「冬だけ」「4年に一度」からカーリングは脱却なるか? 来年2/2開幕・日本選手権の横浜開催がもつ可能性と懸念
スタートイベントでは藤澤五月が秋元真夏さんにスイープを指導するシーンも 【筆者撮影】
10月に入るとJCA(日本カーリング協会)は、チケット情報を公開し、ボランティアの募集をスタートさせ、17日には会場至近の関東学院大学横浜・関内キャンパスではスタートイベントを開催。元乃木坂46の俳優・秋元真夏さんの公式応援サポーター就任などが発表された。
イベントにはJCAアスリート委員会の副委員長である藤澤五月(ロコ・ソラーレ)も登壇し「カーリングはまだ認知度が低いスポーツなので、こうやって盛り上げていただいてありがたいです」と感謝の言葉と共に、「この時期から日本選手権がこんなに楽しみなのは初めて」と選手としての本音も口にした。
「カーリングを現地で観る機会がないので、まずは冬季競技を肌で多くの方に肌で感じていただきたい」
そう語るのは共催の横浜市にぎわいスポーツ文化局スポーツ振興課髙梨潤一課長だが、その言葉どおり例えばチケット代は、前売りで1次予選リーグの2Fと3Fの自由席が1500円、同じく2次予選が2500円だ。
今年2月に札幌のどうぎんカーリングスタジアムで行われた前回大会は1次リーグが3000円で2次リーグは4000円だった。しかもこれは1試合あたりの単価で、横浜BUNTAIでのチケットは1日通し券での価格となる。席数も前回の約100席から2000席に大幅増したとはいえ、昨今のスポーツ興行ではかなりリーズナブルな値段となった。
それに加え、全日程パック、優勝チーム直筆サイン入り大会記念Tシャツ付チケット、非売品の大会記念オペラグラス付きチケットなど幅広いチケットが選択できるが、特筆すべきは11月5日からはじまる横浜市民先行抽選受付だ。
横浜市の山中竹春市長は「今回の日本選手権に加え、2029年の女子世界選手権大会の開催も視野に入れている」と公言し、藤澤も「ぜひ横浜をカーリングのまちに」とコメントしていたが、その地固めとしてまずは市民への周知と理解を深めていく狙いだろう。
また、BUNTAI敷地内には大型ビジョンを設置し、中継を見ながら横浜グルメを楽しめるファンゾーン&イートインスペース「もぐもぐ横丁」を展開。ここはチケットを持っていなくても入場可能で、いい意味で敷居が下がる大会となりそうだ。
スポンサーにもこれまでカーリングを支えてきた全農、アルゴグラフィックス、ナブテスコ、アドヴィックスといったお馴染みの企業や組織に加え、ノジマ、サカタのタネ、江戸清など地元社が加わってくれた。横浜市という巨大都市とタッグを組んだ恩恵そのものだろう。
アリーナに製氷をし、周囲は選手のウォーミングアップゾーンなどが設置される予定だ 【筆者撮影】
「首都圏初のアリーナ開催」はキャッチーな言葉ではあるが、裏を返せばそのアイスメイクの経験はJCAにストックされていないということだ。
カーリングが五輪正式競技に採用された1998年以降、大規模大会がアリーナで開催されたのは、2006年のパシフィックアジア選手権(東伏見アイスアリーナ/現ダイドードリンコアイスアリーナ)と、2007年の女子の世界選手権(青森県営スケート場・盛運輸アリーナ)の2度だけで、いずれも海外からアイスメーカーを招いている。アリーナアイスを手がけた経験のあるアイスマンは不足してるのが現状で、JCAは2020年大会で五輪や世界選手権でチーフアイスメーカーを歴任したハンス・ウーリッヒを招聘しているが、今回は海外アイスメーカーには頼らないようだ。
もちろん日本のアイスマンにとっては願ってもない機会であるし、今大会がアイスメイクの観点でブレイクスルーとなる可能性もある。前述したように2029年の世界選手権も含め将来的には世界レベルのアイスメーカーを育成しないといけない。
しかし、同時に競技面としては2026年五輪のかかった重要な大会であり、普及面では首都圏開催というポテンシャルを秘めた大会だ。まずはアイスありきで考えることもできたはずだ。
言わずもだが、カーリングの語源は「Curl」にある。まずは曲がるアイスを作って、そこから戦術の幅が生まれる。アイスをはじめとして、ぜひ高いレベルでのカーリングの舞台を整えてほしい。できれば杞憂に終わってほしい懸念事項だ。
残すは3ヶ月だ。2月2日の開幕前には秋元さんが野球の始球式にあたるファーストストーンを実施、多くのファンが来場するだろう。果たしてそのオーディエンスをカーリングファンとして引き込むことができるのか。場内展示や現場限定のラジオ、グッズの販売、そして何よりも質の高いゲームで魅了したい。ライブで見られないスポーツ、冬だけのコンテンツ、4年に一度。カーリングがそんなフレーズから脱却するのは今だ。
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