部電力だろうか。前述のロコ・ソラーレが進出した6度の決勝のうち4試合は中部電力が相手で、2勝2敗と決勝だけに限れば互角の対戦成績を残している。スキップの北澤育恵と藤澤の投げ合いは国内カーリング最高峰のエンターテインメントと言っても大袈裟(おおげさ)ではない。

 吉田夕梨花と鈴木夕湖という世界屈指のフロントエンドを相手に、石郷岡葉純と鈴木みのりがどこまで食らいついてバックエンドに繋げるかが勝負の分かれ目になりそうだ。また、コーチと選手の「二刀流」を継続する両角友コーチの対ロコ采配があるのか、そのあたりも注目したい。

 采配という意味では昨年3位の北海道銀行も興味深い。次世代カーラーの旗振り役である田畑百葉をスキップに据えて迎えた2季目、ユニバーシアード代表で世界ジュニアチャンピオンのスキップ・山本冴を加え、戦力アップに成功した。基本的に田畑とサードの仁平美来のバックエンドは動かさずに、山本をフロントエンドで試しながらクオリファイを目指すというミッションが佐藤浩コーチに課されている。まだ若いチームだけに強さと脆さは隣り合わせだが、12月の軽井沢国際でロコ・ソラーレとエキストラエンドまで撃ち合って勝利するなど明るい材料が多い。アイスリーディングと選手起用がハマれば大会の主役になるだろう。

 クオリファイという意味ではフィロシーク青森、SC軽井沢クラブといったカーリングホールを有する地区ブロックを抜けてきたチームにも十分にチャンスがある。また、元富士急で日本選手権優勝経験のある小穴桃里を加えた東京協会も面白い存在になりそうだ。そこにワイルドカードを勝ち抜いたLS北見(LOCO STELLA)なども加わって、中位は混戦必至だろう。

初戦から昨季のファイナルが再現

2018平昌以来の五輪出場を目指すため国内の競争は不可欠だ 【(C)JCA IDE】

 男子は昨年大会でファイナルに残った2チーム、優勝のSC軽井沢クラブと準優勝の札幌国際が軸になりそうだが、この2チームは大会初日の初戦、29日の9時の試合からいきなり対戦する。

 慎重にアイスを読み情報を集めながら堅い試合になる可能性もあるが、どちらも攻撃重視のカーリングが持ち味で、昨大会での3試合は8-3、7-10、11-7と撃ち合っている。序盤から大会を一気に盛り上げる乱打戦も十分にありうる。

 いずれにしても勝者は余裕を持ってアイスリーディングをしながらクオリファイ以降を見据える余裕も出てくる。序盤の大一番だ。

「連覇のかかる大会、去年同様挑戦者の気持ちで大会に臨んで連覇を目指してがんばりたい」(SC軽井沢クラブスキップ・栁澤李空)

「今年はあと一歩、届くように優勝を目指していきたい」(札幌国際大学スキップ・佐藤剣仁)

 これを追うのは激戦区の北海道ブロックを全勝優勝で勝ち抜いた北見協会(KiT CURLING CLUB)、中部ブロックを同じく無傷で突破したTM Karuizawaだ。

 昨年4位の北見協会はコンサドーレから相田晃輔を獲得し、器用な相田をリードあるいはセカンドとして起用しチームのオプションを増やした。12月に同じ常呂のリンクで北海道選手権10試合を戦ったのも大きなアドバンテージになるだろう。

 TM Karuizawaも今季から元コンサドーレで日本選手権3連覇のスキップ・松村雄太を加えた。柔軟併せ持った松村と両角友佑のバックエンドは、ショットの精度という意味では国内屈指。初優勝すら狙える豪華布陣が実現した。「とにかく面白いカーリングを」がこのスター集団の意気込みだ。

「自分たちのやりたいことをやる。途中でつまんない試合をして中途半端な負けをするよりも、やり切ることを大切にする大会にしたい」(両角友)

 上記4チームに食い込んでいくのが、ワイルドカード枠を勝ち取ったコンサドーレだろうか。北海道選手権のプレーオフでは北見協会に勝つなど地力の高さを証明した。阿部晋也、清水徹郎ら経験豊富な選手と若手のショットがかみ合えば新チームでの戴冠も十分にあり得る。

 そのコンサドーレと初戦で対戦する、荻原諒率いるチーム荻原も好チームだ。日本選手権でクオリファイ経験もある荻原が6年ぶりの大舞台でどんな指揮を執るのかは大会の見所のひとつ。初戦からハマれば一気にダークホース的存在に化けるかもしれない。

 いずれにしても決勝の再戦、クオリファイ戦線のキーカードと、初戦から見逃せない試合で開幕を迎えることになった。

 ラウンドロビンは2月3日まで。4日以降はプレーオフになるが、まずは優位に立つのはどのチームか。男女ともに連日、注目カードが組まれている。NHK-BSが毎試合テレビ中継をするほか、その他のカードもYouTubeでライブ配信予定だ。年に一度の国内最強を決めるカーリングの祭典を存分に堪能したい。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント