新連載!栗山巧 独占手記「生涯つらぬく志」 プロ23年目で初めて抱いた感情を告白
手ごたえ、条件、すべてがハマった本塁打
8月31日、チームを救う代打逆転本塁打を放った栗山。2005年から20年連続本塁打となる一発だった 【写真は共同】
7回に先制を許しましたが、最少失点で粘っていた。出番が来る。僕はそう確信していました。
バッティングの状態が上がっているという強い手ごたえが、この頃にはありました。そして、代打で結果が出る時というのは、試合の流れやチームの意図をきちんとつかんで「ここで呼ばれるだろう」というイメージがはっきりしていて、その通りに出番が来るものです。
2つの条件がそろいました。8回裏2死三塁の場面で、出番が来た。
相手が左投手に代わったのも、僕にとってはとてもいい流れでした。ここまで条件がそろったら、あとはバッティングの基本的なところに立ち返るだけ。
タイミング、力感……。状況も含めて、初球にすべてがバチッとハマった。若干こすった感じにはなりましたが、巻き込むようにして、うまくライトスタンドまで運ぶことができました。
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ヒーローインタビューを前にして。僕は試合後のロッカールームで少しだけ悩みました。今季の自分の成績で、そしてこのチーム状況の中で、どんなことを話すべきなのか。
でも、スタンドからの大歓声で呼びこまれて、腹が決まりました。とにかく「今日来てよかった」と思ってもらえるような話をしよう、と。
でも、本当にうれしかったです。皆さんが試合後も帰らずに、僕のヒーローインタビューを待っていてくださったこと。そして、コメントに大きな歓声を返してくださったこと。
今年は、迷わずにヒーローインタビューに臨めるように。チームも僕自身も、昨季とは違う状況にできていればと強く思っています。
(構成:塩畑大輔、企画:スリーライト)