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元審判員・中村稔氏が選ぶベストナイン
真のスターは「審判に文句を言いません!」

 スポーツナビでは2月17日〜29日にかけて、「ファンが選ぶ!プロ野球・球団別ベストナイン」企画を行い、多くのファンに投票していただきました。ファン投票で上位に選ばれたスター選手たちを「マスク越し」で見てきた元審判員が選ぶベストナインとは? NPBで通算2876試合マスクをかぶり、現在は東北楽天ゴールデンイーグルス泉犬鷲寮の寮長を務める中村稔氏に、審判目線でパ・リーグの名選手たちとのエピソードを語ってもらいました。

千葉ロッテ優勝バッテリーとのちょっといい話

中村氏が審判目線でベストナインに選んだ、渡辺俊介&里崎の千葉ロッテバッテリー
中村氏が審判目線でベストナインに選んだ、渡辺俊介&里崎の千葉ロッテバッテリー【写真は共同】

――中村さんが元審判員としての目で選ぶパ・リーグベストナイン、まずはピッチャーからお願いします。


 いいピッチャーはたくさんいますよ。ダルビッシュ有(元北海道日本ハム、現カブス)、伊良部秀輝(元千葉ロッテほか)、野茂英雄(元近鉄ほか)……。でも、僕がプロ野球の審判をやって実際に見た中で一番素晴らしいと思ったのは、元ロッテの渡辺俊介ですね。


――完璧なアンダースローで、マリーンズファンには『人間国宝』と呼ばれていましたね。何が最も素晴らしいですか?


 コントロールも良いのですが、それ以前にやはり彼の投げ方ですね。地面スレスレからボールが出てくる、あのアンダースローの投球フォームは、今では誰もマネできないでしょう。僕ら審判員として、「彼が投げる瞬間にボールが地面に付いたら、どうするか」話し合ったんですよ。真っすぐやカーブのときは指が地面に擦れるんだけど、シンカーを投げるときはその逆で、ボールが地面に当たってしまう。それは「正規の投球として認めよう」ということになりました。


 彼がアンダースローの中で、歴代ナンバーワンのコントロールを持っていることは間違いありあせん。右の、普通の投球動作ならコントロールの良いピッチャーは何人もいるんですよ。しかし、あの変則的な投球フォームで、あれほど素晴らしい活躍をした渡辺俊介を、僕はベストナインに推したいですね。


――渡辺投手とのエピソードはありますか?


 いくつもありますよ。彼が千葉マリンの楽天イーグルス戦(2006年4月29日)で、6回までノーヒットノーランをしていたんです。ところが7回表、先頭の鉄平に対して投げた球速125キロくらいの真っすぐがインコースに来て、鉄平の頭に当たってしまった。鉄平は幸いなんともなかったんですが、ルール上、渡辺は「危険球」で退場です。そのとき退場を宣告した球審が、僕でした。


 もう一つは、僕自身の2000試合出場の日。その日、僕が球審を務めて、渡辺俊介が勝ち投手になったんです。試合終了後、僕のところに「これ、記念に取っといてください」と言って、勝利球を持ってきてくれました。彼はとてつもない記録を残したわけではないけれども、いろいろな意味で記憶に残るピッチャーです。

――では、キャッチャーはいかがでしょう。


 難しいですね。城島(健司=元福岡ダイエーほか)もいるし、梨田(昌孝=元近鉄)さん、有田(修三=元近鉄ほか)さんもいるし。でもキャッチャーとしてのバランスで言ったら、里崎智也(元ロッテ)ですね。


――それはピッチャーに渡辺俊介投手を選んだからですか?


 そうでなく審判員の目線で、ですね。伊東(勤=元西武)さんなんかも数字的には素晴らしいんだけど、里崎は人間性とかいろんなものを含めて、僕ら審判とお互い助け合いましたから。


――やはりキャッチャーは審判とうまくやっていくのが仕事のうち、と。


 そうですね。でも城島はそういうところがなくて、「俺が、俺が」というタイプだった。だから審判的な目線で言うと、ベストナインに入るイメージはあまり持っていないんです。まあ梨田さん、袴田(英利=元ロッテ)さんなんかもいい人でしたね。

埼玉西武・辻監督は実はバントが苦手だった?

現西武監督の辻は現役時代、バントが苦手だったという。中村氏はその理由を明かした
現西武監督の辻は現役時代、バントが苦手だったという。中村氏はその理由を明かした【写真は共同】

――ファーストはたくさん候補がいそうですね。


 僕の中では落合(博満=元ロッテほか)さんに清原(和博=元西武ほか)、ブーマー(元阪急)といったところですね。でも、やっぱり一人選ぶなら清原かな。数字的にも素晴らしいバッターだし、ファンを魅了しましたからね。


――セカンドは何を基準に選ぶかで変わってきそうです。


 いい選手はたくさんいたけど、辻(発彦=元西武ほか)さんですね。


 辻さん、攻守において素晴らしい選手でしたが、送りバントはヘタだった。なぜかというと、辻さんは右腕が猿手(※手のひらを上に向けて腕を前に伸ばしたとき、ヒジの関節が極端に外側に曲がる)なんです。送りバントをするとき、右ひじが開いてしまうので難しい。でもセーフティーバントはうまかったから、送りバントの代わりにセーフティーをしていました。意外と知られていない話ですよ。

――そうだったんですね。サードはバッティング重視でいきますか?


 サードもたくさんいるけど、松永(浩美=元阪急ほか)さんでしょう。スイッチヒッターで、ホームランも30本くらい打つ。いいバッターでしたね。


――ショートはどうでしょう?


 石毛(宏典=元西武ほか)さん、金子誠(元日本ハム)……。石毛さんは最後のほう、サードを守っていましたけどね。ベストナインだったら、今埼玉西武の二軍監督をしている松井稼頭央を推しますね。


 選手としての能力だけでなく、野球界の中でも十指に入る、素晴らしい人間です。爽やかで、人間性も優れている。彼が審判に文句を言っているところを、僕は一度も見たことがないです。ワンバウンドをストライクと言うようなコールをしてしまっても、一切文句を言わない。彼と稲葉(篤紀=元日本ハムほか)はそうですね。松井稼のような選手には、ずっと野球界にいてほしいと思います。

前田恵

1963年、兵庫県神戸市生まれ。上智大学在学中の85、86年、川崎球場でグラウンドガールを務める。卒業後、ベースボール・マガジン社で野球誌編集記者。91年シーズン限りで退社し、フリーライターに。野球、サッカーなど各種スポーツのほか、旅行、教育、犬関係も執筆。著書に『母たちのプロ野球』(中央公論新社)、『野球酒場』(ベースボール・マガジン社)ほか。編集協力に野村克也著『野村克也からの手紙』(ベースボール・マガジン社)ほか。豪州プロ野球リーグABLの取材歴は20年を超え、昨季よりABL公認でABL Japan公式サイト(http://abl-japan.com)を運営中。

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