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栃木GBに元MLB・NPB選手が集まる理由 独立Lの“先”を見据える球団の野心

中島大輔
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川崎、西岡、成瀬が所属する北関東の独立リーグ球団

今年は川崎宗則(写真左)が加入した栃木GB。西岡、成瀬、北方らも所属するなど、他の独立リーグ球団と一線を画す 【写真は共同】

 茨城県結城市にある無人駅のJR東結城駅で下車し、緑美しい田園風景の道を30分ほど北へ歩いていくと、2017年限りで廃校となった旧小山市立梁小学校に到着する。現在は小山ベースボールビレッジとして生まれ変わり、校庭を活用したグラウンドや、体育館を改装した雨天練習場、多くのトレーニング器具も備える練習施設として活用されている。

「こういう練習環境は(独立リーグの)他の球団にはないものですね」

 そう胸を張るのが、栃木ゴールデンブレーブス(栃木GB)の江部達也社長だ。2017年からBCリーグに参入し、2019年にはリーグ最多の観客動員約6万人を記録した。

 来場者が1試合平均595人のBCリーグにあって、栃木はトップの1,409人(いずれも2019年)。観客を惹きつける原動力の一つが、NPBで活躍した名選手たちだ。2018年には元巨人の村田修一(現・巨人二軍野手総合コーチ)がプレーし、19年に西岡剛、今年も川崎宗則、と元メジャーリーガーが加入した。千葉ロッテのエースだった成瀬善久や、中日で二桁勝利を飾ったことがある若松駿太も所属し、ドジャース傘下マイナーに籍を置いている北方悠誠も今季途中から特例で契約した。

 なぜ、独立リーグの中で栃木GBにばかりビッグプレーヤーが集まるのか。リーグ規定で年俸上限は決まっているにもかかわらず、だ。

「我々は環境と人脈で、選ばれる根拠をつくっています。そうでないと、メジャー級の選手に選ばれる理由がないですよね」

 2016年11月に株式会社栃木県民球団を設立した江部社長はそう語るように、BCリーグの“先”を見据えている。

「正直、独立リーグに参加したくて県民球団を設立したわけではありません。地域で一つになり、地元に貢献しながら子どもたちも含めたスポーツ振興の場をつくり、NPBに選手をどんどん輩出していく。そういうリーグの理念に賛同させていただきスタートしました」
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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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