栗山巧 独占手記「生涯つらぬく志」

新連載!栗山巧 独占手記「生涯つらぬく志」 プロ23年目で初めて抱いた感情を告白

栗山巧

手ごたえ、条件、すべてがハマった本塁打

8月31日、チームを救う代打逆転本塁打を放った栗山。2005年から20年連続本塁打となる一発だった 【写真は共同】

 翌日のホーム、日本ハム戦。先発の今井が頑張っていました。

 7回に先制を許しましたが、最少失点で粘っていた。出番が来る。僕はそう確信していました。

 バッティングの状態が上がっているという強い手ごたえが、この頃にはありました。そして、代打で結果が出る時というのは、試合の流れやチームの意図をきちんとつかんで「ここで呼ばれるだろう」というイメージがはっきりしていて、その通りに出番が来るものです。

 2つの条件がそろいました。8回裏2死三塁の場面で、出番が来た。

 相手が左投手に代わったのも、僕にとってはとてもいい流れでした。ここまで条件がそろったら、あとはバッティングの基本的なところに立ち返るだけ。

 タイミング、力感……。状況も含めて、初球にすべてがバチッとハマった。若干こすった感じにはなりましたが、巻き込むようにして、うまくライトスタンドまで運ぶことができました。



 ヒーローインタビューを前にして。僕は試合後のロッカールームで少しだけ悩みました。今季の自分の成績で、そしてこのチーム状況の中で、どんなことを話すべきなのか。

 でも、スタンドからの大歓声で呼びこまれて、腹が決まりました。とにかく「今日来てよかった」と思ってもらえるような話をしよう、と。
 あの感じでコメントしてよかったのか。今でも確信が持てているわけではありません。

 でも、本当にうれしかったです。皆さんが試合後も帰らずに、僕のヒーローインタビューを待っていてくださったこと。そして、コメントに大きな歓声を返してくださったこと。

 今年は、迷わずにヒーローインタビューに臨めるように。チームも僕自身も、昨季とは違う状況にできていればと強く思っています。

(構成:塩畑大輔、企画:スリーライト)

3/3ページ

著者プロフィール

1983年9月3日生まれ。兵庫県出身。背番号1。外野手。右投左打。177cm/85kg。プロ24年目。育英高から2001年ドラフト4巡目で西武に入団。2008年に自身初の規定打席に到達し最多安打(167安打)を獲得するなどチームの日本一に貢献。08年から9年連続でシーズン100安打以上を達成、12年から16年まではキャプテンを務めるなどチームの顔として活躍。稀代のヒットメーカーとして安打を積み重ね、21年に生え抜き選手では球団史上初となる通算2000安打を達成した。これまで獲得した主なタイトルは最多安打(08年)、ベストナイン(08、10、11、20年)、ゴールデン・グラブ賞(10年)。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント