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「プレミアでも間違いなくトップのウインガー」 鎌田は敵として戦った三笘をこう評した

森昌利

三笘(左)と鎌田(右)がプレミアの舞台で初めて対峙。試合後、両選手は互いの印象をどう語ったか 【Photo by Sebastian Frej/MB Media/Getty Images】

 プレミアリーグ第16節、ブライトンの三笘薫とクリスタルパレスの鎌田大地が同じピッチに立って戦った。フル出場した三笘も、後半15分に投入された鎌田も好パフォーマンスを披露。試合はアウェーのクリスタルパレスが3-1で制したが、2人の日本人選手は揃って存在感を示した。一方、元リバプールの南野拓実が久々にイングランドに帰還。モナコの選手として欧州チャンピオンズリーグのアーセナル戦でプレーし、成熟した姿を見せた。

南野の「楽しい」という言葉は成長と自信の表れ

南野が約2年半ぶりにイングランドの地で公式戦を戦った。後半頭にピッチに入ると、闘志溢れるプレーでチームに気合いを注入。見せ場も作った 【Photo by Catherine Ivill - AMA/Getty Images】

 12月11日(現地時間、以下同)、エミレーツ・スタジアムで本当に嬉しい再会があった。

 欧州チャンピオンズリーグ(CL)のリーグフェーズ第6節。日本代表MF南野拓実がモナコの選手としてアーセナルと対戦するためにイングランドへ帰ってきた。この国で公式戦のピッチに立ったのは、リバプールでプレーしていた2022年5月17日のサウサンプトン戦以来のことだった。

「まあそうですね、雰囲気はいいなあと思った。でも勝ち点を取って帰れなかったのは残念でした」

 2年半ぶりに顔を合わせた日本代表MFに「久々のイングランドでの公式戦だったが」と尋ねて、返ってきた第一声がこれだった。

 ピッチに立った瞬間、“この雰囲気”と郷愁を感じたことを明かしてくれたが、前半34分にアーセナルのイングランド代表FWブカヨ・サカに先制点を奪われて、1点ビハインドで迎えた後半の頭から出場した南野は、最初は気合いが空回りしているように見えるほど、闘志をむき出しにしてピッチを駆け巡った。しかしそれも、29歳になった日本代表MFが自軍に足りないと感じた“勢い”をもたらそうとしたからだった。

「前半、僕から見れば消極的なミスがあった。こっちに流れを持ってくるには、もっと高い位置からのアグレッシブな守備だったり、攻撃でもよりダイナミックな動き出しでボールを要求することが必要だったと思います。そしてボールを奪われてからもすぐにプレスにいく。そういう、戦術というより、勝ちたい気持ちを見せる必要がありました。チームがまだ若いので、そういう勢いを持たせたほうがいいと思い、そこを意識しました」

 この話を聞いて、交代当初に見せたがむしゃらさは選手として円熟期に入った南野の成長の証だと思った。前半を見て、若いチームがアーセナルとの対戦にビビっていると感じた。そこに後半の頭から入った年長の南野が、初っ端から全力で動いて“勝ち点を取って帰るぞ”という気合いを注入したのだ。

 そして後半6分にはシュートを打った。さらに同20分には、右サイドを走ったスイス代表FWブレール・エンボロの足元に素晴らしいパスも通した。南野が入ってから、前半ビビって攻められなかったモナコがアーセナルを押し込んだ。

 ところが、後半33分に自陣ゴール前でのミスからまたもやサカに決められて万事休す。同43分にカイ・ハフェルツにダメ押しの3点目を奪われたが、0-2にされた瞬間にモナコの敗戦は決定した。

 そんな、結果的にはホームで横綱相撲を見せたアーセナルの印象を尋ねると、ここでもまた南野の成長を感じるコメントが聞けた。

「アーセナルはシンプルに強いなという印象でした。交代で入ってくる選手たちもいい選手が入ってくる。そういう意味ではやっていて楽しいですね」

南野がリバプールに所属したのは、サウサンプトンへのレンタル期間を除いて2年。強力アタッカー陣を抱えるチームで試練を味わい続けた 【Photo by Neil Hall - Pool/Getty Images】

 今思えば2020年1月1日、30年ぶりのイングランド1部リーグ優勝に向かってひた走っていたユルゲン・クロップのリバプールに加入した24歳(この月に25歳になったが)の南野には、“楽しむ”余裕はまるでなかった。

 モハメド・サラー、ロベルト・フィルミーノ、サディオ・マネで構成された黄金の3トップがチーム内のライバルだった。次世代の戦力と期待をかけられて加入したとはいえ、あの時の神がかった3人を相手にプレー時間を確保するのは困難の極みだった。プロのフットボーラーが試合に出られない苦しさ。それは最悪にして最大の苦難である。

 プロのフットボーラーの仕事は、長いシーズンを通してトップレベルの試合で90分間プレーする肉体を保つことだ。そのために練習で走り、選手としての己のすべてを磨き、全神経を尖らせて体調を整える。試合に出ることはいわばその報奨である。

 けれどもそれこそ一生懸命自分を鍛え、磨きに磨いても試合に出られない状況が生まれる。リバプール時代の南野はまさにその試練の連続だった。

 しかし今はモナコでしっかりとレギュラーの座を固め、日本代表でも再びその存在感を明確にしている。そんな現状がアーセナルとの試合を“楽しい”と言わせたのだろう。0-3で負けた試合の直後だったが、南野の顔にはリバプール時代には見られなかった清々しさと凛々しさが同居した、今後のさらなる活躍を予感させる素晴らしい表情が浮かんでいた。

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2024-25で24シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル29年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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