東海大仰星が徹底した「オールアウト」 “春の挫折”を乗り越え、涙の花園制覇
春に8強逃す「湯浅にもやっと試練が訪れたな」
春に苦しんだ東海大仰星だったが、花園では大阪桐蔭を破り、日本一に輝いた 【斉藤健仁】
1月8日、「花園」こと全国高校ラグビー大会の決勝が行われ、東海大仰星と大阪桐蔭が激突した。大阪勢同士の決勝戦は1998年度以来のことだったが、東海大仰星が27対20で逆転勝利し、2年ぶり5度目の優勝を飾った。
個人的には、今年度の花園はAシードの両校、ディフェンディングチャンピオンの東福岡か、春の王者・桐蔭学園が優勝すると予想していた。昨年度準優勝の東海大仰星は正直、厳しいのでは……と思っていた。
昨年3月の近畿大会では京都成章に敗れてベスト4に終わり、春の選抜大会では予選リーグで佐賀工に12対22と敗れて決勝トーナメントに進出することができなかった。
2013年度に、名将・土井崇司前監督の後を継いで就任した湯浅大智監督は、14年度の花園ベスト8以外は、選抜大会も花園もすべてベスト4以上に進出し、優勝3回、準優勝2回と順風満帆だったが、今年度の選抜は初めてベスト8にも入れない大会となった。
ほかの強豪校の監督から「策士」とも呼ばれている指揮官にとっては、初めての挫折で、いつもの笑顔がしかめ面となっていた。そんな姿を見て、ある監督は「湯浅にもやっと試練が訪れたな」とつぶやいた。
「自分らもできるやろという雰囲気があった」
「オールアウト」というチームスローガンを決めて、強化してきた湯浅監督(中央) 【斉藤健仁】
湯浅監督もそれを感じており、「3年生は1年時に花園優勝、2年時に準優勝したチームも見てきて、自分らもできるやろという雰囲気があった。能力はあるのに発揮できていなかった」と見抜き、新チームを発足してすぐに、監督自らチームスローガンを「オールアウト(すべてを出し切る)」と決めた。
湯浅監督が就任して以来、新しい代になると3年生たちが選手たちだけのミーティングを重ね、1年間、クラブの指針となるクラブスローガンも決める。今年度は「支えてくれた人の思いを背負って、情熱あふれるチームになって、誰もが認める日本一」だった。
ただ監督は「情熱が出てこなくて、支えている思いも背負えてなくて、自分のことばっかりやっていたし、ポテンシャルのある子たちだったが出し切れていなかった」と感じていた。
また外的要因もあった。サッカー部と共用のグラウンドが人工芝化され、改修工事期間中はグラウンドを使うことができず、近くの小中学校のグラウンドを借りて練習しなければいけなかった。
普段のグラウンドで4カ月間、練習をできないハンデを乗り越え、東海大仰星は花園予選で、湯浅監督の高校、大学の同期・梶村真也監督が率いる関大北陽を38対5で破り、5年連続18回目の花園への切符を得た。
秋田工戦は引き分け「拾った命だった」
1年生ながらFBとして活躍した谷口宜顕 【斉藤健仁】
試合終了間際、WTB河瀬のトライセービングタックルもあったが、ハイタックルと判定されており、ペナルティートライをとられ、負けていてもおかしくなかった。
「拾った命だった」、「全国大会で成長した」(湯浅監督)という東海大仰星は、ここから一段、ギアが上がる。準々決勝では、FWとBK一体となった攻めを見せ、報徳学園を50対20と一蹴。準決勝では昨年度の決勝で負けたAシード・東福岡と対戦した。