現地記者の日本人選手ラ・リーガ奮戦記(月2回更新)

久保も強いられる“地獄のスケジュール”の実態 マジョルカの指揮官がベタ褒めした浅野のハイパフォーマンス

山本美智子

日本列島縦断よりも長距離を移動

2月のソシエダは、中旬の段階ですでに5試合を消化。“地獄のスケジュール”を強いられる中で、主力の久保も適宜休養を与えられている 【Photo by Jose Luis Contreras/Dax Images/NurPhoto via Getty Images】

 2月のソシエダを例に取れば、ラ・リーガ第22節のオサスナ戦(アウェー/遠征距離61㎞)、スペイン国王杯準々決勝のオサスナ戦(ホーム)、ラ・リーガ第23節のエスパニョール戦(ホーム)、ELプレーオフのミッティラン戦(アウェー/同2,300㎞)、そしてラ・リーガ第24節のベティス戦(アウェー/同916㎞)と、まだ月の半ばにしてすでに5試合をこなしている。

 その遠征距離は日本列島を縦断(およそ3,000㎞)するよりも長い。しかもソシエダは、他の月より日数が少ない2月にもかかわらず、まだ3試合を残しているのだ。

 救いは、そのすべてがホームゲームであることだが、とはいえ2月20日にELプレーオフの第2レグ、23日にラ・リーガのレガネス戦、26日に国王杯準決勝のR・マドリー戦と続く強行軍で、さらに3月1日にはアウェーで首位バルサとの一戦(ラ・リーガ第26節)も控えている。

 現在、久保はラ・リーガでのイエローカードの累積が4枚で、出場停止にリーチがかかった状態。おそらくまたどこかで休養を与えられることになるだろうが、それにしてもこのスケジュールの中で体調を維持し、結果を出していくのは並大抵のことではない。

 昨シーズンのラ・リーガで負傷した選手の数は、前年から32パーセントも増加している。それはどこの国のリーグも似たようなものだろうし、代表戦で負傷して帰ってくる選手も後を絶たない。こうした状況を受けて、国際プロサッカー選手会(FIFPRO)のダビッド・アガンソ会長はFIFAとUEFAに対して警笛を鳴らしているが、改善への妥協点はいまだ見いだせていないのが実情だ。

スタメン定着が見えてきた浅野

ラス・パルマス戦で怪我から復帰後2度目の先発を果たした浅野が躍動感あふれるプレーを披露し、勝利に貢献。好調マジョルカのラストピースとなるか 【Photo by Rafa Babot/Getty Images】

 さて、こうして過酷なスケジュールに選手たちが苦しむ中で、ようやく故障の癒えたマジョルカの浅野が、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。

 スペイン上陸1年目の今シーズンは膝やハムストリングの故障で、前半戦の大半を欠場することになった浅野だが、昨年12月のセルタ戦で戦列復帰。徐々にプレータイムを伸ばすと、スタメン出場した2月16日のラス・パルマス戦(ラ・リーガ第24節)で、ハゴバ・アラサテ監督がベンチから拍手を送るほどの活躍を披露したのだ。

 ゴールにこそ絡まなかったが、献身的なフリーランでスペースを生み出し、ラインを押し上げ、トリッキーな股抜きから突破を図り、そして豪快なオーバーヘッドシュートを放つなど、その躍動感あふれるアクションに本拠地ソン・モイシュスタジアムは大いに沸いた。

 テレビ中継の実況席も、「今シーズン最高のパフォーマンス」「まさにカラテキッド!」とベタ褒め。3-1とリードした71分に交代をする時も、「浅野にスタンドからの拍手を与えるためでしょう」と、この日の陰のヒーローを称えている。

 多くのマジョルカ・サポーターが「今シーズンの残り試合のスタメンは決まった。やはりアサノを含めたサイドアタッカーを置いたほうが、エースの(ヴェダト・)ムリキも生きる」といった内容のコメントをSNSで発信していたが、それはアラサテ監督も同じ考えのようだ。試合後の記者会見では、浅野に対して賛辞のかぎりを尽くしている。

「結局は、タクを手にしているとき、我々はより大きな脅威を手にすることになる。これまではムリキの近くにそういった脅威が欠けていた。(今日の試合では)何よりもあの鋭いスプリントやマークを外す動きが良かったし、そういうタクがいることで、他の選手もより活きてくる」

「タクはチームが必要としている選手。(怪我から復帰後は)試合ごとに良くなっているし、これこそ私たちが見たいタクだ」

 ソシエダとは異なり、欧州カップ戦の負担がなく、すでに国王杯も3回戦で敗退しているマジョルカには、リーグ戦一本に集中できるメリットがある。現在の7位というポジションを最後まで維持できれば、来シーズンの欧州カップ戦出場はほぼ確実。ELはもちろん、出場枠拡大となればCL出場権も狙えるだろう。そのためにも、浅野の力が必要だ。スタメンに定着しそうな勢いのジャガーが、マジョルカのラストスパートをけん引する。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

スペイン在住は四半世紀超え。1998年から通信員として情報発信を始め、スペインサッカーに関する取材、執筆、翻訳の仕事に従事してきた。2002年と06年のW杯、04年と08年のEUROなど国際大会も現地で取材。12年からFCバルセロナの公式サイト、ソーシャルメディアを担当する

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