森保Jは「W杯優勝」を本気で目指しているぞ! 脈々と受け継がれるW杯の歴史と価値
日本のW杯出場は「当たり前」かもしれないが…
正解はたった6カ国。スペイン、ドイツ、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、そして韓国だけが8大会以上続けてW杯の舞台に立つ権利を得ていた。2018年のロシアW杯を制したフランスは自国開催だった1998年大会の前に2大会続けて出場権獲得を逃している。サッカーの母国イングランドも、1994年のアメリカ大会は予選敗退に終わっていた。
1998年のフランス大会で初めてW杯の舞台に立った日本代表は、来年の北中米W杯で8度目の本大会出場となる。3月20日に行われたFIFAワールドカップ26アジア最終予選・第7戦でバーレーン代表に勝利し、3試合を残す史上最速で8大会連続となる世界への切符を手にした。
どこであれ30年以上にわたって各大陸のトップクラスであり続けることは極めて難しい。次なる北中米W杯は出場国数がこれまでの32カ国から48カ国へと大幅に増えるが、世界一を決める場である「W杯」の価値に変わりはない。三笘薫も「歴史から見れば(W杯は)出て当たり前なところはあると思いますし、そこは全員が承知の上で戦っています。でも最終予選を戦いながら『やっぱり難しいな』というのは感じています。簡単に勝っているように見えていると思いますけど、自分たちは苦しんでいる中で勝ってきているので、そこは理解してほしいところもあります」と漏らしていた。
ただ、日本代表が「アジア予選なら突破して当たり前」というのはごく一般的な見方だろう。日本戦前日の記者会見におけるバーレーン代表のドラガン・タライッチ監督の「日本代表はW杯出場を決めたようなもの」という発言は、傍目から見た日本代表の現状を的確に表現していたように思う。
実際、多くの人々にとってW杯に出場している日本代表は「当たり前」に映っているのではないだろうか。特に30代前半よりも若い世代は物心ついたときからサムライブルーがW杯出場国に名を連ねているのを当然視してきたはずだ。かくいう筆者もJリーグ開幕後の生まれで「ドーハの悲劇」は日本サッカーの歴史の一部としてしか知らない。記憶にある最初のW杯は、小学2年生のときにテレビで見た2002年の日韓大会。日本代表がアジア予選すら突破できなかった頃の世界との距離感をどう表現すればいいかは分からない。
そんな中でW杯出場の価値をどう伝えていけばいいのかと考えていたとき、北中米大会まであと1勝となったバーレーン戦前日の記者会見で森保一監督の発言は非常に印象に残った。
「日本サッカーの歴史の継承、積み上げがあって、今は私自身が監督をさせていただいている。日本のサッカーの歴史の積み上げがあるからこそ、こうやってW杯に出続けられているということを強く感じているので、これまでの歴史の積み上げをしてくださった先輩、先人の方々の努力や次へのバトンタッチに感謝したいと思います」
W杯は「全サッカー選手の夢」だからこそ
菅原由勢の発言は特に心に響いた。彼が語った「僕が客観的に見たW杯」というのは、その舞台に立つことを目指す当事者ならではの思いとでも言おうか。
「日本人が考えるW杯優勝やW杯出場の価値というのは、ブラジルやアフリカでサッカーを始めた選手たちのW杯と考え方が違うと思っていて。僕らは比較的恵まれた環境で育って、サッカーするにあたって何不自由ない環境で、近くに行けば芝生の公園があって、コーチがいて、友達がいて、きれいなボールがある環境でサッカーができています。テレビでも試合を見られているわけですけど、視点を変えれば違う環境でサッカーをしている海外の選手たちがいる。
アスファルトしかないところで、ボールでないようなものをボールにしながらサッカーを始めた選手たちももちろんいる。そうやってスタート地点は違えど、結局みんなW杯に出場したい、W杯で優勝したいと口にするようになるのは、それだけW杯がサッカーをする全世界の選手たちにとって価値のあるものだから。
だからこそ日本代表は7大会連続でW杯に出られていると思います。出場できて当然だと思われて、それは今の日本代表として当然の見られ方だと思いますけど、W杯には(全世界の選手が目指す)それだけの価値がある。今までいろいろなことを成し遂げてきた(リオネル・)メッシがW杯にこだわっていたくらいだから、それだけの価値があるのだと。だからW杯というのは全サッカー選手の夢であり、大きなものだと思います」
これだけまっすぐにW杯への思いを語らずとも、菅原と同じような意識で世界に挑もうとしている選手の集団が今の日本代表だ。長友佑都を中心にW杯とは何たるかを骨の髄まで染み渡らせ、情熱を燃やしてきたからこそ8大会連続の出場権獲得を果たせた。そして、「全サッカー選手の夢」の先にある最高の景色を追い求めるようになった。