高校サッカー選手権、準々決勝の全試合をプレビュー 優勝候補本命vs.伏兵、プレミア対決も

安藤隆人

3回戦で大津とのビッグマッチを制した流通経済大柏。隙のない陣容で優勝候補筆頭と目される 【写真は共同】

 第103回全国高校サッカー選手権大会もついにベスト8が出そろった。波乱あり、順当ありとかなり個性のあるチームがそろった準々決勝4試合をプレビューしていきたい。

流通経済大柏vs.上田西(4日12:05~)

 3回戦で高円宮杯プレミアリーグチャンピオンの大津とのビッグマッチを制して勢いに乗る優勝候補筆頭の流通経済大柏に対して、7年前に4強入りした上田西がどう挑むかに注目が集まる。

 流通経済大柏はスタメン11人の力だけではなく、途中出場の選手の多くがスタメン組と遜色ない実力を持っている。

 奈須琉世と佐藤夢真の2CBは高さ、足元共に強固。スタメンを奪い返して今大会に臨んできた10番・柚木創、今年に入って一気に頭角を現してきた飯浜空風、守備が持ち味の稲田斗毅が攻守のバランスをつかさどる。左ではJ2カターレ富山内定の亀田歩夢が変幻自在のドリブルを見せ、FW粕谷悠と和田哲平はフィジカルと前への推進力に秀でている。そして今大会はスピードが武器のFW山野春太がブレークし、2試合連続ゴールをマーク。さらにフィジカルの強いDF幸田爽良、スピードドリブラーMF安藤晃希、J1湘南ベルマーレ入りが内定している182cmのFW松本果成と隙のない陣容と選手層を持つ。

 対する上田西は3回戦で矢板中央に勝利。プリンス関東1部に所属し、今大会は岡山学芸館、日章学園を撃破してきた相手に対して全員攻撃・全員守備を貫徹して2-0と金星を挙げた。全体的にサイズはないがボランチの松本翔琉、FW柳沢纏は注目の選手だ。松本は運動量とテクニックがあり、ボールを運びながらテンポの良いパスと、機を見た突破からのフィニッシュで攻撃のリズムを作ることができ、柳沢は前への推進力とゴール前での迫力がある。このキーマン2人が流通経済大柏のハイプレスの中で能力を発揮できるか。守備陣の負担が大きくなることが予想されるだけに、2人の打開力が試される。

明秀日立vs.東海大相模(4日12:05~)

 昨年度のインターハイ王者である明秀日立は、萬場努監督の下で「選手たちがピッチで考えてアクションするサッカー」を浸透させてきた。今年に限らず、これまでも3バックと4バックを併用しており、選手交代のメッセージを通じて試合の中で戦い方を変化させていく。

 注目はFW竹花龍生、保科愛斗、MF柴田健成の攻撃のトライアングルだ。3人ともインターハイ優勝メンバーで、ドリブルや裏抜けでゴールに迫る竹花、ポストプレーを得意とする保科、最前線でも2列目でも自在に動いてどこからでも狙える柴田と、それぞれ個性が光る。「組み合わせによって、どう攻めるかもメッセージになる」と萬場監督が口にしたように、保科を前に置くか、柴田を前に置くか、保科を1トップにして後ろに2人を並べるかによって、攻撃のアプローチは変化する。

 明秀日立の変化に対し、初出場でベスト8まで勝ち上がってきた東海大相模がどう対応するか。ポイントとなるのが長井隆之介と高畑旺崇のダブルボランチによるゲームマネジメントだ。共にキープ力と展開力を武器とし、パスをつないでいくスタイルの中枢だが、相手の陣形を見て展開をしていくだけでなく、スライドやプレスバックで相手の前線へのボールを遮断できるか。塩田航央と石井龍翔の2年生CBと連動して相手の攻撃を封じ込み、マイボールになったらビルドアップから持ち前の攻撃力につなげていく。この攻防はこの試合の大きな見どころだ。

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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