大谷翔平、今季第1号の余韻が残る試合後の東京ドーム 「次回はあるのか?」ドジャース選手たちは早くも期待

丹羽政善

試合終了後、記念撮影をする日本人選手たち 【写真は共同】

宴が終わった東京ドームにて

 大谷翔平と山本由伸が、それぞれ1人で現れ、足早にバスに向かった。その後も、1人、また1人と、選手、スタッフがクラブハウスを出て、廊下の先にあるバス乗り場へ向かう。

 同じ場所では6年前、深夜2時半過ぎまで、イチロー(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)を待った。試合が終わってからイチローが引退会見。1時過ぎに終わった後、三塁側のクラブハウス前にイチローを担当していた記者が自然と集まり、別れを告げた。その数週間後には、また、ユニホーム姿のイチローの姿を見ることになるのだが――。

 そんなことを思い出しながら、去っていく人たちに挨拶をしたが、人の波が切れたタイミングで記者席へ上がった。すると、グラウンドにはドジャース、カブスの荷物を空港まで運ぶ大型トラックのほか、きれいに磨き上げられた黒塗りのリムジンがダグアウト前に横付けされていた。ロブ・マンフレッドコミッショナーらを乗せ、空港へ向かうのだろうか。

 記者席からも、1人、また1人と去っていく。清掃の人たちが、客席のゴミ拾いを始め、仮設席の撤去も始まった。そうして、宴が終わったのである。

 いいイベントだったといえるのではないか。19日午前、雪の中をアンソニー・バンダとともに、とある場所へ向かった。タクシーの車内でいろんな話をしたが、「もう、すべて目的を遂げた」と満足そうだった。

「他の選手も話していた。韓国のときよりも、いろんな意味で充実していたと。自分は韓国へ行っていないので比較できないけど、家族も大満足だった」

 彼とは14日に、ポケモン本社、ポケモンセンター、ポケモンカフェを一緒に訪れた。彼からその夜、「いま、タナー・スコット、ブレーク・スネルと飲んでいる。彼らが明日、任天堂の本社に行けないか? と言っているが、可能性はあるか?」と連絡が来て驚いたが、「本社は京都だし、そもそも明日は土曜日だ」と伝えると、あっさり諦めた。

「次回、お願いします」

 次回はあるのか?

圧巻だった大谷翔平の今季第1号

今季初本塁打を放ち、打球を見つめる大谷翔平 【写真は共同】

 シリーズは、連勝という最高の形で締めくくったが、大谷が本塁打を放ち、勝利に花を添えた。その第1号は、ちょっとした巡り合わせで、投球分析家のピッチングニンジャ、ベイスターズのアンドレ・ジャクソン、元ベイスターズの多村仁志さんと見ることになった。ジャクソンとピッチングニンジャに親交があり、ジャクソンが東京ドームに来ていたことから、紹介すると誘われ、隣に座っていた多村さんと一緒に記者席上のコンコースへ向かったのである。

 そこで、テレビ中継を見ながらいろんな話をしたが、大谷が打席に入ったところで、4人とも無口になって、自然とモニターに見入った。

 すると2−2からの5球目――99.1マイルの真っ直ぐに大谷は角度をつけた。

 実は2−2になったとき、ジャクソンに何を投げる? と聞いた。すると、「(マウンドのネート・)ピアソンは、100マイルの真っ直ぐを投げられるから、パワーで押してもいいんじゃないか?」とのこと。ピッチングニンジャも同意した。

 それが聞こえたかのようにピアソンは、99.1マイルの4シームを真ん中低めに投げ込んだものの、大谷がそれを捉えた。圧巻だった。

 もっとも、やや先っぽ。よって大谷も打った瞬間、確信というより、“届くのか”という表情になっている。

「入るかと思ったんですけど、少し微妙な感じになってしまった」

 実際、ボールはフェンス際を転々。フェンス上部に当たったのか、ファンが取り損ねて、落ちたのか。審判は本塁打と判定したが、クレイグ・カウンセル監督はすかさずチャレンジ。しかしリプレイは、ファンの捕り損ねた打球がグラウンドに落下する様子を映し出していた。

 がっかりしたのはむしろ、カブスより、あのファンか。千載一遇のチャンスを逃したのである。

 七回は2死二塁で打席に入ったが、カブスは敬遠を選択。最後の打席になるかもしれなかったことから、客席からはブーイングが。それだけに九回、1死からミゲル・ロハスが四球を選び、ダブルプレーにならない限り大谷に打席が回ってくるという状況になると、歓声が沸いた。ところが、その最後の打席も歩かされ、再びファンのため息を誘っている。

 最後、走者を2人許しながらも、試合を締めくくったのはアレックス・べシア。その彼に試合が終わってから、ジャクソンと撮影した写真を見せた。すると、一瞬で破顔した。
「俺の親友じゃないか!」

 そう、ジャクソンとべシアは、日本的な表現をするなら、ドジャースのマイナー時代に同じ釜の飯を食った仲。2人は17日にも夕食を共にし、べシアが19日のチケットを用意した。そのことは、ジャクソンから聞いていた。

 一緒に大谷の本塁打を見ていたこと。翌日、また会うことを伝えると、「今回は、彼にも会えたし、いい旅だった」と、べシアはしみじみ語った。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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