ソシエダも相次ぐ“VARスキャンダル”の犠牲に……怒りと無力感で体が震えるほどの酷さだ
本来VARではなく主審が判断すべき事項
その最たるものがVAR(ビデオアシスタントレフェリー)だ。このシステムがスペインに導入されてからすでに6年目を迎えているが、ラ・リーガに限らず、ヨーロッパ全体を見渡してもVARにまつわるスキャンダルが後を絶たない。
CLのラウンド16、アトレティコ・マドリー対レアル・マドリーの大一番では、“CL史上最もスキャンダラスなVAR判定”があった。
3月4日(現地時間、以下同)の第1レグはホームのR・マドリーが2-1で制し、迎えた12日のメトロポリターノでの第2レグはA・マドリーが1-0とリードして90分の戦いを終える。トータルスコア2-2で延長戦に突入するが、そこでも決着はつかず、勝敗はPK戦に委ねられた。だが、ここで事件が起きる。
後攻A・マドリーの2人目のキッカー、フリアン・アルバレスが決めたPKがVARによって取り消されたのだ。J・アルバレスが足を滑らせ、倒れ込みながらシュートを放った際に、軸足にもボールが触れていたというのがVARのジャッジだった。
結局この“失敗”が響いたA・マドリーはPK2-4で敗れ、準々決勝進出を逃している。当然納得がいかないA・マドリー側の要請に応じ、UEFA(欧州サッカー連盟)が証拠映像を提出したのは翌日。確かにボールが軸足に触れる瞬間がスローモーション映像にも残っていた。しかし、ここには2つの問題が内在する。
第一に、なぜこの映像をその場で提示できなかったのか。もし、J・アルバレスのPKの直後に提示されていれば、少なくともあの嫌な後味はなかっただろう。2つ目はもっと重大な問題、それは“2度蹴り”の解釈の問題だ。
IFBA(国際サッカー評議会)によって定められたPKに関する競技規則(第14条)によれば、2度蹴りに相当するのは「ボールが明らかに動いたとき」とある。しかし、映像を見てもJ・アルバレスの軸足に当たったボールは、ほとんど動いていない。A・マドリーのディエゴ・シメオネ監督も、試合後の記者会見でその点を指摘している。
UEFAは「わずかではあるが、蹴る前に軸足でボールに触れた」とVARの判断を正当化する一方で、「ダブルタッチが明らかに故意でない場合のルールを見直す必要があるかどうか、FIFAおよびIFBAと協議する」とも付け加えている。
これは明らかな矛盾だ。2度蹴り、ダブルタッチが許されないのは、意図的に押し込もうとした場合であり、今回のように故意ではなく、滑って触れてしまったケース、さらには大きくボールが動いていないケースに適用するかどうかは、本来VARではなく、経験をもとに主審が判断すべき事項のはずなのだ。
今シーズンから新フォーマットとなったCLで、A・マドリーはリーグフェーズを5位で突破し、ストレートでベスト16入りした。一方、11位通過のR・マドリーはプレーオフの戦いを経て何とかこのラウンドにたどり着いている。それだけに、なおさらA・マドリーにとっては悔しい敗戦だっただろう。試合後のロッカールームから、“Un puto gol! Un puto gol!”(忌々しいたったの1ゴール! 1ゴール!)という声が響き渡ってきた。まるで断末魔の叫びのように……。A・マドリーの運命は、VARによって大きく歪められてしまったのだ。
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VAR時代における最悪の盗難
第1レグをホームで1-1と引き分けたソシエダだったが、この日は10分にPKで先制するものの、16分、50分と相手に2本のPKを決められ、63分にはホン・アランブルが退場処分……。終了間際にさらに2失点し、1-4で敗れたのだが、とにかくこの日はゲームを裁いたブノワ・バスティアン主審のジャッジが不可解極まりなかった。
打ちひしがれたイマノル・アルグアシル監督が、試合後1時間が過ぎてようやく記者会見場に姿を現したのも、無理はない。いつもは穏やかなアルグアシル監督が、怒りに震える声で憤りをぶつけている。
「私たちはこのようなジャッジを受けるべきチームではない。私たちだけでなく、ユナイテッドも含めてだ。サポーターのことは、本当に気の毒に思う。(ジャッジのせいで)試合自体が壊されてしまった」
本来なら主審のジャッジを補うはずのVARが機能しなかったのが、このケースだ。
地元紙『Noticias de Guipzcoa(ノティシア・デ・ギプスコア)』紙は、「VAR時代における最悪の盗難」と表現したが、CLのマドリード・ダービーとは対照的に、この一戦では明らかにジャッジに誤りがあったにもかかわらず、VARが介入しなかった。
マンUに与えられた3回のPK(84分のPKは取消し)を振り返り、ソシエダのミケル・オヤルサバルは試合後にこう話している。
「主審はソシエダにPKを与えるまでに、(オンフィールドレビューで)1分半の時間をかけて検討したが、マンU側への3つは即決だった」
また、試合後にラジオ局『カデナ・セル』の番組に出演したアリツ・エルストンドは、取り消された3回目のPKについて、その経緯をこう説明した。
「アマリ(・トラオレ)に倒されたとされる(パトリック・)ドルグ自身が、主審に『違うから(PKを)取らないでくれ』と言ったんだ」
さらに、そのラジオ番組に出演していた元レフェリーのイトゥラルデ・ゴンサレスも、ソシエダがオールド・トラドフォードで“盗難”に遭ったとの見解を支持する。
「レフェリーの笛が結果に大きく関与した。ソシエダが1-0で勝っていた状況で、2回も正当ではないPKの笛を吹いたのだから」
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