【カーリング】MD日本一の松村・谷田組「変えるところはない」 ブレずに頂点に輝いた理由

竹田聡一郎

世界選手権は3度目の挑戦となる。2022年は6勝3敗でクオリファイ(プレーオフ進出)できず9位、2023年は日本カーリング史上最高位の銀メダルを獲得した。 【著者撮影】

 北海道稚内市で12月2日から8日まで開催された第18回全農日本ミックスダブルスカーリング選手権大会は、松村・谷田(松村千秋・谷田康真)が2大会ぶり3度目の優勝で幕を閉じた。

 波乱の大会と言えるし、順当とも言える結果でもあった。

 1次予選で前回準優勝の小野寺・前田(小野寺佳歩・前田拓海)が敗退。続く2次予選ではディフェンディングチャンピオンのSC軽井沢クラブ(上野美優・山口剛史)が姿を消した。

 その両チームに土をつけたのが、田中・佐藤(田中萌珈・佐藤航英)の高校2年生と3年生のペアだ。若くしてリスク管理と思い切りの良いショットが噛み合い、初出場ながら堂々の4位入賞を果たした。これは高校生同士のペアとしては過去最高順位だ。

 余談ながら、高校生同士のペアではないが、2007年の第1回日本選手権では小野寺佳歩が父亮二と組んで高校2年生の17歳で銅メダルを獲得。2017年の10回大会ではチーム青木の(藤井春香・青木豪)青木が同じく高校2年生の17歳で準優勝に輝いている。金メダルは2008年の第2回大会で帯広(松田敦子・大野福公)の松田が22歳、2016年の第9回大会では北海道大学(荒木絵理・蒔苗匠馬)の荒木が22歳、蒔苗が21歳で獲得している。

 今大会をいい意味で荒らしてくれた田中・佐藤は、この好成績で来季もJCA(日本カーリング協会)の強化部による指定推薦枠に入る可能性があり、そうなればペア継続もかなり現実的になってくる。まずはJCAの強化部、特に強化合宿などの現場で指揮を執った小笠原歩強化副委員長の慧眼に拍手を送りたい。

佐藤は4人制の東北選手権を勝ち抜き2月の日本選手権の出場権も得た。田中は開催中の北海道選手権に出場中だ。 【著者撮影】

 それでも、「この長い期間試合を続けたのは初めて」と言う佐藤が2次予選の途中でデリバリーやラインにブレが出たことについて「意識してないところで疲れはあるかもしれない」と自己分析した通りに、高いパフォーマンスを持続するという点で経験の差が出てしまったかもしれない。

 結果的に決勝トーナメントに進出したのは、この高校生コンビに撃ち勝った3チームだった。1次予選2次予選通して全勝だった小穴・青木は決勝へ進み、2次予選を2位通過した北澤・臼井(北澤育恵・臼井槙吾)と3位通過の松村・谷田が準決勝に回った。

 その準決勝では常に松村・谷田が先手を取っていた。序盤から谷田のセンターへのドローが冴え好形を作ると、北澤・臼井も北澤のミラクルとも呼べる好ショットなどで応戦し、4エンドと6エンドには複数得点も記録するなどクロスゲームを演じた。

 しかし、北澤が「パワープレイのところ」と試合後にキーエンドに挙げた1点リードでの7エンド、複数点を狙いパワープレーを使った松村・谷田のコーナー戦をうまくいなせなかった。リードを持っていたために2点を取られても最終8エンドでの逆転勝ちは十分狙える。そんな状況だったが「曲がらなかったラインなのでそこに固執せず、違う案もあったかもしれない。時間のない中でリスク管理ができなかった」と試合後に北澤が悔やんだように、持ち時間と共に冷静な判断力が北澤・臼井から失われていった。僅差の試合を制したのはショットの安定感、プラン変更の柔軟性、時間の使い方といった実践経験から得た松村・谷田の総合力の高さだった。

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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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