連載:私たちが現役を諦めない理由

西岡剛の反骨「バカにされる方が面白い」 当たり前の選択だったトライアウト再受験

小西亮
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NPB復帰、そして大きな目標に向かって、西岡剛の闘志は衰えを見せない 【高須力】

 空が高い秋晴れの下で、今日もひとり黙々と走る。決してきらびやかではない新天地での1年目が終わった。2018年限りで阪神を戦力外となり、独立リーグ・BCリーグの栃木ゴールデンブレーブスに加入した西岡剛。今シーズン中のNPB返り咲きはかなわなかったが、35歳の心身にはまだ「引退」の2文字はしっくりきていない。

 メジャーまで経験した男の「プロ野球12球団合同トライアウト」再受験に、周囲からは驚きの声もある。だが、NPB復帰は単なる目標ではなく、自らを成長させていく手段のひとつ。とことん納得いくまで我が道を行く姿は、人間臭くもあり、まぶしい。11月12日、大阪シティ信用金庫スタジアム。「楽しみでしゃーない」と胸躍らす舞台に立つ。

「自分のために」の行動が若手に与えた影響

球団創設初のリーグ優勝に輝いたチームの中で、見事にその存在感を誇示した 【(C)TOCHIGI GOLDEN BRAVES/photo by:高村渉】

――栃木でのシーズンが終わり、チームとしてはBCリーグ初優勝という結果を残しました。

 僕がいる間に、何か足跡を残したいとは思っていたので、結果として表れたのは良かった。優勝したことで取材も増えるだろうし、町の人ももっと応援してくれると思う。チームは、これを来年、再来年と続けていかないといけない。選手にプレッシャーや緊張感を与えてくれるのは、ファンの皆さんなんです。4万人の前でやる野球と、400人の前でやる野球では、全然違ってくる。そこをもっと選手も球団も考えていかないといけないですよね。

――個人としては59試合に出場し、打率.335、7本塁打、7盗塁。成績もさることながら、プレーする背中を若手は見てきたと思います。

 僕の行動がチームにどう影響したかは分かりません。自分の考え方なんですが、「組織のために」と思ってやるより、「自分のために」と思って行動して結果を残していく方が、最終的には組織のためになると思う。もちろん、若手から話を聞いてきたらバッティングのことは教えましたし、それで打てるようになったと何人かには言ってもらいました。ただ、教えてもらったときって案外すぐ結果は出るんですよ。大事なのは、また打てなくなったときにどうするか。諦めずに継続するというのが難しい。スタートを切るのも、やめるのも簡単ですから。僕だって「今日野球やめます」って言うことはできるし。

――その「継続」の難しさを知っているご自身が、栃木で貫いてきたことはありますか?

 朝のランニングですね。チームのウオーミングアップの時間帯って、ちょっとテンションが上がらないときがあるので、少しでもテンションを上げて練習に入らないといけない。そのために、練習前に汗を流して脳を覚ます作業が大事なんですが、選手同士でしゃべったり、ストレッチをやっているふうな選手がいたり。若いから大きいケガをしたことがないかもしれないし、あまり重要性を分かっていないのかな。ただ、僕が練習前に走っているのは全選手が知っていて、同じように走る選手も出てきました。それが与えた影響なのかな?
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