独自の言葉で振り返る、大谷翔平の2024年

タイトルに無頓着な大谷翔平も頬を緩めた「50-50」 A.ロッド、ケン・グリフィーJr.も“異次元”強調

丹羽政善

2024年9月19日(現地時間、以下同)、マーリンズ戦で50号2ランを放った大谷翔平(ドジャース)。史上初の「50-50」に到達した 【Photo by Megan Briggs/Getty Images】

 大谷翔平(ドジャース)は、タイトルや個人成績にまるで無頓着に見える。昨季、三冠王や「40-40」(40本塁打、40盗塁)など、そこと向き合う意識を聞かれても、そっけなかった。

「う〜ん、ホームランに関しては、自分のいい打席を続けていくことで、増えていくのかなと思うんですけど……」

「それは(三冠王)あんまり考えていなかったですね。どのくらいの差があるのか、もちろん良く分かってないですし、とりあえず自分の、さっきからいってますけど、いい打席を送りたいなと思ってます」

 しかし、「50-50」に関しては、温度感が異なった。

 どれほどの記録なのか。アレックス・ロドリゲス(ヤンキースなど)、ケン・グリフィーJr.(マリナーズなど)という二人のレジェンドも、次元の違いを強調した。

二刀流記録には興味がない!?

「50-50」を達成した翌日の2024年9月20日、ドジャー・スタジアムのファンに応える大谷翔平 【Photo by Brian Rothmuller/Icon Sportswire via Getty Images】

 OPS(1.036)、本塁打(54)、打点(130)、得点(134)、出塁率(.390)、長打率(.646)、長打(99)、通算塁打(411)=すべてナ・リーグトップ。

 ハンク・アーロン賞(最優秀打者)、エドガー・マルチネス賞(最優秀指名打者)、オールMLBファーストチーム、シルバー・スラッガー、選手間投票MVP、スポーティングニュース年間MVP、AP通信「今年の男性アスリート」、リーグMVP……。

 大谷が2024年に獲得したタイトル、賞を列挙してみたが、キリがない。まだ、漏れがあるかもしれない。そのほとんどに関心を示さない大谷だが、昨年9月19日にマイアミで「50-50」を達成した夜、「歴史を塗り替えていく、あるいは、作っていくことの醍醐味は?」と聞くと、「今までの記録はやっている人が少ない中でのというか、そういう記録が多かった」と口にしてから、感慨深げに続けた。

「そういう意味では比較対象が多い中での、新しい記録という意味では、自分の中でも違いはあるかなと思う」

 文字に起こしただけでは伝わりにくいが、大谷にしては珍しく満足げ。視界に入ってからというより、打者に専念した昨年はシーズン前から意識していたであろう数字でもあっただけに、こちらが意外に感じるほどの熱量を伴った。

 “今までの記録”とは、当然ながら、二刀流としてのものだ。二桁本塁打、二桁勝利。投打での規定到達など、比較対象はベーブ・ルースのみ。それらは挑戦する選手さえ限られ、今後も現れないのでは? という意味では、ひょっとしたら「50-50」よりハードルが高いかもしれないが、過去の全野手が対象という分母の大きさにはやはり、思うところがあったよう。

 実際、「40-40」でさえ、達成は過去、1988年のホセ・カンセコ(アスレチックス)、96年のバリー・ボンズ(ジャイアンツ)、98年のロドリゲス(マリナーズ)、2006年のアルフォンゾ・ソリアーノ(ナショナルズ)、23年のロナルド・アクーニャJr.(ブレーブス)の5人しかいなかった。「30-30」は47人いるが、そこからグッと絞られる(カッコ内は達成時に所属していたチーム)。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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