【カーリング】歴史的金星も通過点 男子日本代表・コンサドーレがPCCC準優勝で得たもの
左から敦賀爽太、大内遥斗、佐藤剣仁、阿部晋也、清水徹郎。阿部と清水は前身大会に当たるパシフィックアジア選手権を2018年に制しているがパンコンチネンタル選手権は初出場だった 【(C)JCA】
日本代表として最高位の銀メダル獲得
「残念ながら優勝はできなかったけれど一定の成果は出せたのではないかと思っています」
阿部の言う「一定の成果」とはまずは世界選手権出場枠のことだ。この大会は来年3月29日にカナダ・ムースジョーで開催される世界選手権の予選も兼ねている。そこに派遣される日本代表チームは来年2月に横浜での日本選手権で決められるが、その前に日本として出場枠を獲得するためには最低でも5位に入賞する必要があった。
PCCCで5位以上、これは日本代表としてコンサドーレが課された今季前半のタスクだった。
その枠を勝ち取って、来年2月の日本選手権で連覇。世界選手権に挑む。これが今季後半の大きな目標だ。
敦賀のリード起用が奏功したPCCC
今季冒頭にはちょうど札幌国際大学を卒業した佐藤剣仁(はやと)を新加入選手として迎え、フロントエンドに厚みを持たせた。札幌のどうぎんカーリングスタジアムが補修工事中だったこともあり、6月から北海道北見市常呂町で複数回、合宿を張り、オンアイスとオフアイスでのトレーニングを重ねた。実質的にオフは1ヶ月あるかないかの期間だっただろう。
夏には北海道カーリングツアー2大会に出場。日本医療大学の現役大学生である敦賀爽太は学業の実習が重なり欠場となったが、新加入の佐藤をリードに置き、佐藤ー大内遥斗ー阿部ー清水の並びで稚内みどりチャレンジカップ、アドヴィックスカップに挑むといずれも優勝。「僕らが日本代表チームであるということを2大会で見せることができた。間違いなくいい方向に進んでいると思う」と阿部は確かな手応えを得ていた。
秋になるとカナダで4大会に出場しPCCCに備えたが、大会直前に大内が発熱し敦賀をリードで起用。敦賀ー佐藤ー阿部ー清水の並びでPCCCに挑むことになったが、台湾、オーストラリア、韓国と開幕から3連勝。
「メンバーが変わってもちゃんと勝てたのは、チーム力が上がっているんじゃないかなとポジティブに捉えている」と阿部。緊急出場となった敦賀も、初戦こそアリーナアイスへのアジャストに苦しんだが尻上がりに調子を上げ、ラウンドロビン(総当たりの予選)7戦でのショット率は86%、準決勝のカナダ戦では96%、決勝の中国戦は91%と及第点の数字を残した。
カナダ代表から金星「一歩進めたのでは」
「過去の対戦では追う展開がほとんどで、難しいショットをやらされて決まらずにそのまま終わってしまう試合が多かった。しっかり初めから自分たちでリズムを作って、相手(の後攻時)に1点取らせるような形で多くのエンドを終えられたのは、僕自身にもチームにとってもいいことだったと思う。一度も勝ったことのない相手に勝てたのも、一歩進めたのでは」(阿部)
続く決勝は初優勝をかけて挑んだが、昨年のジュニア世界選手権優勝メンバーでもある中国代表に投げ負けて準優勝に終わった。
「準決勝で強豪のカナダに勝てた一面、決勝ではパフォーマンスを発揮できなかった」
佐藤が大会後にコメントを出したように、長期遠征や連戦の疲れから体調を崩す選手も出るなど、ファイナルへ向けたピーキングや大会中の過ごし方に課題が残った。
アイス内の修正点や強化に関しては、強いチームとの対戦時の「チャンスメイク」を阿部は挙げる。
「強いチームは相手のミスをうまく拾うというか、僕らの細かいミスに必ずつけこんでくる。5cm(ストーンを相手の石の)近くにつけられなかったとか、石一個ぶんロールできなかったとかの勝負になってくるんで、そこをチーム全員が常に同じイメージを持てるようにしていきたい」
日本選手権、世界選手権に向けて
これでひとまず代表チームの肩書きを外し、チーム阿部(Abe)として11月末に再びカナダに渡り大会に出場する。帰国して12月中旬には軽井沢国際に出場、年始には米アリゾナ州で開催されるツアー大会に参加し、2月2日開幕の日本選手権の準備に入る。
そこで再び勝って、世界選手権の舞台へ。
昨季は3勝しかできなかった。冒頭で触れた阿部と清水のコメント「悔しいけれど今の実力通りの順位」は、「今の」に強い抑揚がついていた。佐藤という新しい矢、世界で苦い思いをした若い選手に支えられ、コンサドーレは「今」を打ち破りどこまで浮上できるのだろうか。今季も後半戦に突入する。
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