カーリング、4度目開催の「チビリンピック」が持つ意義 全国のライバルと、可視化された形での切磋琢磨を

竹田聡一郎

「大人びたカーリング」を実現して優勝

優勝した軽井沢ジュニアと平田洸介 【著者撮影】

 12月25日に横浜市の横浜銀行アイスアリーナで「JA全農チビリンピック2022」が開催され、名寄、青森、盛岡、富山、東京、山梨、軽井沢、京都東京千葉連合という8チームが全国から集い、熱戦を繰り広げた。

 シートは通常の約半分である18メートルで、4エンドゲームだったがそのぶん石が溜まる展開となり、劇的な試合が多かった。チーム青森キッズと軽井沢ジュニアの決勝も込み入ったハウスの状況を生み、一投ごとに戦局が動く好ゲームに観客は沸いた。

 優勝した軽井沢ジュニアの特別コーチに就いた平田洸介(KiT CURLING CLUB)が、「軽井沢育ちの子だからベースの技術が高い」と評したように、軽井沢ジュニアは堅実な好ショットを重ねた。スキップ・塚本翔太の状況判断は早く、高橋宮莉のラインコールは適切で、中澤蓮と樋泉海のスイーパーコンビは力強く、常に優位な盤面を作り、加点していく。

「アイスの曲がるところ曲がらないところをショットごとにしっかり確認していた。エンド間も『次のエンドはガードから入ろう』といったゲームプランをしっか共有していて、いいコミュニケーションが取れていたのが勝因だと思います。大人びた素晴らしいカーリングでした」(平田)

 対するチーム青森キッズは序盤から点を失いながらも、チーム内で声をかけ合いながら前向きに戦った。

「点差はあったけれど最後まで諦めず、4エンド目にいちばんいいカーリングができたのがこのチームの強さだと思います」とは特別コーチの近江谷杏菜(フォルティウス)だ。7点差をつけられてもなお、最終エンドのラストロックをチームショットとして運べたという体験は間違い無く今後につながるだろう。

 近江谷はチームの印象について、「もう既にいいチームですけれど」と前置きした上で「いつもと違うリンクで1試合ごとに違う曲がり、違う滑りのアイスで試合ができたことはいい経験になったはず。これからもどんどん色々な場所でたくさんの相手とカーリングするともっと良くなるはずです」と若いチームにエールを送った。

小中高一貫で風通しの良い強化を

準優勝のチーム青森キッズは常にポジティブにカーリングを楽しんでいた 【著者撮影】

 この「JA全農チビリンピック2022」は今年で4回目を数える。「カーリングの発展と育成を目指し、かつ選手間の交流を図るとともに小学校カーラーの拡大につとめる」という主旨を掲げているが、全農は今季から小学生だけでなく今年8月の「第1回全農全日本中学生カーリング選手権大会」(新潟市・MGC三菱ガス化学アイスアリーナ)という中学生カテゴリーのサポートもはじめた。

 さらには来年2月9日に青森市のみちぎんドリームスタジアムで開幕する「第18回全国高等学校カーリング選手権大会」もスポンサードする予定だという。

 小中高一貫でのサポートが実現し、日本カーリング協会の貝森輝幸会長が「本当にありがたいこと。ここからまた世界で通用する選手やオリンピック選手が出てくることを期待している」と言えば、日本のエース・藤澤五月も今日、実際に指導したチームの選手に「日本選手権で待ってるからね」と声をかけた。

 全農という冠のもと小中高と徐々にステージが上がり、ジュニア選手権や日本選手権をからめていけば、全国のライバルと切磋琢磨しての育成が可視化されるだろう。選手、スポンサー、協会のそれぞれにメリットを生み続けていけるようなカーリング競技の良きパートナーとして永く伴走することを願う。
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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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