遠藤、三笘、久保が代表ウイーク前に味わった失望 ブライトンは王者マンチェスター・Cに勝てていた
リバプールの敗因は「安堵感」
特にリバプールは、火曜日にPK戦の末にCLで敗退すると、日曜日のリーグ杯決勝でも負けて、一時は史上初の4冠の可能性もあった今季の躍進が一気に萎んでしまった。
とはいえ、リーグ杯決勝直後の会見でアルネ・スロット監督が「リーグは(2位アーセナルと)12ポイント差で、これはポジティブに受け止めている」と語って、立て続けに2つのタイトルの可能性がついえたショックを和らげようとしたように、悲願のリーグ優勝がほぼ確実になっていることは大きな救いである。ただ皮肉にも、宿敵マンチェスター・ユナイテッドと並ぶ20回目のイングランド王座が確定的になったことが、カップ戦連続敗退の最大の原因だとも言える。
まずCLは、ラウンド・オブ16でパリ・サンジェルマン(PSG)と対戦した。この組み合わせ自体が、今季から大会のフォーマットが変わったがゆえの不運だった。
4チームによるホーム&アウェー戦だった従来のグループステージの代わりに、今季から36チームが各8試合を戦うリーグフェーズが導入された。リバプールはこのラウンドで圧倒的な強さを見せて、36チーム中トップでベスト16入りを決めた。ところが、決勝トーナメント進出を争うプレーオフの組み合わせが影響し、ラウンド・オブ16の時点でフランス最強のPSGと対戦することになった。
PSGは今季、キリアン・エムバペがレアル・マドリーに去って弱体化がささやかれたが、逆に大エースが移籍したことで1つにまとまり、スピーディーな連係プレーを見せるチームになっていた。
第1レグはアウェーでリバプールが1-0で辛勝したが、GKアリソン・ベッカーが奇跡的な好セーブを連発したラッキーな勝利だった。
そして迎えた第2レグ。スロット監督は「私が監督をしたなかでも最高の試合」と言ったが、それも終始攻勢だった第1レグの敗戦の悔しさもバネとして、フィットネスがハイレベルのPSGが非常にインテンシティの高いパフォーマンスを見せたからだ。そして前半12分にPSGがゴールを決め、リバプールが第1レグで奪ったリードがなくなった。
もちろん、リバプールも全力を尽くした。トレント・アレクサンダー=アーノルドのシュートがポストを叩き、ドミニク・ソボスライのゴールが味方のオフサイドで取り消されるなど、ゴールに近づいたシーンもあった。しかし結局、延長戦を含めた120分をゼロで終えた。
そうやってもつれ込んだPK戦で、3カ月後に33歳になるモハメド・サラーが第1キッカーとなり、本当に120分を走り切った後なのかと思うほどすさまじいPKを決めた。しかし、続くダルウィン・ヌニェスとカーティス・ジョーンズが連続で失敗。一方、アウェーのアンフィールドで強靭なメンタルを見せたPSGが4人目まで完璧なPKを決めて、リバプールを完全に凌駕(りょうが)した形でベスト8進出を果たした。
しかし繰り返しになるが、リバプールにとってこの結果は、リーグ戦でアーセナルが勝ち点を落とし続けるなか、2月23日に行われたマンチェスター・シティとのアウェー戦で2-0と完勝して、プレミアリーグ制覇が見えたことが大きいのではないだろうか。一番欲しいタイトルをほぼ手中にした安堵(あんど)感から、選手たちが疲れを強く感じ、他のトロフィーへの野心が薄れてしまったように思うのだ。
前半のパフォーマンスは今季最も貧弱だった
前半の45分間、リバプールは全く押し上げることができなかった。シュートはディオゴ・ジョッタがアディショナルタイムに放った1本だけ。それも前半45分にニューカッスルの198センチのセンターバック、ダン・バーンが、まさに闘魂と言うべきヘディングシュートをコーナーキックに合わせて先制点を奪われ、その帳尻合わせのように慌てて攻め込んでのフィニッシュだった。
後半になってもリバプールのギアはたいして上がらなかった。逆にニューカッスルはエースのアレクサンデル・イサクが素晴らしい集中力で難度の高いボレーを叩き込み、2-0とした。するとリバプールはちぐはぐなプレーが増え、選手たちがボールを失うたびに下を向くようになった。
スロット監督は追撃するため、ジョーンズ、ヌニェス、コーディー・ガクポ、ハーヴェイ・エリオット、フェデリコ・キエーザと攻撃的な選手を次々と投入した。しかし2点差を跳ね返そうという強いやる気を見せたのは、エリオットとキエーザの2選手だけだった。後半アディショナルタイム4分にエリオットのスルーパスに抜け出したキエーザがゴールを決めたが、リバプールの反撃はここまでだった。
けれども、ニューカッスルの70年ぶりの国内タイトル獲得は感動的だった。個人的にはアンフィールドに並ぶ熱狂があると思うニューカッスルのセントジェームス・パーク。すさまじいまでのフットボール愛があるその北東の街に、1954-55シーズンのFA杯優勝以来のトロフィーがもたらされた。
試合中のニューカッスルの選手の表情がまた素晴らしかった。終了時間が近づいていた後半37分、タフな中盤選手のジョエリントンがシュートを外して、なんとも言えない、いい笑顔を見せたのが印象的だった。それは“もう足が上がらない”という感じで苦しげだったリバプール・イレブンとは対照的に、フットボールが楽しくて仕方がないという表情だった。
後半アディショナルタイムに時間稼ぎのプレーがあったが、それも必死だからこそで、なぜか爽快感さえ感じた。それほど欲しいタイトルなら、ぜひ持ち帰ってくれという気持ちになった。
リバプールにとっては連覇がかかっていた。そのうえ、スロット体制下で記念すべき初トロフィーを勝ち取るという意義はあったが、70年ぶりの国内タイトルを目指すニューカッスルの気合いには到底及ばなかった。
クローザーの需要が全くない展開で、出場機会がなかった我らが遠藤航は、優勝を逃した試合後、「切り替えて、代表で頑張ります」とだけ言って、ミックスゾーンを通り過ぎた。