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「有観客」の難しいオペレーション
新しいスタジアム観戦、楽天の思いに迫る

不自由な観戦の中で球団が提供できること

7月15日、楽天生命パークで初の有観客が行われた。雨の中、来場した多数のファンは最後まで試合を見届けていた
7月15日、楽天生命パークで初の有観客が行われた。雨の中、来場した多数のファンは最後まで試合を見届けていた【写真は共同】

 梅雨前線が日本列島に大粒の雨を降らせた7月15日、仙台の楽天生命パーク宮城では今季初の有観客試合が開催された。


 待ちに待った野球観戦に訪れたのは、2320人――。


 政府が指針として打ち出した5000人という上限の半分にも満たなかったが、スタジアムを訪れたファンの多くは、雨のなかで最後まで試合を見届けた。


 無事にオペレーションを終えた楽天野球団の大石幸潔・事業本部長は翌日、次のステップに目を向けた。


「本当にありがたいなと感じました。今はどうしても不自由の中で観戦をお願いしている状況があります。そんななか、我々が何を提供すれば皆様に満足していただけるのか。その答えが今あるわけではなく、これから考えていかなければと改めて思いました」


 この日、スタジアムを訪れなかった観客が2320人だったのは理由がある。そもそもチケットを2500枚しか販売しなかったからだ。


「今、混雑した場所は感染のリスクがあり、人混みに行きたくないと考えている方が多いと思います。一人のお客様がスタジアムにいらっしゃって野球観戦をして帰っていくまでに、人混みで心配になるような体験をしないことを我々は担保しなければいけません」


 スタジアムのなかで密をつくらないように対策し、日々の興行を無事にやり遂げる。安全や安心を最優先するため、楽天野球団は有観客初日に2500枚しかチケットを売らなかった。以降は状況を見ながら、試合ごとに販売枚数を変えていくという。


「我々が今やらなければいけないのは、スタジアムの野球観戦は安全なんだと担保して、皆様に『安心していらっしゃってください』とお伝えすることです。そうすることで入場人数が5000人、1万人、1万5000人と増えていけば、かつてのように満員のスタジアムでお客様をお迎えできる日がその延長線上にやってくるのではという考え方をしています」

安全の担保とリモート施策の先に…

無観客試合の期間中に実施したライブビューイングでは、感染予防に考慮して実施。今後も、限られた観客動員が予想されるなか、リモートでの施策も検討していくという
無観客試合の期間中に実施したライブビューイングでは、感染予防に考慮して実施。今後も、限られた観客動員が予想されるなか、リモートでの施策も検討していくという【写真は共同】

 楽天生命パーク宮城では開門時間を通常より1時間早い試合開始3時間前に設定し、分散して入場してもらう工夫をしている。スタジアムでは入退場の際だけでなく、約400カ所でアルコール除菌をできる環境を整えた。試合後は座席ごとに規制退場してもらい、スタジアムの外でも密集が起こらないように気を配っている。


「スタジアムの中で密なシチュエーションをつくらないようにしていますが、家から来て家に戻るまで、我々の敷地外のことも含めてお客様に安心を感じてほしいと思っています」

「お客様に安心を感じてほしい」と話す大石・事業本部長。安全を最優先しながらの運営を続けている
「お客様に安心を感じてほしい」と話す大石・事業本部長。安全を最優先しながらの運営を続けている【スポーツナビ】

 スタジアムでは大声での応援やジェット風船を自粛してもらい、たとえファウルボールが飛んできても座席から離れて追いかけるのは控えてもらう。昨季までと大きく環境が変わるなか、球団として何を提供できるか。


 その一つがリモートでの施策だ。無観客試合の期間中、ウェブ会議ツール「Zoom」を使ってスタジアムにファンの声援を届ける企画や、レフト側後方にある「スマイルグリコパーク」で感染予防に考慮しながらライブビューイングを実施した。さらに観客席では選手の名前が書かれた「MyHEROタオル」の掲出を行った。7月15日から有観客試合となったが、スタジアム内でかつてのような応援をできない分、リモートでの施策は今後も続けていきたいと考えている。


「我々にも、楽しいエンターテインメントを提供したい思いは当然あります。でも、今はスタジアムで野球観戦することの不安を和らげることが、今後につながっていくと考えています」


 一時は落ち着いた新型コロナウイルスの感染拡大だが、7月に入って増加傾向にある。各球団は有観客試合で難しいオペレーションを迫られるなか、安全最優先でさまざまな決断をしていかなければならない。


 それがいつか、スタジアムににぎわいが戻る日への第一歩となるはずだ。

中島大輔

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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